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洗い残しちゃん

 浴室から出て鏡を見ると涙袋から目じりにかけてラメがギラギラと反射した。日焼け止めや下地が落ちていないのは肌トラブルになるから気になるけれど、これは別に。火照った顔に濡れ髪ならいつもだったら自分でも見違えたかもと勘違いできるビジュのはずなのに、今日は、すっぴんが目元のケバさを、目元がすっぴんのイモさをお互いに強調しあって気持ちが悪い。

 あの子を唐突にラインでご飯に誘い、やんわり断られた。2年くらい会っていないし、そもそも2年前だって3回くらいしか会話した事ない。だけど想像力の強さでそれ以外の全てを補ってきてしまった。想像力の瞬発力、想像力の持続力、想像力の反復力、私は全てを兼ね備えている。想像力選手権があれば確実に全国1位、世界を狙える。

 何が悪いのかわからない。鏡の前のすっぴんラメのあほ面系美少女を見つめても、ちょっとしか出てないおなかを見下ろしても、バイト先のみんなにしょっちゅう言われる、サークルの先輩にいつも言われる、「可愛い」を思い出しても。私があの子だったらぜったいぜったい私を好きになるのに。



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