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あがり症でしゃべりが苦手なわたしが工夫してきたこと4つ

生来、人前で話すことが好きではない。

中学生の頃に自分が人前が苦手であることを自覚してからは、人前に立つだけで動悸がしたり、冷や汗をかいたり、顔や身体に湿疹が出るようになった。
大学生になってからは少しずつ人前でプレゼンする機会が増えてきたが、それでもあがり症はなかなか治らなかった。
社会人になって毎日何かしらの打ち合わせに出て発言するようになってからも、苦労した。

むかしはまさにこんな感じの子供だった

世の中は、口下手な人間に厳しい。
モゴモゴとしているうちに発言を奪われ、そのうち居場所もなくなってしまう。
頭の中身がはっきりしていても、伝え方が上手くなければバカだと思われてしまう。
バカだと思われると信頼されず、良い仕事もまわってこなくなる。

これではいかんと思い、少しずつしゃべり方を工夫するようになってからは、多少マシになった。

「〈しゃべりが上手〉と思われること」が大事

工夫していくなかで発見したのは、「しゃべりが上手いこと」よりも「〈しゃべりが上手い〉と思われること」のほうが、遥かに簡単かつ重要だということだ。

このことに気づいてから、しゃべりが下手なことに対するコンプレックスが徐々にやわらいでいった。

ここでは、わたしがやってきた工夫を少し書いてみようと思う。
10年ほど試行錯誤してきた完全にオリジナルな方法だが、多少の参考になるのではないかと思う。


①とにかく準備する

まずは基本中の基本。大大大大大前提〜
しゃべりが苦手なら、しゃべり以外で補うしかない。プレゼンに限らずどんな小さな打ち合わせでも、徹底的に資料を準備する。

ビジュアルを入れる

必要なのは「ビジュアル」である。ビジュアルの威力はすさまじい。人は目の前にビジュアルがあると必ずそれを見る。ベン図でもいいしダイアグラムでもいい、とにかく、伝えたい情報をグラフや表や図版に表現しておく。

例えば工程の遅延を説明するときには工程表を準備し、「この資料にある通り、工程が●●日遅延しています」としゃべる。これだけで、聞き手側の納得度は5割くらい向上するという実感を持っている。

キャプションを添える

ここで重要なのは、グラフや表や図版にキャプションを書くことだ。
あがり症な人は、資料を準備してあっても、いざしゃべり始めると頭の中が真っ白になってしまうことがある。
そこで、工程表の右下あたりに「✖月▲日現在、●●日工程が遅延中」と、わかりやすい文字で書いておく。
これにより、いざ説明する際にも、その文字を読み上げればいいだけになる。頭が空っぽでも説明できるようにしておくのだ。

資料には必ずページ番号をふっておくとか、文章なら段落番号を付けるとか、色々とテクニックはあるのだが、それは各人で改善していけばよいと思う。

資料をつくりすぎてわけわからなくなりテンパることもあるので注意


インド人にも通用する

ビジュアルの作り方は上司から学んだ部分もあるが、個人的にはインドの会社と取引していた時に身に着けたところが大きい。
インド人との商談は英語だ。私はあがり症なうえに英語が苦手なので、いざプレゼンしようとしても単語が出てこない。毎週のプレゼンにスピーチ原稿を用意するような時間は到底ない。英語をしゃべるというプレッシャーが、あがり症をさらに加速させた。
わたしは毎週のプレゼンには必ずスライドを準備し、スライドには最小限の簡潔な図版と、それを説明するごく短い英文を書くことにした。プレゼンの時には図版を見せて、そこに書いてある英文を読むだけである。
英語でのビジネスは未経験ながら、これで何とか乗り切ったことが自信になった。
絵=ビジュアルは英語と同じく万国共通語だ。



②とにかくゆっくり話す

わたしはあがり症なうえに活舌が悪く、しかも通りにくい声質をしている。普通に喋っているつもりでも、相手からはモゴモゴ聞こえるらしい。大きい声が出せないので、聞きにくいこと極まりない。

活舌も声質も、そうそう直しようがない。そういう人は「ゆっくりしゃべる」のが良いのではないかと思う。

戦場カメラマンを憑依させる

あがり症な人の典型が、しゃべり始めると早口になってしまうタイプではないだろうか。とにかく、ゆっくりしゃべる。わたしの場合は、戦場カメラマンの渡部陽一が乗り移ったくらいのつもりでしゃべると、ちょうど良い速さになる。

ゆっくりしゃべりの師匠


句読点を意識して「単語」を聞かせる

しゃべりながら句読点を意識して、単語がはっきりと聞こえるように強調する。
人はじっくり話を聞いているように見えても、それは「語り」を聞いているのではなく、会話の単語やフレーズを拾っているにすぎないようだ。
言葉の端々が聞き取れなくても単語さえ聞き取れていれば、それを脳内で補完して話の道筋を見出すことができる。人間の脳は偉大である。


③目をそらす理由を作る

よく「人の目を見て話しなさい」と言われると思う。会議やプレゼンにおいても基本とされるテクニックだ。
「人の目を見て話しなさい」と言われてそれができれば苦労しない、というのが、あがり症の人の本音だろう。
「目ではなく鼻や眉間を見れば気まずくない」と言われることもあるが、わたしのようなシャイおじさんにはそれも照れくさい。

しかしやはり、目が泳いでいる人の話というのはどうも安心して聞くことができない。

目を合わせるのが苦手な人におすすめなのが「目をそらす理由をつくる」ことである。

資料をみる

たとえば、会議参加者に配布している資料の説明をするときに「それでは●ページの図をご覧下さい。この図の通り・・・」と説明しながら自分もその資料に目をやることは、何ら不自然ではない。

  • 資料の説明をするときは、自分も資料に目を向けてしゃべる。

  • ときどき、文章やページの切れ目くらいのタイミングで相手の目を見る。

  • さらに説明の最終段階で「以上から~であるため、●●とすべきだと考えます」のタイミングで、相手のほうに目を向ける。

こうすると、相手と目を合わせる時間を最小限にしながら、身振り手振りにメリハリがつくことで「〈あなたに伝えたいと思っていますよ〉感」が醸し出される。

虚空をみつめる

相手との会話も、相手の目を見れない人にとっては苦痛の時間ではないだろうか。
そんなときは「虚空をみつめる」作戦が有効だ。

例えば「●●についてはどうお考えですか?」と聞かれたときに、「うーん…そうですねえ…それについては~」とかつぶやきながら、真正面の相手の顔ではなく、斜め上や横の虚空をみつめる。
こうすることで相手と目をあわせる時間を最小化しつつ「〈じっくりと考えていますよ〉感」がアピールできる。

思えば、「考える人」も謎に虚空をみつめているではないか。虚空をみつめる人は、なぜか「考えているっぽい人」と認識されるようだ。

どちらの例も、一石二鳥のソリューションである。わたしはこれで、目を合わせるという苦痛から逃れることができた。

なんか思慮深そう・・・


④しゃべりのうまい人のまねをする

戦時中、ラジオで大本営発表を読み上げる日本軍の広報担当者は、しゃべりにインパクトを持たせるために、寄席に通って落語家や講談師のしゃべりに学んだそうである。
大本営発表にその努力が活きたかどうかは疑問ではあるが、しゃべりが上手な人を真似るのは効果があると思う。真似ればいいだけなのですぐに効果が出やすい。

しゃべりは「総合力」

しゃべり方そのものを真似るのも一案だが、しゃべり以外のふるまいを真似るのも有効である。
しゃべりが上手い人は、たんに言葉を話すことが上手いのではない。小さなしぐさや表情などを含めた、総合力で勝負しているのだとわたしは思っている。

所作を真似る

あなたの身の回りにいる、しゃべりが上手い人の所作を観察してみてほしい。

どっしりとした安定感のあるしゃべり方をする人は、椅子に深く腰を掛けることで、リラックスした雰囲気を醸し出していたりする。それが安定感の印象につながっている。先生と呼ばれる職業に多いタイプである。
自分を重厚に見せたいときもこれ有効である。やせ型体形の人よりも多少肉付きのある人、声が高い人よりも低い人に適合しやすい所作だろう。

怖い人はだいたいこういう座り方

また、ちょっとおちゃらけた雰囲気で、相手を楽しませる雰囲気でしゃべる人は、所作が芸人っぽいことが多い。
予想に反する返答が返ってきときにずっこける、とか、相手からいじられたときに「ちょっと待ってくださいよ~」とかを平然とやる。
営業マンに多いタイプだ。地声が大きい人に適合しやすい所作だろう。
恥ずかしがり屋のあがり症には向かないかもしれないが、思い切ってキャラを入れるというのも一つのソリューションである。

「真似る」は「まねぶ(学ぶ)」である。これらはほんの例に過ぎないが、観察しながら真似ることが上達の近道であることは間違いない。


おわりに

しゃべりの上手さを、お笑い芸人やタレントを基準に考える必要はない。彼らのしゃべりの上手さは「本物」である。芸能人でもないわたしたち一般人は「〈しゃべりが上手い〉と思われること」のほうが大事である。

さらに言えば「しゃべりが上手い」までいかなくとも「しゃべりが下手だ」と思われなければそれでいい。それっぽく見えれば、それでいいのである。
自分のしゃべりを心配しなくてよくなれば、その分の時間を有効に使うことができるし、何より自分の自信につながる。

中学生のころ、自分のあがり症を自覚しはじめ、同級生から活舌の悪さをからかわれていたときは自分の人生を絶望したが、その後、いちおう会社員として10年近くなんとかやれている。

今でも自分のしゃべりが上手いとは思っていないが、いちおうは人並みにしゃべれるようになったということが、ここで示した4つのテクニックの有用性を担保していると思う。

多少お役に立つ記事になっていたら幸甚。

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