すんどめパターソン

すんどめパターソン

記事一覧

まあ待つぇ! ヘボン式ローマ字が導く日本語の破壊と再構築

ローマ字を原則訓令式とする内閣告示が約70年ぶりに見直され、ヘボン式を軸に検討が進んでいるそうな。 すなわち、「千葉」をTibaではなくChibaと表記する方式がようやく…

不死身の男、死す ~最後の武闘派一代記~

若い頃にさんざん世話になった居酒屋のママから電話が来て、その夫である大将が亡くなった、と知らされた。 大将はたしか、70代後半であったはず。 いっぽうママは80代…

「さようなら、バイバイよ。」の謎

故・北杜夫大先生の小説に出てくる、キタ・モリオという名の三文作家の口癖、 「さようなら、バイバイよ。」 が子どもの頃から大好きで、腹を抱えてゲラゲラ笑っていた身と…

『シェーンの誤謬』読者さんからご感想 「正にエンタメ!」

すんどめの書いた小説『シェーンの誤謬』に対し、いち読者の方から熱いご感想を頂戴しました。 以下の「」内はすべて同一の方からのメッセージです。 まずはお読みになっ…

新釈「このはしわたるべからず」~一休さんはイソップ的ドジキャラ?

また、新しい「シェーンの誤謬」に出会ってしまいました! シェーンの誤謬とは、人々の記憶の中で物語が変質していく現象であり、すんどめが提唱している概念です。 つい先…

「泣いてたまるか効果」~渥美清はどこにでもいる

60年代のテレビ・ドラマ『渥美清の泣いてたまるか』を観れば、実に面白い効果があなたの中に生じる。 それは、渥美清の他の主演作品のすべてが『泣いてたまるか』の一環…

答えにならない答え 本に触れない書評

最も強く心に残る、インタビューや人生相談の類。 それは往々にして、質問にちっとも答えていないようなケースである。 (以下、引用はすべて記憶によるもので、全く正確で…

笑いに自信が持てない時代

今の創作と昔の創作で決定的に違うことは、何か。 それは、笑いに対する自信である。 昔の創作作品群は、明らかに自らの「笑い」に自信を持っている。 それが受けないこと…

連載『数学はなぜ嫌われるか』 6章「スーガク屋さんはスージが苦手?」

あんたがもし「理系」なら、こんなことを言われたことはねえか? あるいはあんた自身、「理系」の奴に向ってこんなことを言ったことはねえか? 「お前、理系のくせになんで…

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涙の再会

その夜。 すんどめの妹・入れ食いパターソンは、訪ねてくる友達のために、近所の店で若鳥半身揚げを買って待っていた。 ところが、友達もまた来る途中で同じ店に立ち寄り、…

酔夫伝

酔っぱらいというものは、同じ話を何度もする。 あるとき居酒屋さんで、たまたま隣になったおじさんはすんどめへ、 「おかずのないときゃぶっかけ! あんなもん、3秒でで…

連載『数学はなぜ嫌われるか』5章「おんなじことを言い換えるのが数学!」

「『1+1』と『2』って、どうちがうのよ!? おんなじもんだろ!? どうせおんなじなんだろ!? それなのに、なんで『1+1』をわざわざ『2』って書き直さなきゃいけねえの…

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どこまで許せる「不思議扱い」!?~『空想科学読本』の役割

「不思議を不思議扱いされることの許容範囲」には、どうやら非常に大きな個人差があるらしい。 あるだけならまだしも、それがときに、ある程度には顕著な断絶を、社会へ生…

追悼、ジャズDJ児山紀芳~最後の生き字引よ安らかに

2019年2月3日、ジャズ評論家の児山紀芳(こやまきよし)さんが亡くなったと伝えられました。 これで、現代ジャズの黄金時代を直接に知るジャズ評論家もジャズDJも…

連載『数学はなぜ嫌われるか』 4章「すべての問題は文章問題」

よく、こんなことを言う人がいるよな。 「計算問題は得意だけど、文章問題は苦手」 けどよ、あんたの言う「計算問題」って、つまりはどんな問題だ? その問題を、ここで出…

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昔の映画にしかない「静寂」と、それに挑んだ北野武

不思議なことがある。 昔の映画にしかない「静かさ」というものが、往々にしてある。 むろん現代の映画にも静かな作品はあるし、昔の映画にもにぎやかなミュージカル・コメ…

まあ待つぇ! ヘボン式ローマ字が導く日本語の破壊と再構築

ローマ字を原則訓令式とする内閣告示が約70年ぶりに見直され、ヘボン式を軸に検討が進んでいるそうな。
すなわち、「千葉」をTibaではなくChibaと表記する方式がようやく公式になろうというのである。
むろん既に事実上は定着していたが、正式に、そうしようという話らしい。

さてそうなると、すんどめパターソンの前々からの妄想が、いよいよ現実味を増してくる。
その妄想とは、五十音の破壊と再構築である。

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不死身の男、死す ~最後の武闘派一代記~

若い頃にさんざん世話になった居酒屋のママから電話が来て、その夫である大将が亡くなった、と知らされた。
大将はたしか、70代後半であったはず。
いっぽうママは80代で、今も元気いっぱいである。
大将は、おそらく日本最後の、真の武闘派であった。
追悼の意をこめて、この機にひとりの武闘派の思い出を、まとめておきたい。



亡くなった大将は、空手の有段者であった。
大手の重工業会社に勤める技術者でもあ

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「さようなら、バイバイよ。」の謎

故・北杜夫大先生の小説に出てくる、キタ・モリオという名の三文作家の口癖、
「さようなら、バイバイよ。」
が子どもの頃から大好きで、腹を抱えてゲラゲラ笑っていた身としては極めて貴重な発見が、このほどあった。
それは、映画『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971年、英米。ショーン・コネリー他)が、たまたまテレビで放送されていたのを見たときのことだ。
ジェームズ・ボンドと行動を共にしたためさんざん危険

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『シェーンの誤謬』読者さんからご感想 「正にエンタメ!」

すんどめの書いた小説『シェーンの誤謬』に対し、いち読者の方から熱いご感想を頂戴しました。
以下の「」内はすべて同一の方からのメッセージです。

まずはお読みになっている途中に下さったメッセージから抜粋。

「ワザワザいいキャラですねw
非常に好感が持てます。」
「今やっとニッチモからシェーンの誤謬という単語が出て、2章いきました!
めちゃくちゃ面白いです!!」
「大変ヘビーになる訳ですねw
会話劇

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新釈「このはしわたるべからず」~一休さんはイソップ的ドジキャラ?

また、新しい「シェーンの誤謬」に出会ってしまいました!
シェーンの誤謬とは、人々の記憶の中で物語が変質していく現象であり、すんどめが提唱している概念です。
つい先日、14歳の男の子と雑談をする機会がありまして、たまたま『一休さん』の話題になりましたので、「このはしわたるべからず」という話を知っているかと尋ねましたところ、
「ああ知ってるよ。こんな話さ」
得意げにそう言って彼が語ってくれたその話とい

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「泣いてたまるか効果」~渥美清はどこにでもいる

60年代のテレビ・ドラマ『渥美清の泣いてたまるか』を観れば、実に面白い効果があなたの中に生じる。
それは、渥美清の他の主演作品のすべてが『泣いてたまるか』の一環に見えてくるという効果である。
ぜひこの不思議な効果を、体験してみるとよい。
『男はつらいよ』(いわゆる「寅さん」)シリーズはもちろん、『喜劇急行列車』から『拝啓天皇陛下様』、『あゝ声なき友』に至るまで、渥美が主演のものならことごとく、

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答えにならない答え 本に触れない書評

最も強く心に残る、インタビューや人生相談の類。
それは往々にして、質問にちっとも答えていないようなケースである。
(以下、引用はすべて記憶によるもので、全く正確ではない。)



かつて井上陽水がライブをやったとき、それを放送したテレビ局は、楽屋で彼にインタビューした。
「陽水さんは、なぜ今回のライブをやってみようと思ったのですか?」
すると井上陽水はにわかに不敵な笑みを浮かべ、

それはプロモ

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笑いに自信が持てない時代

今の創作と昔の創作で決定的に違うことは、何か。
それは、笑いに対する自信である。
昔の創作作品群は、明らかに自らの「笑い」に自信を持っている。
それが受けないことも、気づかれないことも、まるで恐れていない。



たとえば1937年の映画『スタア誕生』(ウィリアム・A・ウェルマン監督、米)を観よ。
ヒロインたる田舎娘が女優を夢見て家出。
祖母が、その家出をひそかに手伝う。
しかし祖母と、ヒロイン

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連載『数学はなぜ嫌われるか』 6章「スーガク屋さんはスージが苦手?」

あんたがもし「理系」なら、こんなことを言われたことはねえか?
あるいはあんた自身、「理系」の奴に向ってこんなことを言ったことはねえか?
「お前、理系のくせになんでこんなことも分かんねえのよ」
そうなんだ。
世の多くの奴らが、「理系」と言やあみんな数字に強くて、複雑な暗算も瞬時にできて、元素記号と化学式をぜんぶ暗記してて、電気回路の不具合なんざちょちょいのちょいで調整できて、宇宙物理学の最新理論から

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涙の再会

その夜。
すんどめの妹・入れ食いパターソンは、訪ねてくる友達のために、近所の店で若鳥半身揚げを買って待っていた。
ところが、友達もまた来る途中で同じ店に立ち寄り、若鳥半身揚げを買って手土産に。
家へ上がって、入れ食いパターソンの用意した半身揚げを見るなり、
「1羽になっちゃった!」

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酔夫伝

酔っぱらいというものは、同じ話を何度もする。
あるとき居酒屋さんで、たまたま隣になったおじさんはすんどめへ、
「おかずのないときゃぶっかけ!
あんなもん、3秒でできる、3秒で。
まずは卵をコン。
これで1秒でしょ、ね?
次にその卵をご飯の上にパシャッ。
これで2秒でしょ、ね、そうでしょう?
で最後に醤油をタラッ。
ホレ3秒でしょ3秒。
ね?
そうでしょ?
だからおかずのないときゃぶっかけが一番いい

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連載『数学はなぜ嫌われるか』5章「おんなじことを言い換えるのが数学!」

「『1+1』と『2』って、どうちがうのよ!?
おんなじもんだろ!?
どうせおんなじなんだろ!?
それなのに、なんで『1+1』をわざわざ『2』って書き直さなきゃいけねえのよ!
おんなじこと何回も書かせるんじゃねえよバッキャロウ!!!」

――これは。
ある人物の、心の中だ。
その人物の心の中をすんどめが代弁すりゃあ、どうやらこんな具合になる。
奴が数学を憎み、呪い、蔑み、数学の存在を全否定しやがるの

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どこまで許せる「不思議扱い」!?~『空想科学読本』の役割

「不思議を不思議扱いされることの許容範囲」には、どうやら非常に大きな個人差があるらしい。
あるだけならまだしも、それがときに、ある程度には顕著な断絶を、社会へ生み落とす。



非現実的なこと。
不思議なこと。
空想上と思しきこと。
ファンタスティックなことが話題にのぼったとき、あなたならそれを何と表現するだろうか。
たとえば、
「昨日UFOを見たんだよ。
スーパーの駐車場で車に乗ろうとしていた

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追悼、ジャズDJ児山紀芳~最後の生き字引よ安らかに

2019年2月3日、ジャズ評論家の児山紀芳(こやまきよし)さんが亡くなったと伝えられました。
これで、現代ジャズの黄金時代を直接に知るジャズ評論家もジャズDJも、ついに日本からひとりもいなくなった、とすんどめは思います。



ちょっと説明が必要だと思いますが、ジャズの歴史の中で、いわば「ジャズがロックだった」時代がありまして、それはやはり1930年代前後だと言っていいはずなんですね。
ロックの

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連載『数学はなぜ嫌われるか』 4章「すべての問題は文章問題」

よく、こんなことを言う人がいるよな。
「計算問題は得意だけど、文章問題は苦手」
けどよ、あんたの言う「計算問題」って、つまりはどんな問題だ?
その問題を、ここで出してみてくれ。
さあ、どうだろうか。
あんたは言うかも知れねえ。たとえば、

1+1

これが計算問題に決まってるだろ、ってな。
つまり、問題にゃただ「式」だけ書いてあって、その「式」を「計算」して「答え」を出させるのが計算問題。
式以外

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昔の映画にしかない「静寂」と、それに挑んだ北野武

不思議なことがある。
昔の映画にしかない「静かさ」というものが、往々にしてある。
むろん現代の映画にも静かな作品はあるし、昔の映画にもにぎやかなミュージカル・コメディなどはある。
しかし現代のどんな静かな映画も持ちえない、何とも言えない独特の静かさが、昔の静かな映画にはある。
たとえば50年代フランスのアニメーション映画『やぶにらみの暴君』を一部改変した『王と鳥』や、時代も製作国も忘れたがモノクロ

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