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夕遊の映画座

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マガジン機能の練習中。見て良かった映画の感想をまとめています。おすすめを紹介していただけると、喜び踊ります。
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2020年9月の記事一覧

ホン・サンスの映画

ホン・サンスの映画

『教授とわたし、そして映画』『ハ ハ ハ』『次の朝は他人』『よく知りもしないくせに』を先日、鑑賞しました。4本全て、ホン・サンスを通り過ぎた女性たちが出てくる。ホン・サンス監督作品は、監督自身の恋愛観と人生観と映画愛が詰まった作品群なので大変面白い。作品に起用される女優もおそらく何人かホン・サンス監督は手を出していると思うので(笑)元カノを今カノが演じていると思いながら観ると尚面白い。

現在の彼

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吃音に負けない。映画『英国王のスピーチ』イギリス、オーストラリア、アメリカ、2010年。

吃音に負けない。映画『英国王のスピーチ』イギリス、オーストラリア、アメリカ、2010年。

『鑑定士と顔のない依頼人』主演のジェフリー・ラッシュつながり。なんでこの映画をみたかというと、私もかなり長い間、吃音で苦労したから。この映画の制作チームは『ボブという名の猫』もつくっているそうです。

主人公アルバート王子は、当初、王様になるはずのなかった人。なぜなら、兄のデイヴィッド王太子が健在だったから。1936年、父親のジョージ5世が崩御した後、一時はデイヴィッドがエドワード8世として国王に

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切ない恋愛ミステリー映画。『鑑定人と顔のない依頼人』イタリア、2013年

切ない恋愛ミステリー映画。『鑑定人と顔のない依頼人』イタリア、2013年

『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ある天文学者の恋』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。

敏腕のオークション鑑定人ヴァージル・オールドマン(名前がすごい!)は大金持ち。潔癖症でいつも手袋をしているし、レストランには自分の皿があるほど。女嫌いで、恋人もいない。目利きなのをいいことに、本物を贋作と偽って安く入手して儲けたり、自宅に美女の肖像画をコレクションしている。

そんな彼が買取をきっかけに、

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ベット・ミドラーが好きだった20代。映画『フォーエバー・フレンズ』1988年、アメリカ

ベット・ミドラーが好きだった20代。映画『フォーエバー・フレンズ』1988年、アメリカ

風邪で体調がイマイチなので、ぼーっとビデオ鑑賞。なつかしの『フォーエバー・フレンズ』にしたのは、私の中で久しぶりにベット・ミドラーがブームになっていたからです。

ストーリーはシンプル。お嬢様が避暑地にバカンスに来て、ステージの仕事にしている女の子と知り合います。お嬢様は、自分の知らない世界を知っているステージガールに興味を持って、2人はその後、文通して友情を育てます。大人になった彼女たちは、一緒

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人間の権力争いが一番ホラー。映画『スターリンの葬送狂想曲』イギリス・フランス、2017年

人間の権力争いが一番ホラー。映画『スターリンの葬送狂想曲』イギリス・フランス、2017年

久しぶりに映画が見たくなったので、見てきましたが、もう怖いのなんの!
原作はフランスの漫画の『La mort de Staline』だというから驚きました。マジな歴史小説かと思いましたよ。

ソ連の独裁者だったスターリンが死んだ後、後継者の座を争う面々の表面上の集団指導体制と水面下での闘争、暗躍。いろいろ調べてみると、映画の内容には歴史に忠実な部分も、創作の部分も多々あって、賛否それなりらしい。

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知識は新しい世界への扉。映画『マダム・イン・ニューヨーク』2012年、インド

知識は新しい世界への扉。映画『マダム・イン・ニューヨーク』2012年、インド

忙しすぎて劇場で見れなかった映画。ようやく見れました。2時間以上あったけど、おもしろくて大満足。

インドの中流(という設定だけど、ファッションは上流っぽい)家庭の専業主婦シャシは、料理上手の良妻賢母。ただし、英語が苦手。昔は、ヒンディー語しかしゃべっちゃいけない学校に通っていた設定。そもそも、インドは1990年台後半まで、女性に教育はいらないって考え方が主流だったとのこと。これ、私の叔父の口癖で

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闘い方もそれぞれ。映画『ペンタゴン・ペーパーズ』アメリカ、2017年

闘い方もそれぞれ。映画『ペンタゴン・ペーパーズ』アメリカ、2017年

アメリカに勝ち目がないと知っていて、それでもベトナム戦争を継続した政府長官のマクナマラ。昔、彼のインタビュー映画『フォッグ・オブ・ウォー』を見たことがありました。彼一人がしゃべりまくるんですが、恐ろしいほどの記憶力で、戦争を数字ですらすら表現するところが、とても怖かったです。

映画『ペンタゴン・ペーパーズ』でも、マクナマラ長官はベトナム戦争に勝てないことがわかっていました。でも、政治的な理由で、

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大笑いして、チキンを無性に食べたくなる映画『エクストリーム・ジョブ』韓国、2019年

大笑いして、チキンを無性に食べたくなる映画『エクストリーム・ジョブ』韓国、2019年

予告編を見たときから、見たかった映画。
前回見た『家族を想うとき』がせつなすぎたので、口直しに。
最近は、韓国映画ならハズレ無しっていうくらい信頼あるし、実際、裏切られませんでした。あー、おもしろかった!

ストーリーは単純。落ちこぼれ刑事たちがクビになりそうなので、一発逆転して大物逮捕を狙う。ヤクザのアジトを監視するのにちょうどいい物件があり、チキン料理のお店をはじめたら予想外に大ヒットして、逮

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フランス映画らしすぎる。『潜水服は蝶の夢を見る』アメリカ・イギリス、2007年

フランス映画らしすぎる。『潜水服は蝶の夢を見る』アメリカ・イギリス、2007年

『ファンタジウム』という漫画に出てきた映画。言語療法士がメインの映画…だと思っていたら、少し違いました。フランスの有名な雑誌『ELLE』の編集長だったジャン・ドーが脳梗塞を起こし、一命はとりとめるも、身体で動くのは左眼と耳だけになってしまうお話。見えるし、聞ける、脳も無事。でも、しゃべれないし、手もうごかせない。

仕事もプライベートも絶頂期だったジャン・ドー。日本の映画で医療モノだと、プライド高

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縁は異なもの味なもの。映画『最強のふたり』2011年、フランス

縁は異なもの味なもの。映画『最強のふたり』2011年、フランス

知り合いが好きだというので、見てみました。確かに、とても楽しくて、素敵な映画でした。

頸髄損傷で体が不自由になった富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者の実話ベースの物語。少し前にフランスの『潜水服は蝶の夢を見る』を見てたのを思い出しました。あれも、実話ベースでしたっけ。

実話のほうは、富豪の奥さんが生きていたり、介護は10年と長かったり(映画では1年くらい)、2人でモロッコに移住したり

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遊牧民の知恵。ドキュメンタリー映画『らくだの涙』ドイツ・モンゴル、2003年

遊牧民の知恵。ドキュメンタリー映画『らくだの涙』ドイツ・モンゴル、2003年

私の中の2004年の映画ベスト1。難産で初産の母らくだが、子供にお乳を与えることを拒否してしまうところから始まります。これは、実は結構よくあることらしいです。なぜなら、自然界では母が健康なら、また子供を産めるから。母体優先。人間の病院でもそうらしいです。

でも、モンゴルには牧畜の知恵があります。馬頭琴の名手が音楽を奏で、歌を歌うと、母らくだは涙を流し、授乳をはじめるんです。これは本当に驚きました

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大義なき戦争と国家の利益の狭間で。映画『オフィシャル・シークレット』イギリス・アメリカ、2019年

大義なき戦争と国家の利益の狭間で。映画『オフィシャル・シークレット』イギリス・アメリカ、2019年

キーラ・ナイトレイが大好きなので、彼女を見に行きました。『はじまりのうた』もとってもステキだったし、『イミテーション・ゲーム』でもきれいだったから。

『オフィシャル・シークレット』は、イラク戦争をめぐるイギリスの話。主人公のキーラ演じるキャサリンは、イギリス政府通信本部に雇われて2年目の女性。台湾で育って北京語ができて、日本でも英語教師をしたことがある。アジア系の同僚とはマンダリンで話している。

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回顧した青春は美しいけれど。映画『芳華 Youth』中国、2017年

回顧した青春は美しいけれど。映画『芳華 Youth』中国、2017年

久しぶりに日本で公開された馮小剛の映画『芳華』。中国での評判も上々だったので、楽しみにしていました。今回は娘ではなく、夫と一緒の鑑賞。時代的に青春部分が青春しすぎてきれいすぎるけれど、それでもよかった。

文化大革命、そして中越戦争。理不尽な時代の波を生きる若者たちの群像。
その中で不器用にしか生きられない主人公たち。ひどい目にあうのは、いつも下層の持たざる者。時代の波に乗れるのは、生まれのいい人

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映画『崖の上のポニョ』(2008年)と5歳児のリアル

映画『崖の上のポニョ』(2008年)と5歳児のリアル

娘が4歳だったときに見に行きました。そもそも、『崖の上のポニョ』は初め全く私の予定になかった映画ですが、こちらの2つのレビューがあまりにおもしろかったので、俄然興味をそそられたのが理由です。

そこにあるのは、自分がヒゲのロリコンのおじさんというのは全く何かの間違い…女の子と一緒に仲良く遊んでる小さな男の子こそが自分の本当の姿…という強いメッセージ……熟年になってもなお失われた子ども時代追い求め続

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