マガジンのカバー画像

夕遊の映画座

257
マガジン機能の練習中。見て良かった映画の感想をまとめています。おすすめを紹介していただけると、喜び踊ります。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

既視感しかない。映画『スーパーチューズデー 正義を売った日』アメリカ、2011年

既視感しかない。映画『スーパーチューズデー 正義を売った日』アメリカ、2011年

すごく、おもしろかった。やっぱり政治映画はアメリカがおもしろい。
自分たちの“ポリティクス”を直視して、しかもサスペンスとしておもしろく映画にできるってすごいよなあ。

選挙で勝つためにはなんでもする選挙参謀。それはもう本当に頭脳戦。
票読み、リーク、ネガティブキャンペーン、揺さぶり、そして裏切り、復習……もう、これでもかってテンコモリ状態。

ストーリーは、大統領候補モリスの選挙参謀スティーヴン

もっとみる
かつて日本が通った道。ドキュメンタリー映画『女工哀歌(エレジー)』アメリカ、2005年。

かつて日本が通った道。ドキュメンタリー映画『女工哀歌(エレジー)』アメリカ、2005年。

先進国で売られるジーンズの多くが、中国の工場で作られていた2005年。安いジーンズがどうやってつくられているか、工場で働く女の子たちを追ったドキュメンタリー。その映像は、圧倒的な人件費の安さとコスト削減、技術力の向上で「世界の工場」になった中国の現実を突きつけます。

ドキュメンタリーの主人公ジャスミンは10代半ば。彼女の同僚たちもみんな同じ。中学校を出るか、でないかで農村から沿海部の大都市に出稼

もっとみる
想い出の曲は彼らのものだった。『ジャージー・ボーイズ』アメリカ、2014年

想い出の曲は彼らのものだった。『ジャージー・ボーイズ』アメリカ、2014年

映画館で公開したときにはtwitterで話題になっていたので、夫を誘って見に行ってきました。号泣したとか、幸せな気分になったとか、いろいろ聞いていたのでティッシュはちゃんと持参しましたが、本当に久しぶりに号泣に近い感じで泣きました。滂沱。そして、幸せな気分になって、イーストウッド監督にお礼を言いたくなりました。

そのとき半年くらいで悩んできたこととか、いろいろ人に相談したようなことが、映画1本見

もっとみる
ドキュメンタリー映画『世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅』2011年、アメリカ

ドキュメンタリー映画『世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅』2011年、アメリカ

このドキュメンタリー映画の主人公ゲルハルト・シュタイデルは、17才でデザイナー・出版社としてのキャリアをスタート。父親は印刷機械の掃除係だったということで、伝統を引き継いだわけではない。28才のとき、自分の力で出版社を立ち上げた人。

公式サイトのシュタイデルの紹介はこんな感じ。1968年、シュタイデルはアンディ・ウォーホルの強烈な色使いに魅了され、その高い印刷技術に感動する。同年、地元のゲッティ

もっとみる
現実は映画よりぶっとんでいるらしい。『オーケストラ!』2009年、フランス

現実は映画よりぶっとんでいるらしい。『オーケストラ!』2009年、フランス

仕事が一区切りついたので、スイミングに行って、レアチーズケーキをつくって、映画を見ました。お目当ての映画がツタヤになかったので、適当に選んだんですけど、これがまたすごくよかったです。

ロシアはソビエト時代。当時の最高指導者ブレジネフを批判して解雇された天才指揮者アンドレイが主役で、今はボリショイ交響楽団のしがない清掃員って、ソ連怖い。ところが、偶然キャンセルがでたフランスの公演の穴埋め依頼を知り

もっとみる
イギリスの闘う女性たち。『未来を花束にして』イギリス、2015年

イギリスの闘う女性たち。『未来を花束にして』イギリス、2015年

1912年のロンドンで、参政権を求めたイギリスの女性たちのお話。『ダウントン・アビー』と同じ時期の映画で、ドラマにも三女シビルや恋人のトムが参政権を求める運動に関わるシーンが確かあったと思うけど、この映画で展開する人間ドラマは、かなりきついです。

主人公のモード・ワッツは、夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らす労働者階級の主婦。母親も洗濯女で、父親不明。でも、工場長が父親っぽいことがセクハラで

もっとみる
アジア人のハリウッド映画。『クレイジー・リッチ』アメリカ、2018年

アジア人のハリウッド映画。『クレイジー・リッチ』アメリカ、2018年

ミシェール・ヨー(楊紫瓊)のファンなので楽しみにしていた映画。娘と二人で見てきました。期待通りに面白かったです。

今回、初めて知ったのは、海外華僑の階層。なんと、中華系とひとくくりにはできず、シンガポールの場合、中華系シンガポール人が圧倒的に上位だとのこと。アメリカ系は見下されるだなんて想像もしなかったです。

あとは、ハリウッド映画でアジア系の役者さんたちで固めたってのも、かなり画期的だった模

もっとみる
ラグビーが国を一つにする。映画『インヴィクタス 負けざる者たち』アメリカ、2009年

ラグビーが国を一つにする。映画『インヴィクタス 負けざる者たち』アメリカ、2009年

長く人種隔離政策で有名だった、南アフリカ共和国。そんな国で、初の黒人大統領に就任したネルソン・マンデラ。自由の闘士。だけど、リーダーが変わった日から、国全体がよくなったりしないし、正義が実現するわけでもない。新生国家の困難を切り抜けるため、マンデラが利用したのは白人が好きなスポーツラグビー。1年後、南アで開催されるラグビーのワールドカップで南アのチームが勝てば、それが人種間の和解につながるかもしれ

もっとみる
アーミル・カーンとの出会いは衝撃。映画『きっと、うまくいく』インド、2009年

アーミル・カーンとの出会いは衝撃。映画『きっと、うまくいく』インド、2009年

評判は聞いていたけど、ずっと見逃していた作品。予備知識がなかったのもよかったと思う。3時間弱の長さが全然気にならないくらい楽しい映画だった。

主人公は、インドの理系トップの大学にギリギリ入った男子学生。この大学で一番優秀な男は、一番型にはまらない男。彼の恋愛、仕事や勉強の悩み、家族との関係や人生の迷い。そして、生まれる喜び。いろんなエピソードが散りばめられて、歌って、踊って。まさに人生そのものの

もっとみる
最高に笑える、ハッピーな四人のお婿さんたち。映画『最高の花婿』フランス、2014年。

最高に笑える、ハッピーな四人のお婿さんたち。映画『最高の花婿』フランス、2014年。

仕事の一区切りがついたので、夫や娘と大笑いしながら見ました。やっぱり、いい映画はいい。何度見ても笑えます。

舞台は、フランスの郊外に住む裕福な一家。4人の娘たちには自分同様、フランス式のカトリック教会の結婚式を夢見ていた夫婦。でも、娘たちが結婚相手に選んだのは、アラブ人、ユダヤ人、中国人、そしてアフリカ人。ノイローゼになるほど悩みつつ、それでも娘の婿たちを迎え入れる努力をするけれど……。

とに

もっとみる
話し手の魅力が映像の魅力。映画『カツベン!』周防正行監督、2019年

話し手の魅力が映像の魅力。映画『カツベン!』周防正行監督、2019年

久しぶりの周防正行監督の映画。
一番思い出深いのは『shall we ダンス?』。遠距離恋愛と職場ハラスメントに耐えていた辛い時期、私を支えてくれた映画だから。

今回の『カツベン!』も期待を裏切らず、楽しくておかしくて、ハッピーになれる映画でした。明治末期から大正ぐらいにかけてのお話。当時の映画は音がなくて、映像の横で弁士がしゃべる形式。映画の人気は弁士の人気に比例するので、映画館同士の競争では

もっとみる
もしあのとき、違う人生を選んでいたら!?映画『天使がくれた時間』アメリカ、2000年。

もしあのとき、違う人生を選んでいたら!?映画『天使がくれた時間』アメリカ、2000年。

大学を卒業したてのニコラスとティアの恋人同士。空港で別れのシーンから始まります。これから遠距離恋愛になるけど、「僕らは変わらない」と自信満々なニコラス。嫌な予感がしたティアは「研修なんかやめてそばに居て」といいますが、ニコラスは聞きません。案の定2人はその後別れます。

13年たって、ニコラスはウォール街で成功した金融会社の社長になっています。クリスマスも仕事で、当然ながら家族はいません。デートは

もっとみる
青春は恥と後悔と初恋で作られる。映画『あの頃、君を追いかけた』台湾、2011年。

青春は恥と後悔と初恋で作られる。映画『あの頃、君を追いかけた』台湾、2011年。

キャッチコピーは「青春は恥と後悔と初恋で作られる」。まさにそんな感じの映画。九〇年代の台湾。おバカな男子高校生が、優等生の女の子に恋をして、勉強がんばっていい大学に合格して。でも、微妙な女心がわからないので、大学で遠距離になると溝ができてしまい、そのまま喧嘩別れ。初恋が実らないのは、古今東西変わらぬ真理。だからこそ、まぶしいです。

日本のドラマや映画だと恥と後悔を美化して最後はハッピーエンド。で

もっとみる