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幽体離脱

宇宙船ほどの孤独に
耐えられなくなってしまった
ある朝

天井の木目を見ていると
世界が回りだした

なんて速さだと思ったその時
急上昇する回転速度は私の意識に
 追いつき
追い越し
   通り抜け

いつの間にか
私は天井にいて下を見ている
ベッドの下にいる私の抜け殻は
眠ったままの母に抱かれて
天井を見ている

大きく開かれた眼から
涙が溢れている

ああ、また幽体離脱してしまったのだ
もうすぐ母が、眼を覚ます

私はゆっくり着陸の姿勢を作る
間違わぬように
 ゆっくり
  ゆっくり
   世界を降下してゆく

力学の問題を解きながら
気がつくと
私は十五年前に幽体離脱している
回転する滑車に合わせて
地球が回転する

無限空間を光速で駆け巡り
15×365回転した私は
東京のある正確な地点に着地する

コップの中の氷はすっかり融けて
結露が机を濡らしている

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