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日記

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うだつの上がらない日々のこと
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#随筆

惰性化がもたらす恐怖

惰性化がもたらす恐怖

ヤツに遭遇した。

年に数度、突然あらわれて我々の日常を脅かす、ヤツである。

今日のヤツは、コンビニで買い物中に突然あらわれた。

晩飯のため、商品の寿司と唐揚げ、ペットボトルのお茶を持ってレジに並び順番を待つ。
わたしの番がやってきて、レジカウンター越しに商品を手渡す。

店員「レジ袋お付けしますかぁ?」
わたし「お願いします」

無言でバーコードを読み取る店員。

今にして思えば、この時点で

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コボちゃんと張り合う

コボちゃんと張り合う

ほとんど何の意味もなく、このnoteを毎日更新している。

なんのために、意味のない締め切りを自分に課すのか、自分にも理解できないが毎日書いている。

「ああ、晩飯食ったらnote書かなきゃな…」と憂鬱にすらなるのだが、毎日更新の記録を止めたくないという気持ちだけで、今日も今日とて更新し続ける。

世の中で、わたしと同じように毎日締め切りに追われる人物と言えば、植田まさし先生である。

「コボちゃ

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さよなら毒舌

さよなら毒舌

毒舌という言葉は、徐々に死後になりつつあるように思う。

昔は「毒舌」という言葉でふんわりと包含されていたものが、実は単なるレイシズム、ジェンダー差別、ルッキズムの類のものだということが、世間に詳らかになったのだろう。

それはそれで良いことだと思う。というか、世の中が変わるというのは、そういうことでしかないと思う。

さて、毒舌から差別や暴力を取り除いていった結果、最後に残るのはなんだろうか?

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親と子

親と子

(カバー:野風増/河島英五)

子供を持つ人のことを「親」と呼ぶ。「親」という言葉にはなにやら、やたらと深い意味がある。

子供が生まれるということは、その子供が独り立ちできるようになるまで、親として一緒に生きていくということだ。その子供は将来どんな人間になるか全くわからない。総理大臣になるかもしれないし、犯罪者になるかもしれない。親である自分を愛してくれるかもしれないし、自分を殺すかもしれない。

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恐怖は消えない

恐怖は消えない

(カバー:黒沢清『回路』より)

どういうわけか、子供の頃からホラーやオカルトに人並みならぬ興味をおぼえている。

一番最初のきっかけは「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ再放送ではなかったかと記憶している。世界の見えないところで、この世ならぬものが共存している水木しげるの世界観に、幼いわたしは心惹かれた。自分にもいつか妖怪と出会うチャンスが訪れるのではないかと、心霊番組や妖怪の図版を見ながら、超常的な世界

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掃除のたのしみを知って思うこと

掃除のたのしみを知って思うこと

週に1回、週末には家の掃除をすることにしている。普段は妻と分担することにしているが、ここ2ヶ月ほどは妻が帰省中のため、家の隅々まで1人で掃除をしている。

単純に作業量が倍になるのでどれほど大変かと、初めの頃は億劫に感じていたが、始めてみると案外楽しみを感じている自分がいる。
普段生活していながら自分が掃除担当ではないリビングやキッチンでは、毎週掃除するたびに新たな汚れポイントを発見したり、自分で

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ハラスメントは〈起こしたら終わり〉

ハラスメントは〈起こしたら終わり〉

実は数ヶ月前から、会社でマタハラを受けている。

わたしは男性なのでパタハラと呼ぶべきかもしれないが、呼称はともかくとして、育児休職の取得に関して上司から非常に難しい注文を受けており、実質的に取得が妨害されている状況だ。

個人が特定されるのでこれ以上詳らかにしないが、育児休職は法に定められた制度なので、これを正しく運用できない事態は直ちにコンプライアンス違反である。

わたしが勤めているのはそれ

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ブーカ、ブーカ、ブーカ、…

ブーカ、ブーカ、ブーカ、…

現代はVUCAの時代らしい。

グローバル化が進んだ世界では遠方の国の災害や戦争やテロが直ちに自国や自企業に影響を及ぼすので、その波及力の速さや強さを表現するために便利だからこそ皆が飛びついて使いたくなるのだろう。

VUCAとかいてブーカと発音する。見ても聞いても口に出しても気色の悪いこの単語だが、それでもじわじわと、生活レベルでも人口に膾炙しつつあるように思う。気色の悪いことだ。

何より気色

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感動よりも

感動よりも

だいたい30年くらい生きた時点で気づいたことがある。
人間が「感動」するための感性は10代からせいぜい20代前半までの経験をもとに構築されて、そこから先はさほど変わらないということだ。

音楽は10代の頃に聞いていたミュージシャンのものばかりを聞き続けるし、好きな映画のベストを挙げろと言われても、10代の頃に出会ったものしか思い浮かばない。

10代の頃はどんな本を前にしても「この本には自分の人生

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あがり症でしゃべりが苦手なわたしが工夫してきたこと4つ

あがり症でしゃべりが苦手なわたしが工夫してきたこと4つ

生来、人前で話すことが好きではない。

中学生の頃に自分が人前が苦手であることを自覚してからは、人前に立つだけで動悸がしたり、冷や汗をかいたり、顔や身体に湿疹が出るようになった。
大学生になってからは少しずつ人前でプレゼンする機会が増えてきたが、それでもあがり症はなかなか治らなかった。
社会人になって毎日何かしらの打ち合わせに出て発言するようになってからも、苦労した。

世の中は、口下手な人間に厳

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あとでやる人間

あとでやる人間

世界には2種類の人間しかいない。

「いまやる人間」と「あとでやる人間」だ。

わたしは根が不精で、後者を自認している。

学生時代のことだ。

7月のある日、家に帰るとガスが止まっていた。ガスが止まるとどうなるか。お湯が出ない。すなわちシャワーは水を浴びることになる。夏場だったので「まあいいか」と思ってそのまま水シャワーを浴びた。夏場とはいえさすがに凍える思いだったが、そのあと暖かい格好をして寝

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そして誰もいなくならなかった:Twitterの思い出

そして誰もいなくならなかった:Twitterの思い出

わたしはTwitterをやっていない。

かつてはやっていた。
2010年ころにTwitterを知り、すぐにアカウントをつくった。当時は、有名人からリプライが飛んできて喜んだり、似たような趣味をもつ人たち(その後、クラスタと呼ばれるようになるやつ)同士でオフラインでもつながるようになったりと、牧歌的なTwitter世界を楽しんでいた。

2014~15年ころ、ちょっとした政治の季節がやってきた。S

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忙しさの文脈

忙しさの文脈

先日の体調不良から復調してくると、自ずと仕事が忙しくなってきた。
家事も今まで通りやっているし、子供のこともなんだかんだ色々やることがある。
マタハラを受けて会社を転職しようとしているので尚忙しい。外資系に応募するので英語もちょっとずつ思い出さないといけない。

「忙しい、は言い訳だ」と良く言われる。
忙しい中でも寸暇を惜しんでとり組めば、きっとできるはずだ、という趣旨だ。
わたしもある時期までは

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丁寧さの代償

丁寧さの代償

ものづくりを仕事にしていて思うが、何かをつくる仕事は本当に生産性が低い。労力と利益が全く見合わない。

わたしの生業とする建築に関していうと、たとえば「雨漏りがしない」というのは、大前提で確保されているべき、建物の基本性能である。

しかし実際に「雨漏りがしない」建物をつくることは、実はそう簡単ではない。
同じように見えても、屋根の形や大きさは建物によって微妙に異なる。使う材料の組み合わせも異なる

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