胡蝶

大学4年です。書きます。頑張ります。𠮟咤激励もお待ちしております。

胡蝶

大学4年です。書きます。頑張ります。𠮟咤激励もお待ちしております。

記事一覧

桃太郎のなる樹

桃から生まれた桃太郎、ではその桃はどこから来ているのかと疑問に思った事は無いと思いますが、「そう言われれば」と、今思いましたね? あるところに、桃太郎のなる樹が…

胡蝶
7か月前
1

水道筋商店街

胡蝶
8か月前
2
+1

ストレスとモチベ

胡蝶
9か月前
2

ベランダバインダーちゃん

 雨の日はお客さんが来なくて暇で、バイト先のチェックシートを挟んだバインダーの裏に落書きをしてみる。午後からの社員さんが通勤してきて目が合って、おはようといって…

胡蝶
1年前

ログアウトくん

 新しいことに挑戦するほうだ。当てはまる。行動力があるほうだ。やや当てはまる。人に反対されても自分の意思を貫く。どちらかというと当てはまる。人の目は気にしない。…

胡蝶
1年前

洗い残しちゃん

 浴室から出て鏡を見ると涙袋から目じりにかけてラメがギラギラと反射した。日焼け止めや下地が落ちていないのは肌トラブルになるから気になるけれど、これは別に。火照っ…

胡蝶
1年前
1

科学が死んだ日

 まえがき  現代思想6月号の石井ゆかりさんの文章から着想した小説です。 ≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈…

胡蝶
1年前
4

ジップロック記憶

まえがき とあるラッパーさんのライブに行って帰って、興奮冷めやらぬまま夜更かしして書き始めた小説です。なんとなくどこかに共感して頂けるポイントがあるのではないか…

胡蝶
1年前
7

私役は私だけ

最近走り始めた。だんだんと距離を走れるようになって、今、初めて自分を好きになれそうだ。   今までずっと、自分は何が好きで、何をすると幸せで、というのが本当にわか…

胡蝶
1年前
6

はくいき

冬は。一日眠りまくっているだけで電気代を浮かしつつ春に一歩近づける。寒さという困難が、望んでもないのに立ちはだかってくれているおかげで、たった一日生き延びること…

胡蝶
1年前
5

「好き」を動詞的に捉えるか形容詞的に捉えるか

職場の30代の女性は、事あるごとに私を褒める。ホントに可愛い、癒されるわあ、と。半分挨拶のような感じで適当に言っているのは分かっているから、私も笑って適当に流すの…

胡蝶
1年前
3

untouchable

布団の中で10数えたら地球が爆発するんだというのは、思いつきでも気づきでもなくて、外から降ってきた声で、8と9を死ぬほどゆっくり数えて、バクバクの心臓で10を唱えても…

胡蝶
1年前

飽きることに飽きる

響子は飽きっぽい。だから荷物が多い。 朝着て出かけた服も、夕方には飽きてしまって着替えたりする。系統なんてもちろん決められず、ギャル服やらフレンチガーリーやらき…

胡蝶
1年前
3

独り法師

 ずっと自分のいる場所、いた場所、いるべき場所が、わからない。  しがらみのプレッシャーも真剣なまなざしも怖いから、長年の付き合いを保存したくはないし、棒読みで…

胡蝶
1年前
4

踊る明太子

 あれは夏の盛りのこと、いや春の終わりだったか、もしかしたら秋の始めの方だったかもしれない。いやいやそんなことはどうでもよくて、とにかく暑い日の午前10時くらい、…

胡蝶
1年前
2

睡眠ゲーム

脳みその中にマトリョーシカみたいに何重もの部屋がある。部屋の中に、部屋があって、その部屋のドアを開くとその中にまた一回り小さい部屋がある。 目を閉じると、一番外…

胡蝶
2年前
2
桃太郎のなる樹

桃太郎のなる樹

桃から生まれた桃太郎、ではその桃はどこから来ているのかと疑問に思った事は無いと思いますが、「そう言われれば」と、今思いましたね?

あるところに、桃太郎のなる樹がありました。
驚いたでしょう。そうです。あったのです。あったので、桃太郎のなる樹の生活環を説明しましょう。

ここで、生活環という言葉がピンとこなかった殿方はぜひ、「シダ植物 生活環」でおググり頂きますようお願い申し上げます。
桃太郎のな

もっとみる
ベランダバインダーちゃん

ベランダバインダーちゃん

 雨の日はお客さんが来なくて暇で、バイト先のチェックシートを挟んだバインダーの裏に落書きをしてみる。午後からの社員さんが通勤してきて目が合って、おはようといって通りすがっていった。それで我に返って、慌てて消しゴムでこする。バインダーは木製だから力をこめたら薄まったけど完全隠蔽には至らなかった。
 
 研究室の窓はいつも閉まっている。窓の向こうには繋がった長い廊下みたいなベランダがあって、そこを歩い

もっとみる
ログアウトくん

ログアウトくん

 新しいことに挑戦するほうだ。当てはまる。行動力があるほうだ。やや当てはまる。人に反対されても自分の意思を貫く。どちらかというと当てはまる。人の目は気にしない。当てはまらない。

 就活のESが通ったと思ったら、次は性格診断みたいなものが来た。選考に直接関係しないとは言えども、あまりに一貫性がないと自分のことを把握できていない奴だとみなされるとネットにあった。けど深く考えすぎるなって診断の注意書き

もっとみる
洗い残しちゃん

洗い残しちゃん

 浴室から出て鏡を見ると涙袋から目じりにかけてラメがギラギラと反射した。日焼け止めや下地が落ちていないのは肌トラブルになるから気になるけれど、これは別に。火照った顔に濡れ髪ならいつもだったら自分でも見違えたかもと勘違いできるビジュのはずなのに、今日は、すっぴんが目元のケバさを、目元がすっぴんのイモさをお互いに強調しあって気持ちが悪い。

 あの子を唐突にラインでご飯に誘い、やんわり断られた。2年く

もっとみる
科学が死んだ日

科学が死んだ日

 まえがき
 現代思想6月号の石井ゆかりさんの文章から着想した小説です。

≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
 「ひのまるは今回の特別措置法に関してどうお思いですか」
レポーターのマイクとカメラが同時にシフトする。
馬鹿でかい銀色の塊の右下、小さなスピーカーのような部分にマイクがあてがわれて、
 「そうですね、政権が代わって以来初の

もっとみる
ジップロック記憶

ジップロック記憶

まえがき
とあるラッパーさんのライブに行って帰って、興奮冷めやらぬまま夜更かしして書き始めた小説です。なんとなくどこかに共感して頂けるポイントがあるのではないかなと思います。ぜひ。

≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
大学生までの22年間の青春の日々をみじん切りにして、瞬間冷凍して、真空パックに詰めて保存しておけるようになるかもし

もっとみる
私役は私だけ

私役は私だけ

最近走り始めた。だんだんと距離を走れるようになって、今、初めて自分を好きになれそうだ。
 
今までずっと、自分は何が好きで、何をすると幸せで、というのが本当にわからなかった。高校の卒業式の日、体育の先生との会話が今でも忘れられない。

「お前はいつもにこにこしてるけど何考えてるか最後までわかんなかったよ。部活とか授業とか楽しかった?」
「はい!楽しかったですよ!」(いつもの愛想笑い)
「何してる時

もっとみる
はくいき

はくいき

冬は。一日眠りまくっているだけで電気代を浮かしつつ春に一歩近づける。寒さという困難が、望んでもないのに立ちはだかってくれているおかげで、たった一日生き延びることすら、輝く未来に向かって進んでいけているように思える。

何もしない日って、tiktokとかyoutubeとかでホントはめちゃくちゃ良い動画や曲に出会えてたりとかするんだけど、無意識に潜在的な考え方が変わっていたり人に話せる知識が頭に残った

もっとみる
「好き」を動詞的に捉えるか形容詞的に捉えるか

「好き」を動詞的に捉えるか形容詞的に捉えるか

職場の30代の女性は、事あるごとに私を褒める。ホントに可愛い、癒されるわあ、と。半分挨拶のような感じで適当に言っているのは分かっているから、私も笑って適当に流すのだが、たまに褒められすぎる日は軽く動揺して後でボールペンなんかを落としてしまう。

髪型の些細な変化にも気づいてくれるからついに私は、美容室に行った後、その人がどう反応するかを一番に想像するようになってしまった。だけどそれって普通恋愛的に

もっとみる
untouchable

untouchable

布団の中で10数えたら地球が爆発するんだというのは、思いつきでも気づきでもなくて、外から降ってきた声で、8と9を死ぬほどゆっくり数えて、バクバクの心臓で10を唱えても、辺りは静まり返ってて、おかしいな、これは逆に私が刹那的に天国へ移送された状態なのではなかろうか、それにしてもあの世とこの世って寸分違わないつくりになっているんだな、私の名を呼ぶ母の声まで全く一緒ではないか・・・とここまで考えてやっべ

もっとみる
飽きることに飽きる

飽きることに飽きる

響子は飽きっぽい。だから荷物が多い。
朝着て出かけた服も、夕方には飽きてしまって着替えたりする。系統なんてもちろん決められず、ギャル服やらフレンチガーリーやらきれいめやらストリートやらをちょびっとずつ持ってて、箪笥は服種のサラダボウルだ。
食材に好き嫌いはないけれど、丼ぶりやドリアや麺類といった一食一皿の食事は苦手。いつも、嫌いな食べ物は?と聞かれるとどう答えればよいか迷ってしまう。一皿のものを食

もっとみる
独り法師

独り法師

 ずっと自分のいる場所、いた場所、いるべき場所が、わからない。

 しがらみのプレッシャーも真剣なまなざしも怖いから、長年の付き合いを保存したくはないし、棒読みで出身地を尋ねられて愛想よく答えるのは心が削られるから、期限が一日の関係を構築したくはない。

 住んだことの無いところに住んでみたいと、実家から日本列島の全長の半分くらい離れた町に引っ越してから、もう2年、一人でもやっていけることを証明す

もっとみる
踊る明太子

踊る明太子

 あれは夏の盛りのこと、いや春の終わりだったか、もしかしたら秋の始めの方だったかもしれない。いやいやそんなことはどうでもよくて、とにかく暑い日の午前10時くらい、遅めの朝食をとろうと台所に向かった賢介が目にしたのは、フライパンの上で踊る明太子だった。

 踊るというのは何かの比喩とかではなく、言葉そのまま、danceという意味である。何を馬鹿なことをと思われて当然だが、直立した明太子が腰を振り振り

もっとみる
睡眠ゲーム

睡眠ゲーム

脳みその中にマトリョーシカみたいに何重もの部屋がある。部屋の中に、部屋があって、その部屋のドアを開くとその中にまた一回り小さい部屋がある。
目を閉じると、一番外側の部屋のドアが閉まる。私は一つ内側の部屋に入る。もう少しじっとして、世界の音を耳から遠ざけると、その部屋のドアも閉まる。気づくと私はさらに一つ内側の小部屋にいる。目は暗闇になじんで、呼吸に集中するようになって、またもや小部屋のドアが閉まる

もっとみる