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#短編小説
第十五章 運命の女神-1
Vol.1
「私が貴方と初めて出会ったのは小学生の時。多分覚えてないと思う。」
黒奈は、僕の方を見ていった。僕は黒奈の言う通り、何も覚えてはいない。黒奈と出会ったのは大学生に入学してからだったからだ。
「あれは、私が九州に空手の遠征に行った時。鹿児島県の鹿屋という場所にあるバラ園に行くことになったの。バラなんてあの頃の私には興味はなかったけど、両親はせっかくの九州ということではしゃいでいたわ。私
第十一章 恩讐の彼此
Vol. replay evil with evil
部屋に戻ると、妹がソファーに寝転んでテレビを見ていた。テレビでは年末番組が放送されており、もう今年が終わるのだと僕に告げているようだった。時刻は、午後10時ー。寝るにはまだ少し早い気がした。かといって、何か特段したいこともない。年末番組を見るほど退屈なこともないわけだし。僕は、自分の部屋だった場所に置いたリュックから本を取り出し、読むことに
第9章 silent melon−2
Vol.2
青山さんは、未来との話を終えた。彼の顔はどこか清々しさまで感じていた。まあそうだろう。ある意味復讐というものは達成されているようなものだから。僕は、青山さんが意気揚々とお店を後にしていく姿を無言で見つめていた。
「セレンくん。この花束のラッピングなんだけど、いつも通りお願いしてもいいかな。」
「ー。」
「セレンくん。起きてる。」
翠さんが何度か僕の名前を呼んでいたらしい。僕は全
第8章 カエサル・イチネラリウム−2
Vol_2
酒を飲みすぎた次の日は、なぜこんなにも朝早く目覚めてしまうのだろうか。時刻は、6:30ー。四時間程度しか寝ていない。酔いは醒めているのかよく分からない。夜はまだ開けず、世界はほんのりと夜の香りを残していた。静けさが染み渡るようで、少し窓を開けるとツーンとした冬の空気が脳を刺激する。非日常的な朝が、僕を少し変えた気にさせてくれるのはいつものことだ。冷蔵庫に入っているミネナルウォーター
第6章 アルテミスの器−2
時がいくつか経っただろうか。数えることよりも次の言葉を発しなければならない。そう感じていた。嘘であってほしい事実を前にした時、僕らは本質よりも幾分か違うことに頭を使い、夢であることを認識しようとしてしまうのかもしれない。目の前の男が言っていることは空耳で本当は何にもありませんでした。と。しかし、現実は非常にも押し寄せてくるのだった。
「未来はね、非常に聖杯を受け入れたがらない子だったよ。まあ無理
第3章 ライ麦畑で僕を追う-1
Vol.1
水卜先輩が会社を辞めてしまう。そんなことを考えながら日々の業務に追われ、1週間、2週間と時は進んでいき、とうとう水卜先輩がいなくなる最後の日になってしまった。先輩は変わらず、いつも通りの笑顔を咲かせながら業務をこなしていた。
「ねえ、話聞いてるの?ちゃんとやってもらわないとこまるのよ。ここ最近ミスが多すぎ、やる気あんの。」
「すみません。すぐ直しますんで。」
K先輩に怒られた
第2章 ぐらつく2つの道-2
それから、その男。いや、先輩とは定期的にサウナに通うようになり、たまたま一緒になった剣崎とも仲良くなって一緒に楽しむようになった。そして何やかんやあり、今に至るのだった。思い出に耽っていると横からチョップが飛んできた。
「セレン、ボーッとしない。早くいくぞ。どうせ彼女のことでも考えてたんだろ。」
「違いますよ、先輩のこと考えてました。」
「え。先輩ちょっと男の子から好意を向けられるのは初めて