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好きな記事、好きな小説、好きな文体

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個人的に好きな記事や小説や文体。個人的に注目している書き手、活動。
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2020年10月の記事一覧

深夜のマツキヨで出逢ったひとつぶ16円のキミ

深夜のマツキヨで出逢ったひとつぶ16円のキミ

その日、私は疲れていた。

まかないの量が少しおかしい、優しすぎるご夫婦が営む郷土料理屋。大好きなバイト先にも2020年の時勢は大きなダメージを及ぼしていた。観光客を客層の主とする店だ。予約数ゼロが続くカレンダーの前で困り果てているご夫婦を見て胸が痛む。とはいえ私はアルバイトを2つしているため、個人としての影響はほとんどなかった。

そう、ほとんど、なかった。女将が帰ってきた、それを除けば。

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自分がされていやなこと

自分がされていやなこと

「自分がされていやなことは、相手にしない」

親にも教師にも、幾度も言われてきた言葉。
とてもたいせつな教えだと思うし、何も間違っていないと思う。

だけれど、それと同じくらいわたしは昔からずっと違和感を感じていて。どう言えばいいか分からない、でも、なんとなくその都度「はい」と口ではきれいな返事をしながらも完全に腑に落ちない気がする、そんな感覚。なんで引っ掛かるのだろう、とずっと思っていた。

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リンゴの美味しい食べ方を、わたしは忘れたくなくて

リンゴの美味しい食べ方を、わたしは忘れたくなくて

日曜日の朝。まだ人気のない神保町の街を、とぼとぼと歩く。

目指すのは、大通り沿いにある、一棟の雑居ビル。
エレベーターに乗り込み、「3」のボタンを押す。

降りた先には、「無用之用」と書かれた看板が立てかけられていた。
木箱に入った無数の古本たちが、わたしを出迎える。

ぽつねんと入り口付近に佇むわたしに、いつもの店主さんが無言で会釈をする。
わたしは深々とお辞儀を返し、それから、本の海の中を彷

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この夏、精神闇底だった私の回復記録

この夏、精神闇底だった私の回復記録

※このnoteは、2020年夏に精神闇底だった私が回復していくまでの個人的記録です。その方法を推奨する目的はなく、感情の詳細を覚えているうちに書き残しておきたかっただけの人間標本です。一切参考にしなくて大丈夫です。

8月中旬、きづいたら精神が闇底に落ちてた。
幼稚園へのお迎えに向かう歩道でも晩御飯を作る夕暮れの台所でも、散らかったニューブロックを片付けるリビングでも前触れなく涙が溢れる。梱包材の

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【ひっこし日和・最終回】20軒目:二世帯住宅

【ひっこし日和・最終回】20軒目:二世帯住宅

離婚した。

結婚はするりとできたのに、離婚するにあたっては困ったことがいくつもあった。まず、息子が生まれてからちゃんと復帰していなかったので、たいして仕事がなかった。自分の貯金というものもなかった。離婚するって親に言えなかった。それなのになぜなのかとりあえず住むところだけは確保しようと思って、いのいちばんに不動産屋をたずねた。

ああいうときの人の行動って変よね。不動産屋に行く前にいろいろするこ

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近ごろの若者がアルバイト先に求めていることって?

近ごろの若者がアルバイト先に求めていることって?

人手不足が続く昨今、どうしたら求人に応募してもらえるか、採用後の離職率を下げられるかっていうのは、大手のみならず私たち小さな飲食店にとっても大きな課題です。

この難題を解消するために私はよく、一緒に働く若いスタッフに「実際のところどんな理由でうちを選んだの?」とか「最近はバイト先にどんな条件を求めてる子が多いの?」などといったぶっちゃけ話を聞くようにしています。

するとときどき、こちらが予想も

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サイゼリヤの次に行くべきイタリアン

サイゼリヤの次に行くべきイタリアン

この店については、前にも書いた。
しかし、まだ言いたいことがある。

「サイゼリヤを"ちゃんとしたレストラン"として評価しているならば、このレストランにも感動するはずだ」という確信がある。

順を追って述べるには、何年か遡らなくてはならない。
今でこそ、インターネット上では「俺たちのサイゼ」のようにもてはやされている趣があるサイゼリヤだが、かつてはそうではなかった。
いきなりインターネット老害みた

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フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

セイジ、ニューヨークタイムス、ぼくらの手

 セイジさんは日本の大企業から在米駐在としてニューヨークにやってきた。そして何年か後アメリカ永住権を取得して会社を辞め、四十歳を前にして料理の道に入った。当時アメリカでは最高峰の料理学校、ニューヨークアップステートにあるCULINALY INSTITUTE OF AMERICA 通称CIAは授業料も高く基本的に全寮制なので除隊補助でもないと自力でやるしか

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「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見て改めて脚本家・吉田玲子のすごさにひれ伏した

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見て改めて脚本家・吉田玲子のすごさにひれ伏した

泣いた。まんまと泣かされた。

何かというと、「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見てきたのだ。
ざっくり言うと手紙の代筆屋の少女を主人公にしたアニメだ。
兵器として育てられた少女が手紙の代筆を通して心を取り戻していくオムニバスもの。その劇場長編作品。

これがパンフレット。

表紙のデザインがしぶい。
紙の風合いと箔押しタイトルだけで見せるシンプルなデザイン。
紙は 新バフン紙N 18

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小説→漫画→写真|途中でコンテンツ形態が3変化するトランスフォーム型メディアの生成|

小説→漫画→写真|途中でコンテンツ形態が3変化するトランスフォーム型メディアの生成|

どうもこんばんは。
後に、おはようございます。

今日もお仕事、並びにnoteの執筆
お疲れ様です。

音楽の先生と教頭の詳しいプロフィールと活動内容は
こちらの記事へ。

※アイディアや発想などの権利を完全には放棄しておりません。一次使用、二次使用などの場合は然るべき配慮を宜しくお願い致します。

発端

映画を鑑賞していてふと思いました。
映画は映画の形を保ったまま進んでいく。

小説は小説、

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才能に悩んだら、ぜんぶ物語のせいにしてしまえばいい (#教養のエチュード賞)

才能に悩んだら、ぜんぶ物語のせいにしてしまえばいい (#教養のエチュード賞)

「君って心が安定してるよね」

会社の考課面接にしては、ずいぶん曖昧でゆるい言葉だなと苦笑いしていると
「あ、一応、褒めてるんだよ?」
と申し訳程度のフォローをいただいた。

いろんな企業で、やっぱり社員のメンタルヘルスが課題となっているようです。仕事量はそのまま、責任もそのままに部下を働かせられる時間は激減・・・管理職は大変そうだなぁ。できることなら、なりたくない。

「心が安定」しているのが良

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おいしい料理で幸せに。幸せな気持ちでおいしい料理に。

おいしい料理で幸せに。幸せな気持ちでおいしい料理に。

私が初めて九州に行ったときのこと。この時は仕事だから先輩方も一緒だ。私にとって、新しく訪れる場所はいろんな意味で落ち着かない。どんなとこだろうとワクワクする半面、日本国内でも何かしら不安を感じるからだ。こういう時、先輩方に色々案内してもらいながら徐々に慣れていくことが不安解消の近道だ。

そんな中バイキング形式で食事をする機会があった。その土地で初めてのご飯。周りは先輩方の顔見知りの人はいるが私は

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「営業しない」という営業戦略

「営業しない」という営業戦略

フリーになって、今日でちょうど1年です。
毎日のようにいろんな気づきがあって、折に触れて「フリーって……」とつぶやき続けてきた気がしますが、
そろそろ、もうそんなに言う必要もないのかなーと思い始めています。
まだまだ駆け出しってことはもちろん自覚しているんですが、まぁ、少し馴染んできました。
ながーく続けたサラリーマン生活で板についた習慣も、
ようやく抜けた感じ。
もう、深夜2時を回って仕事してて

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