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魔法使いの弟子日記

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服の魔法を使えるようになるために、洋裁学校のことや、その時の気持ちをツラツラ紡ぎます。
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#夢

灰になってゆこう

灰になってゆこう

あぁ、本当に自分の未熟さに嫌気がさす。

理想と現実のギャップが、私を突き刺して、
いつも背伸びばかりしている気がする。

それでも。

再来週、ついに大好きな人のライブがある。

彼の紡ぐ言葉と音楽が好きで好きでたまらなく、
毎日欠かさず聴いている。

「いつかあなたの曲に合わせて服を作ります」
1年前、生まれて初めて書いたファンレターに、
精一杯の目標を綴った。

“鯨の子”から着想を得たオー

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フォーエバー・マイヒーロー

フォーエバー・マイヒーロー

「しょうがないな〜もう1枚ずつ作るよ!」

そうそう、そうこなくっちゃ。
いつまでも、ずっと、私のヒーローでいてよね。

半年ぶりに会う母は、想像以上に弱っていた。
ねえ、前は、一緒にスイスイ歩いてたじゃない。

なのに、今は。
気を抜くと、私の何メートルも後ろにいて。
エレベーターのボタンを押していて。
手すりがないと、掛け声がないと、立てなくて。

知らなかった。なんか、嫌だ。

だって、だっ

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薔薇の槍を片手に

薔薇の槍を片手に

平然と、野に咲く薔薇のように、空高く伸び進み
柔らかな花びらの下に、鋭い槍を忍ばせていく。

圧勝したい。誰かに、自分に、負けたくない。

占い師に「あんたの性格は男だ」と言われた。
野心、野望、成長、支配、権力を好むらしい。

個人の性格を男とか、女とかで括るのは、
非常にナンセンスだけれど、その理由は、
性別なんかでは無く薔薇の槍を持っているから。

これは今月の標語。

生活に慣れることだけ

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綯い交ぜサーティーン

綯い交ぜサーティーン

ねぇ、いつか私も肩を並べられるのでしょうか。

待ちに待った婚約者のライブ。

同棲していた友達が教えてくれたその歌声は、
すっぽりと私を丸ごと包み込んでいるのに、
どこか少しだけ悲しく、寂しそうで。

高度で難解な歌詞は、歌詞カードを見る前提で
執筆されている。

「Highになってゆこう」と聞こえるのに、
本当は「灰になってゆこう」と書かれていたり。

1番は「最後」と書かれているけれど、
2

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その先ダイヤにつき

その先ダイヤにつき

「一人前になるには、10000時間の努力が必要。
 大人から始めるなら、もっとかかるよ。」

馴染みの居酒屋で、ほろ酔いの父が呟く。

父は、博士課程の頃、研究者になるために、
「徹夜部」なんて作って、毎日寝る時以外は、
ずーーっと、研究してたんだって。

それが、楽しくて楽しくて仕方なかったらしい。

正直、私には全く自信がない。

服が大好きで、可愛い服を作りたいのは事実。

けれど、私よりも

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私は今も魔女に憧れたまま

私は今も魔女に憧れたまま

小学生の頃、大好きだった本がある。

あんびるやすこさんの『なんでも魔女商会』だ。

腕はピカイチなのに気難しい魔女のシルクと、
可愛いくて誰にでも優しい人間のナナ、
そしてネコで執事のコットンが、
洋服を作って、困っている人を助ける話。

いつも可愛い服をデザインする魔女のシルクが大好きだった。
大人になったら、シルクみたいな魔女になれると本気で信じていた。
魔女になって、可愛い服を作って、みん

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