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黄昏の黙示録

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2022年9月より、月刊連載として小説を投稿していきます。 こちらの方にマガジンとして纏めていこうと思います。 何卒よろしくです😂
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記事一覧

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−3_Q .

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−3_Q .

Vol.3 テルル・デカ・ダンス
 蒸し蒸しとした空気がいつの間にか少し軽くなった気がした。夏の澄んだ青がどこか薄くなって入道雲が小さくなっている。小さな窓から見える木漏れ日に僕は目を凝らしていた。この檻の外で起こっていることがどうなっているのか。僕は思いを爆ぜながら静かな時を過ごしていた。彼女達が来なくなってからはや1週間ー。来なくなったという事は、彼女達はきっと動き始めたという事なんだろうと思

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第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−2

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−2

Vol.2 悪戯のアリストテレス
「ルドラになりたい。」そう決意してから、私は具体的にどうしたらいいのか分からなかった。彼にこの想いを伝えるべきであるか。否か。彼が私にそんなことを言ってしまっても、裁判中の彼は何も言ってくれないかもしれない。ここで、ルドラのなり方なんて言ってしまえば、いやでも証拠になってしまう。そんなことはしないだろう。でも、そんな用意周到な彼がどうして警察に捕まってしまったのか

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第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド

第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド

Vol.1 黎明楚歌

 法廷内はざわついていた。長い長い梅雨が始まり、ジメジメとした空気がまとわりついてくる。冷房はしっかりと効いているはずだが、きっと中にいる人たちの熱気のせいだろう。誰もが真剣にこの裁判に注目していた。裁判長が定刻になったことを確認し、口を開いた。

「それでは、開廷します。被告人は前に出てきてください。」

被告人はゆっくりと落ち着いた様子で証言台の前に立った。彼の目は、朧

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第16章 人間農場-2

第16章 人間農場-2

Vol.2
 僕は、一連のニュースについての祝杯をみんなであげていた。銀座にあるちょっと小洒落た個室のすき焼き店。たまには贅沢をしませんかという二階堂さんの提案によって開催された。美味しいすき焼きに舌鼓を打ちながら、僕らは今回の事件を振り返っていた。
「うまくいきましたね。」僕はみんなに言った。
「大臣二人を連続で辞任させることができるなんてすごいです。斎宮さんのアイディアがとても良かったんですね

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第16章 人間農場-1

第16章 人間農場-1

Vol.1
 物語の結末は僕の心に何か複雑な感情を落としていった。主人公の死を持って終わった物語だった。復讐に踊らされて、最後はその虚しさを感じながら死んでいった。自分と何処か重なるところが有るような無いような感情だった。僕は、読み終えた本を本棚にしまった。僕の物語は、今描いている途中だ。そう思いながら、僕は眠りについた。
 眠りから覚める時、目覚ましよりも早く起きてしまう時がある。遠足の前や修学

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第15章 運命の女神−2

第15章 運命の女神−2

Vol.2 仙石原

シヴァ:教祖は、あなたに興味を持っています。

セレン:なぜ?

シヴァ:あなたは、我々には向かい、降り注ぐ不幸の豪雨を前にしても、我々に牙を向けてきた。その、行動力に。その執念は、教祖の心すらも動かしているということですよ。

セレン:教祖の心を動かしても僕には何の嬉しさもない。

シヴァ:まあまあ、そう言わずに。我々からすれば、素晴らしいことです。我々が教祖の心を動かすこ

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第十五章 運命の女神-1

第十五章 運命の女神-1

Vol.1
 「私が貴方と初めて出会ったのは小学生の時。多分覚えてないと思う。」
黒奈は、僕の方を見ていった。僕は黒奈の言う通り、何も覚えてはいない。黒奈と出会ったのは大学生に入学してからだったからだ。
「あれは、私が九州に空手の遠征に行った時。鹿児島県の鹿屋という場所にあるバラ園に行くことになったの。バラなんてあの頃の私には興味はなかったけど、両親はせっかくの九州ということではしゃいでいたわ。私

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第14章 怒りの蜜柑−2

第14章 怒りの蜜柑−2

 Vol.2
 ルドラのアカウントからの投稿も拡散されていく最中ー。何食わぬ顔で政治家達はいつもの日々を過ごしていた。その中の一人、若手政治家である松林は、政治事務所で荷物の整理などを任されていた。早く自分も国会で発言力を持ちたい。そして、大臣あわよくば内閣総理大臣になってみたいと夢を見ていた。野望を抱きながら、今日も事務所での雑務を行なっていた。

「宅配便です。荷物の受け取りお願いします。」

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第14章 怒りの蜜柑−1

第14章 怒りの蜜柑−1

Vol.1

 ’’お題:どうしたら日本の政治をよくできるのかな?’’

僕は、世界に問いかけた。この投稿は、SNSに住んでいる人たちは面白い冗談だと思ってたくさんの返信が寄せられてきた。

「国会に乗り込んでみるのはどうだろうか。」→「警備員に止められるだろ。」

「選挙に行け。若者がしっかりと行かないからだ。」→「出たよ老害。人口比率見てみろよ。じじい」

「爆弾でもぶっ放しますか。何人か議員

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第13章 歯車の下で−2

第13章 歯車の下で−2

Vol.2
朝を迎える日々がどうしてこうも苦痛に感じるのだろう。また一つまた一つと日々を重ねるたびに僕は、どうしようもない気持ちになる。煌びやかな日常を夢見ている。冷めたコーヒーを僕は啜った。

’’全く、君はどうしようもないな。’’

「何がだよ。」

’’いや、決意しては忘れて、決意しては忘れて。そうやって日々を繰り返して、また心をすり減らす。馬鹿の一つ覚えのように君はぐるぐると同じことを繰り

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第XⅢ章 歯車の下で-1

第XⅢ章 歯車の下で-1

Vol.1
 飛行機が離陸してから二時間程度が経った。あっという間に飛行機は着陸準備に入っていた。飛行機に乗っている間、僕は流れていく雲を見ながら終わってしまう休みを惜しんでいた。もう少し長く休みたかったと毎回毎回思うのは社会人になってからだった。長い人生の中で、卒業というシステムがなくなってしまった。今までは、最大で6年同じところに通って、それから卒業というシステムに従って、次のところにいく。こ

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第Ⅻ章 アップルゲニウス−2

第Ⅻ章 アップルゲニウス−2

Vol.2
ガタン。ソファーから雪崩が起きて雪が崩れ落ちるようにして僕は落ちた。僕の身体の上には毛布が乗せられており、冷えたココアがテーブルの上には置かれていた。覚醒していく脳が自分の記憶を思い起こし、Windowsを立ち上げるように僕は低い声を上げながら伸びをした。身体に乗せられている毛布は母がかけてくれたものだろう。そう、僕は本を読んだまま寝てしまっていたんだ。重たい体を起こし、僕は洗面台へと

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第Ⅻ章 アップルゲニウス−1

第Ⅻ章 アップルゲニウス−1

vol.1

僕は、槍さんの話を聞いて考え込んでしまっていた。復讐という名の怪物のことについて。そんな僕を見かねたのか。槍さんがつぶやいた。

「そろそろ、何か食べませんか。ここのカレーめちゃくちゃ美味しんですよ。」

「そうだな。セレン早く何か食べよう。腹が減ってはなんとやらだぞ。」

「それをいうなら腹が減っては戦はできぬだよ。」

「そういうことだ。早く食おうぜ。もう腹が減って死にそうだ。」

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第11章恩讐の彼此−2

第11章恩讐の彼此−2

Vol2

 僕は、アルバイトを終え家路につくことにした。帰りの電車の中、報道され続けるブルーガーデンのニュースをスマートフォンでチェックしながら。ニュースは、様々な企業がブルーガーデンと繋がっており、寄付金と言われるものを与えたり、もらったりしているものだった。大手の通販サイトの社長が追求されていたニュースが報じられていた。滑稽だった。社会とはこんなにも宗教団体なんかに癒着しているのだと思うと。

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