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『ミルク』について—自作を語る—
私が本格的な戯曲を書き始めたのは高校演劇を始めてからだった。本格的な戯曲、というのは実際に舞台上で演じられる演劇の台本としての戯曲ということである。戯曲は演じられて初めて完成する。少なくとも私はそう考えている。
高校演劇については様々な思いがある。感謝もあるし、後悔や恨みもある。高校二年のとき、地区大会に持っていった作品は『ミルク』というタイトルだった。対外的には処女作である『あけぼの』に連な
タイムマシン日和(ラジオドラマ)
【要約】
「ついにタイムマシンができるぞ!」長年に及ぶ皆の努力が結実したのである。博士、エンジニア、パイロットの三人はタイムマシンの完成という歴史的瞬間を目前にしていた。喜びと充実感を体中に漲らせている三人だったが、焦りは禁物。ひとまず休憩を挟むことにする。
しかし、休んでいるとどうも変な感じがするのだった。違和感は次第に広がってゆく。何かがおかしい。明日はいよいよタイムマシン完成の日だという
「倒藝家」という名前について
倒藝家(トウゲイカ)とは私と樽田賢一、颯水凛太朗を共同主宰とする劇団のことである。現在五人の団員を擁し、演劇やラジオドラマ、映像制作等の活動をしている。
倒藝家の発起人は私だが、私は今まであまり倒藝家や倒藝家のコンセプトについてまとまった文章を書いてこなかった。何故と言って、色々と忙しかったこともあるが、倒藝家という団体の性質そのものが私にとっても未だに掴みきれない要素を内包しているということ
めもりぃ(『虚構の夏』より引用)
眼をさますと夜だった。時間は分からなかったけれど、空が暗かったから。もう一度寝ようとしたが眠れない。眠くないと言うより、眠れないのだった。眠りとは《起きている者》の特権なのだ。私は起きていながらも、眠っているような気がしていた。
認識の曖昧な覚醒には得体の知れない不安が付き物で、私はそのためリビングに向かった。家のものが誰かいるかもしれないし、誰もいなかったら深夜ラジオを聴こう。その時の私は純