チャーリー・ノートン

長いことやってる現役端っこの料理人です。電子レンジやミキサー、サランラップなど厨房には…

チャーリー・ノートン

長いことやってる現役端っこの料理人です。電子レンジやミキサー、サランラップなど厨房には無かった頃から働いています。

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最近の記事

わかよたれそつねならむ 2015年そして

 居酒屋に勤めだして一年とちょっとになった。十月になってもう寒い日がある。今日はヨガ教室に行ってきた。先生の指導の声を聞きながら組んだことのないポーズに身体を、動かし息を吐いたり吸ったり止めたり、力を入れたり抜いたり、休むことなく身体を意識し続けた。力を抜いて背骨を伸ばし、リラックスする、これはどういうことか。背骨をまっすぐに伸ばした状態でもう身体は緊張している、筋肉がピクピクするのがわかる。だんだん前のめりになってくる。屍体のポーズで解放した時は床に吸い付かれるような気がし

    • いろはにほへとちりぬるを 2011そして

      この文章はだいぶ前にフィルモア通信を書くことが出来なくなった時に毎日の職場での心境を 綴りnoteの別のアカウントで投稿したものです。ええカッコしいの文章やねと恥じます、 しかしどれもこれも自分です。 読んで下さるなら幸せです。 高級歓楽街、クラブというところで飲む国産ウィスキI ー一杯の値段が五千円以上するのが当たり前で常連客はそれを掛け払いという付けで支払うのも常識という、水商売が扱うのはステータスというものらしい。その街の端っこで小さなレストランを開き十年くらい商売し

      • ユニオンスクエア

                                                                毎週、月火水金土曜日は14丁目のユニオンスクエアでグリーンマーケットが開かれる。40年前、ヒューバーツレストランでシェフのニーナやピーターが両腕いっぱいのズッキーニの花や虹色のニンジンやサラダに使う青々とした葉っぱの入った籠を抱えてキッチンに入ってきた。その頃できたばかりの近所のユニオンスクエアのオープングリーンマーケットで仕入れてきたのだった。ピーターはそのマーケ

        • フィルモア通信 四十年 SOHOの咀嚼

          顔を上げると大柄の白人男性がぼくを見てにっこりした。 すぐにビル-カッツ氏だと気がついた。 目が合うとカッツ氏は右手を上げてハイと言った。今夜もレストランは満席の忙しいカウンターの中でお刺身や一品料理を作るのに無我夢中でカッツ氏がちょっと前からそこに立っているとは知らなかった。どうやら彼はぼくの手が一段落するのを待っていたみたいだった。 BILL KATZ氏は長らくニューヨークで活動する建築家でありインテリアデザイナーとしても舞台芸術の意匠なども手がけるニューヨークの芸術家

        わかよたれそつねならむ 2015年そして

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        • Devious chef's cooking
          23本
        • ぼくの宝石や
          18本
        • フィルモア通信 New York
          30本
        • 読んで欲しいフィルモア通信記事
          11本
        • 料理長の美しい休日
          2本

        記事

          フィルモア通信 月日の余白を

          2021年、ミキオさんの訃報を聞いたのは十一月の半ばだった。四十年前の同じ季節にぼくは彼に出会った。ニューヨークに着いてふた月目、ぼくは仕事を探してイーストヴィレッジからソーホーに歩いてゆきトンプソンストリートに小さな日本食レストランの看板を見つけた。 お店のメニュー掲示板の前に真っ白なシャツを着た若い男がいてそれがミキオさんだった。一言二言を交わしぼくはお店の中に招き入れられた。 そこはぼくの住んでいた京都に本店があるうどん屋さんのニューヨーク支店だった。ソーホーに開店し

          フィルモア通信 月日の余白を

          文章も料理もおんなじや

          ずいぶんと月日は過ぎて文章は何にも書けんかった。しかし料理は毎日キッチンでも 家の台所でも精一杯やっとった。 いつも頭の片隅には想いを書くというのがあった。note始めたころはスラスラと字が出て来て いやけっこう自分もいけるやんかとめでたい幸せな日々やった。 やがて自分の文章読み返してみると何やこれ 誤字脱字てにをは混濁ケーオスではないかと にわかに恥ずかしなった。 料理やっとっても目指す出来上がりの皿を材料 組み合わせのすかたんや火入れの過不足調味料 もうちょっととか、

          文章も料理もおんなじや

          フィルモア通信 2022 余白の春

          四十年経っても同じようなゴミあくたが散乱しているソーホーからチャイナタウンへと路を急ぐ。 冷えた身体を温めるために早足で見慣れぬ街を歩くのは散髪屋を探し当てるためだ。 アベニューやストリートのスペルには記憶があるのに広がる風景に覚えはない。先月か半年前に歩いたような気がしているが目にする景色は一変している。 ぼくの新しい生活は始まった。

          フィルモア通信 2022 余白の春

          君のために作りたい・タラのムニエル・ポテトタプナード・人参マスタード・あの岬でまた会おう・チャーリー・ノートン料理教室

          無事に年は越して迎える正月まことにめでたい。ふた月前の記事下書き、送り出そう。と、にゃーにゃーうるさいあのニャンキャットわが相棒の声は言う。あのねえ、またこんな写真ばっかりの記事つくってどうすんの。だいたい料理ゆうてもレシピもないやんか。あんたがnote始めた理由はあれやろ、フィルモア通信の完成やろ。最初のうちはよう頑張ってニューヨークの話も聞いてたけどな、ふた月ぶりでもこんなんばっかりやんか、役にも立たん料理記事ばっかりやんか。わが猫の叱責はつづく。すまん、猫すまん。 で

          君のために作りたい・タラのムニエル・ポテトタプナード・人参マスタード・あの岬でまた会おう・チャーリー・ノートン料理教室

          甘く しょっぱく 少々苦い 世界からの贈り物を心に受け取る

          今日は休みやうれしいなあ、と言いたいところこの頃休みの日、なんだか辛い。いや休まんと職場に行きたいというわけやなく、職場復帰一月以上ここまでほんまにえらい人数のお客さんであふれ返っていたわがレストラン職場。  なんやポイントが終了とCOVID19再蔓延で鎮まり返りつつある。今のところ自宅待機の声もなくやることはいっぱいの幸せな日々。  しかしなのだ、進まんのだ、NOTEに書こうとしているフィルモア通信25の続きがあかんのだ、書けんのや。フィルモア通信だけやない料理長の美し

          甘く しょっぱく 少々苦い 世界からの贈り物を心に受け取る

          パリへの心は燃えているか 行って幸せ行かなくて幸せ 渡仏延期のY君へ

           料理修業渡仏直前の外出禁止令再びのパリ、わが料理若い衆 Y君に降りかかる困難。つらいやろうなあ、いつまでとかの見通しが立たぬ。しかし元気そうや。うん、料理始めて十年くらい今まででもいろいろ乗り越えてきたもんね。なにより誰かのきつい言葉や君にしてみればの無理難題、やってきたじゃないか、あきらめんとここまで来てパリで料理続けて来たやんか。  なあ、料理は不思議や、あれやこれやをやって自分のスキルと考えと経験が人の気持ちに迎えられ、その人の身体のなかへ届くんやもんな。ワンダーや

          パリへの心は燃えているか 行って幸せ行かなくて幸せ 渡仏延期のY君へ

          失敗か、いや精一杯や コーヒーもう一杯 and so story goes on

          バタートーストサンドイッチで朝食を。        今日は休みや、嬉しいなあ。お客さんあってこそ、レストラン稼業商売繁盛ありがたいことです。お陽さんいっぱい目覚めて、さて何作ろう。久しぶりにアレや、トーストや、バター付きパンや、サンドイッチや。 家にあるだけの材料。りんご、ありがとうりんご。おかあさんありがとう。 今年も飯田から宝石のようなりんご。母は元気だ、最高や。 厚切りパン残っとった。ゴージャスに

          失敗か、いや精一杯や コーヒーもう一杯 and so story goes on

          There is nothing you can do that can’t be done, Imagine .

           いやはや、はや一週間。半年ぶり十二時間肉体労働。いやようやる、タフでありがたい。タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格ないゆうたんはフィリップやったか、ロンググッドバイやったか。いや、グッドバイちゃうねん、ずっと働くんや、また来る明日には立ち上がるのだ。職場の仲間もみんな無事、いまはとてつもなく忙しいレストラン昼と夜。  引きこもっていたので季節は秋、いきなりの肌寒さに紅葉の心寂しさ。なんというか、毎年繰り返すこの寄る辺ないさみしさ。さみしいのは日本に帰っ

          There is nothing you can do that can’t be done, Imagine .

          パリにこんにちはを言っといてね。じゃあね、オランジェリー忘れるな。

          嬉しい電話は続き、もう何年も前にぼくのレストランで一緒に働いていた若い衆、そのなかの一人はようやくまたパリに行けることになったという。  何年か前にパリでレストランに働き口を見つけ、ヴィザ更新で帰ってきてこのところの事情で待機中だった。ようやく出発の運び。三年勉強したら帰ってきます。よし、待ってるぞ。君は大丈夫立派なシェフになって帰ってくる。今でもそうやけどな。ぼくにご馳走してくれる日を楽しみにしてるぞ。お互いに、元気でいよう。モネの絵だけちゃうぞ、ええもんいっぱいあるぞ見て

          パリにこんにちはを言っといてね。じゃあね、オランジェリー忘れるな。

          文体もスタイルもライフ、書くことも生きること、明日から職場復帰、精一杯良いもの作ろう、食べたものが生きる糧となるように。

             電話がなって、受話器を上げると懐かしい料理長の声、挨拶のあとはいつから来れますかと、信じられないような一声。来れます来れます、いつでも来れます、どこでも行きます。ではと金曜日に。みんな待ってますよと嬉しい言葉も。休業要請の後は段階的営業再開で、社員卒業した後も一緒にやりましょうのありがたいオファー。休業が開けて営業再開も社員は一人二人づつの復帰で会社でたぶん一番年上のぼくに声かかるわけないなあ。でもかかってきました、奇跡のようなみんな待ってますよのあの声、ありがとうご

          文体もスタイルもライフ、書くことも生きること、明日から職場復帰、精一杯良いもの作ろう、食べたものが生きる糧となるように。

          ミスレニアス #チャーリー・ノートン #名前の由来 私の仕事 noteの書き方 #noteでよかったこと いま私にできること

          #名前の由来                            チャーリー・ノートン、チャーリーは実際に職場で呼んでもらってる名前です。ぼくの職場ではレストランネームがありその名前で呼びます。上司とか、新人とかの区別をなくす、とか便利なこと多いです。チャーリーはぼくの大好きだったカッコいい友だちの名前です。チャーリーという名前に誇りを持っています。ノートンはTVショーのハネムーナーに出てくるアート・カーニー扮するエド・ノートンからもらいました。ジャッキー・グリーソンの相方

          ミスレニアス #チャーリー・ノートン #名前の由来 私の仕事 noteの書き方 #noteでよかったこと いま私にできること

          フィルモア通信 New York DUANE PARK CAFE Chef SEIJI MAEDA and RICHARD OVERHOLT トライベッカの乾杯と死

          セイジさんと仲間たち  ニューヨークに来て十年目くらいの春か夏、週末は相変わらず忙しいデュエンパークカフェ、誰もが認める本格レストラン、ファインフード、ファインサービスなのにカフェという名前をつけたのはセイジさんが誰にでも親しみやすく気軽にワインや料理を楽しめるようにと、値段も、提供している酒や料理のコスト品質を考えると格段に破格のレストランだった。    グラマシーパークのヒューバーツレストランにブライアン・ミラーの絶賛記事が掲載された後レストランはてんてこ舞いの忙しい日

          フィルモア通信 New York DUANE PARK CAFE Chef SEIJI MAEDA and RICHARD OVERHOLT トライベッカの乾杯と死