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いつもと変わらない、非日常。


目覚ましのアラームは、鳴らない…。


朝。ベッドルーム。


窓から差しこむ陽の光が、瞼を照らす。

セミの声や、小鳥のさえずりが耳に届く。


寝返りを打ち、うっすら目を開けると、

窓の外は、雲一つない青空。


そう、

今日は私の、特別な日…。


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キッチンへ向かい、ブラックコーヒーを淹れる。

…コーヒーの香ばしい薫りが、鼻をくすぐる…。


私は、ティーカップを片手で持ち上げて、

窓の外を眺めた。


(今日は、何をしようか…何を食べようか……)


そんなことを考えながら、コーヒーを1口飲む。



平和な空気と、コーヒーの香りが、

僕の胸に入り込んでいく…。


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部屋の掃除をしたり、

ネットショッピングをしたり、

猫と戯れたり、、

気の赴くままに、時間を使う。


それが私の、唯一の特権。

……何でもない時間を、自分の為に使うのだ。


お昼に、大好物のたまごサンドを食べて、

ソファで、うたた寝をした。


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夕方。

…茜空が、私の頬を照らす。


私は、パソコンを開き、

小型カメラの前に座った。



…電源を入れ、しばらくすると、

友達や家族の顔が、小さな画面に集まった。


そして、皆一斉に、こう言うのだ。



「「「  …せーの、

             〇〇!!誕生日おめでとーー!    」」」




…そう、今日は私の誕生日。


私が生まれた日。

…私の命が、誕生した日。


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リモート誕生日パーティーを終え、

部屋に静寂が訪れる。



夜。

賑やかな笑い声が、頭の中で再生され、

少し寂しくなった。


……でも、心は満たされていた。



ここに、猫がいる。

画面のみんなが、笑っていた。

空は、いつも近くにあった。



特別な日じゃなくても、

非日常じゃなくても、


…幸せは、日常の中にあったんだ。


…気付けて良かった。



窓の外、

いつもと変わらない星空が、

… いつもより、輝いて見えた。



















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