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黄昏の黙示録

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2022年9月より、月刊連載として小説を投稿していきます。 こちらの方にマガジンとして纏めていこうと思います。 何卒よろしくです😂
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#短編小説

第16章 人間農場-1

第16章 人間農場-1

Vol.1
 物語の結末は僕の心に何か複雑な感情を落としていった。主人公の死を持って終わった物語だった。復讐に踊らされて、最後はその虚しさを感じながら死んでいった。自分と何処か重なるところが有るような無いような感情だった。僕は、読み終えた本を本棚にしまった。僕の物語は、今描いている途中だ。そう思いながら、僕は眠りについた。
 眠りから覚める時、目覚ましよりも早く起きてしまう時がある。遠足の前や修学

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第十五章 運命の女神-1

第十五章 運命の女神-1

Vol.1
 「私が貴方と初めて出会ったのは小学生の時。多分覚えてないと思う。」
黒奈は、僕の方を見ていった。僕は黒奈の言う通り、何も覚えてはいない。黒奈と出会ったのは大学生に入学してからだったからだ。
「あれは、私が九州に空手の遠征に行った時。鹿児島県の鹿屋という場所にあるバラ園に行くことになったの。バラなんてあの頃の私には興味はなかったけど、両親はせっかくの九州ということではしゃいでいたわ。私

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第13章 歯車の下で−2

第13章 歯車の下で−2

Vol.2
朝を迎える日々がどうしてこうも苦痛に感じるのだろう。また一つまた一つと日々を重ねるたびに僕は、どうしようもない気持ちになる。煌びやかな日常を夢見ている。冷めたコーヒーを僕は啜った。

’’全く、君はどうしようもないな。’’

「何がだよ。」

’’いや、決意しては忘れて、決意しては忘れて。そうやって日々を繰り返して、また心をすり減らす。馬鹿の一つ覚えのように君はぐるぐると同じことを繰り

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第XⅢ章 歯車の下で-1

第XⅢ章 歯車の下で-1

Vol.1
 飛行機が離陸してから二時間程度が経った。あっという間に飛行機は着陸準備に入っていた。飛行機に乗っている間、僕は流れていく雲を見ながら終わってしまう休みを惜しんでいた。もう少し長く休みたかったと毎回毎回思うのは社会人になってからだった。長い人生の中で、卒業というシステムがなくなってしまった。今までは、最大で6年同じところに通って、それから卒業というシステムに従って、次のところにいく。こ

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第Ⅻ章 アップルゲニウス−1

第Ⅻ章 アップルゲニウス−1

vol.1

僕は、槍さんの話を聞いて考え込んでしまっていた。復讐という名の怪物のことについて。そんな僕を見かねたのか。槍さんがつぶやいた。

「そろそろ、何か食べませんか。ここのカレーめちゃくちゃ美味しんですよ。」

「そうだな。セレン早く何か食べよう。腹が減ってはなんとやらだぞ。」

「それをいうなら腹が減っては戦はできぬだよ。」

「そういうことだ。早く食おうぜ。もう腹が減って死にそうだ。」

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第十一章 恩讐の彼此

第十一章 恩讐の彼此

Vol. replay evil with evil

 部屋に戻ると、妹がソファーに寝転んでテレビを見ていた。テレビでは年末番組が放送されており、もう今年が終わるのだと僕に告げているようだった。時刻は、午後10時ー。寝るにはまだ少し早い気がした。かといって、何か特段したいこともない。年末番組を見るほど退屈なこともないわけだし。僕は、自分の部屋だった場所に置いたリュックから本を取り出し、読むことに

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第9章 silent melon−2

第9章 silent melon−2

Vol.2
青山さんは、未来との話を終えた。彼の顔はどこか清々しさまで感じていた。まあそうだろう。ある意味復讐というものは達成されているようなものだから。僕は、青山さんが意気揚々とお店を後にしていく姿を無言で見つめていた。

「セレンくん。この花束のラッピングなんだけど、いつも通りお願いしてもいいかな。」

「ー。」

「セレンくん。起きてる。」

翠さんが何度か僕の名前を呼んでいたらしい。僕は全

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第8章 カエサル・イチネラリウム−2

第8章 カエサル・イチネラリウム−2

Vol_2

 酒を飲みすぎた次の日は、なぜこんなにも朝早く目覚めてしまうのだろうか。時刻は、6:30ー。四時間程度しか寝ていない。酔いは醒めているのかよく分からない。夜はまだ開けず、世界はほんのりと夜の香りを残していた。静けさが染み渡るようで、少し窓を開けるとツーンとした冬の空気が脳を刺激する。非日常的な朝が、僕を少し変えた気にさせてくれるのはいつものことだ。冷蔵庫に入っているミネナルウォーター

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第6章 アルテミスの器−2

第6章 アルテミスの器−2

時がいくつか経っただろうか。数えることよりも次の言葉を発しなければならない。そう感じていた。嘘であってほしい事実を前にした時、僕らは本質よりも幾分か違うことに頭を使い、夢であることを認識しようとしてしまうのかもしれない。目の前の男が言っていることは空耳で本当は何にもありませんでした。と。しかし、現実は非常にも押し寄せてくるのだった。

「未来はね、非常に聖杯を受け入れたがらない子だったよ。まあ無理

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第6章 アルテミスの器−1

第6章 アルテミスの器−1

Vol.1
バシャバシャ。

 水溜りというには大きすぎる水面を雨を仰ぎながら僕と黒奈は歩いていく。激しい雨のせいで歩いてきた後の足跡がすぐに消えていく。顔にあたる雨粒が痛い。そう思いなが歩いていると、いつの間にか道が川になっていた。ザーザーと鳴り止まない雨が降る中、僕は少し不安になっていた。このまま雨がしゃんと止んでくれるだろうか。このまま夜まで雨になってしまったらどうしようか。

「不安。大丈

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第5章 Utopia -2

第5章 Utopia -2

「もうすぐ着くわね。」

一時間くらい揺られただろうか。僕らは東所沢駅で電車を降りた。都会のビルの摩天楼に比べて静かな世界が広がっており、家族連れが街を歩いていた。ベービーカーを押す人や子供を肩車して歩く人々で溢れていた。

「こんな住宅街に何があるの。」

僕が不思議そうに聞くと、黒奈が答えた。

「角川武蔵野ミュージアムって知ってる。私そこに前から行ってみたかったの。」

「聞いたことある。美

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第4章 罪と罰のレクイエム-1

第4章 罪と罰のレクイエム-1

Vol.1
「あら、もう起きたの。」
ベッドの上ではだけたバスローブを戻しながら少し乱れた黒奈が僕に囁いた。
「うん。なんか目が覚めちゃった。」
黒奈は起き上がると私もコーヒーを飲みたいと言ったので、僕が新しいものを用意した。黒奈の横に座る。二人で飲むコーヒーはなんだか不思議な気持ちになった。黒奈が僕に寄りかかる。黒奈の熱が僕に伝わってくる。僕も黒奈の頭をなぞった。コーヒーをベッド脇のテーブルに置

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第3章 ライ麦畑で僕を追う-1

第3章 ライ麦畑で僕を追う-1

Vol.1

 水卜先輩が会社を辞めてしまう。そんなことを考えながら日々の業務に追われ、1週間、2週間と時は進んでいき、とうとう水卜先輩がいなくなる最後の日になってしまった。先輩は変わらず、いつも通りの笑顔を咲かせながら業務をこなしていた。

「ねえ、話聞いてるの?ちゃんとやってもらわないとこまるのよ。ここ最近ミスが多すぎ、やる気あんの。」

「すみません。すぐ直しますんで。」

K先輩に怒られた

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第2章 ぐらつく2つの道-2

第2章 ぐらつく2つの道-2

それから、その男。いや、先輩とは定期的にサウナに通うようになり、たまたま一緒になった剣崎とも仲良くなって一緒に楽しむようになった。そして何やかんやあり、今に至るのだった。思い出に耽っていると横からチョップが飛んできた。

「セレン、ボーッとしない。早くいくぞ。どうせ彼女のことでも考えてたんだろ。」

「違いますよ、先輩のこと考えてました。」

「え。先輩ちょっと男の子から好意を向けられるのは初めて

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