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東京大学2014年国語第4問 『馬の歯』蜂飼耳

 きわめて「東大国語第4問的」な第4問である。そして、すべての設問が比喩的表現の説明である。特に、設問(一)の(三)の比喩は難解といってよいだろう。
 傍線部の言葉そのものと、本文中の関係箇所の内容から解答を類推していくしかない。

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(一)「日常のなかに、ずぶりと差しこまれる」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 筆者にとって、「初対面の人と向かい合う時間」がどういうものなのか、そしてそれが傍線部アの「日常のなかに、ずぶりと差しこまれる」という形容と適合するかどうかを吟味しなければならない。
 まず、第1段落の冒頭から、「仕事の打ち合わせでだれかとはじめて顔を合わせるとき、そんなときには、互いに見えない触角を伸ばして話題を探すことになる。もともとにがてだったそういう事柄が、いつからか嫌でなくなり、いまでは愉しいひとときにすらなってきた」とある。
 第2段落から、「理系の人」との初対面の会話の様子や筆者の感慨が描かれている。第3段落には、「自分には思いもよらない事柄を、気に掛けて生きている人がいると知ることは、知らない本のページをめくる瞬間と似ている」とある。
 以上のことから、「初対面の仕事相手との対話は、話題を探しながらぎこちなく始まるが、自分の日常にない相手の関心事に思いがけず触れる楽しさがあるということ。」(67字)という解答例ができる。

(二)「風が荒々しい手つきでめくれば、新たなページが開かれて、見知らぬ言葉が落ちている」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。
 傍線部イの直前に「植物園もまた本に似ている」とあるので、植物園と本の共通点、つまり強い風が新しい発見をもたらすことを述べればよい。
 傍線部は本について述べている。強い風でページがめくれると、新しい言葉が現れるということである。
 植物園については、「相手」が「その植物園には、いろんな種類の松が備わっていて、台風の後には、こんな大きな松ぼっくりが拾えるんです」と言っている。「大きな松ぼっくり」は具体的な物なので、珍しい発見などと抽象化する必要がある。
 ところで、その「相手」は「植物園への道を幾度も通う」人であるので、その動物園は通い慣れた、よく知っている動物園である。同時に「耳を傾ける」人でもあり、「こちらの言葉が多くなれば、(本は)きっと開かれない」とあるので、素直な好奇心を持つことが必要だと考えられる。
 以上のことから、「素直な好奇心があれば、強い風でめくれたページに新しい言葉を見つけるように、熟知している植物園でも台風の後に珍しい発見があるということ。」(67字)という解答例ができる。

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