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経済発展の舞台裏に潜む不平等の起源『国家はなぜ衰退するのか』

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 今日は、ふたりの経済学者が「世界にはなぜ、豊かな国と貧しい国が存在するのか、不平等の原因とはなんなのか」を、政治と経済の制度に焦点を当てて書かれた本を紹介したいと思います!

 なぜある国は豊かで、ある国は貧しいのか?
 なぜ不平等は生まれるのか?

 わたしはこの本を読んで、ジャン=ジャック・ルソーの『人間不平等起源論』を思い出しました。

 ルソーは「人間たちのあいだの不平等の起源を解明するには、まず人間そのものについて知る必要がある」といい、いわく「人類には二種類の不平等があると考えている。一つは自然の不平等、または身 体的な不平等と呼びたいものである。もう一つは社会的または政治的な不平等と呼びたいもの」だと述べています。

 この本は、ルソーが提示したこれらの疑問に、アクチュアルな「制度」というアプローチを通して、答えを出しているように思われます。
 ダロン・アセモグルとジェームズ・A・ロビンソンの主張は「国の豊かさや貧しさは、地理的な条件や文化的な背景ではなく、その国に根付く政治・経済制度によって決定される」と……

 国家はなぜ衰退するのか?

 その根源に迫るために、くわしく紹介していきます!


はじめに

 ダロン・アセモグルとジェームズ・A・ロビンソンによる著書『国家はなぜ衰退するのか』は、経済発展と衰退の要因を政治・経済制度の観点から分析しています。

主な主張

  • 制度仮説  国家の繁栄と衰退は、地理や文化ではなく、政治・経済制度によって決定されるという考え方を提示

  • 包括的(インクルーシブ)制度 vs. 収奪的(エクストラクティブ)制度

    • 包括的な制度 参加と競争を促し、イノベーションと経済成長を促進する制度。法の支配、財産権の保護、公正な市場などが含まれる

    • 収奪的な制度 少数のエリートが権力と富を独占し、社会全体の利益を損なう制度。独裁政治、腐敗、不平等などが含まれる

  • 制度の持続性と変化 制度は一度確立されると、その構造を維持しようとする力が働くため、変化が困難になる。しかし、政治的・社会的要因によって制度が変化することもあるという

具体例

 『国家はなぜ衰退するのか』は、歴史上の様々な国家を例に挙げ、制度仮説を検証しています。例えば、北朝鮮と韓国の経済格差は、制度の違いによって説明できると主張しています。

 詳しく解説していきます。

制度仮説の深掘り

 アセモグルとロビンソンは、国家の命運を握るのは地理的条件や文化的な背景ではなく、その国に根付く政治・経済制度だと主張します。この「制度仮説」を支える具体的なメカニズムを見ていきましょう。

  1. 創造的破壊と経済成長

    • 包括的な制度の下では、新しい技術やアイデアが歓迎され、既存の産業構造を塗り替える「創造的破壊」が起こりやすい。これにより、経済は常に活性化し、持続的な成長を遂げることが可能

    • 一方、収奪的な制度では、エリート層が既得権益を守るために変化を阻害し、創造的破壊を妨げる。結果として、経済は停滞し、衰退に向かう可能性が高まる

  2. 人的資本の蓄積と技術革新

    • 包括的な制度は、教育への投資や機会均等を促進し、国民全体の能力向上を促進させる。加えて、高い教育水準と多様な才能は、技術革新の原動力となり、経済発展を加速させる

    • 収奪的な制度下では、教育機会が一部の特権階級に偏り、社会全体の人材育成が滞る。これにより、技術革新が遅れ、経済成長の足枷となる

  3. 政治的安定と投資促進

    • 包括的な制度は、法の支配や財産権の保護を徹底し、公正な競争環境を整備する。このような安定した環境は、国内外の投資を呼び込み、経済発展を後押しする

    • 収奪的な制度では、政治腐敗や法の不確実性が蔓延し、投資リスクが高まる。企業や個人が安心して経済活動を行うことができず、経済成長が阻害される

歴史的検証と現代への示唆

 本書では、古代ローマ帝国から現代のアフリカ諸国まで、様々な事例を分析し、制度仮説を検証しています。例えば、植民地時代に異なる制度を導入された国々が、その後、大きく異なる経済発展を遂げた事例などは、制度の重要性を示す有力な証拠として挙げられています。

 また、現代の中国の経済成長についても、包括的な制度への移行がどこまで進むかによって、今後の発展が左右されるとの見方を示しています。

批判と議論

 本書の主張は、地理や文化の役割を軽視しているという批判もあります。 しかし、著者らは、地理や文化が制度形成に影響を与えることは認めた上で、最終的には制度が国家の命運を決定づけるという立場を堅持しています。

 また、制度の変化メカニズムについては、本書では十分に説明されていないという指摘もあります。制度は、政治的・社会的要因が複雑に絡み合って変化するため、そのメカニズムを解明するには、さらなる研究が必要です。

まとめ

『国家はなぜ衰退するのか』は、経済発展と衰退の要因に関する重要な視点を提供し、制度の重要性を改めて認識させてくれる1冊です。経済学の知識がなくても理解できる平易な言葉で書かれており、経済学の入門書としても最適です。世界の現状を理解し、未来をより良くしたいと願うすべての人におすすめしたい本です。
 ぜひ、あなたもこの本を手に取ってみてください。きっと、新しい発見があるはずです。

 わたしは、この本を読んで制度の力が未来を変える鍵となることを痛感しました。この本は、国家の運命を左右する「制度仮説」が現代社会の課題解決にいかに重要かを説いているとおもいます。
 政治と経済の相互作用はどうなっていくのか? 今後の展望にも深い関心を抱きました。
 本書の主張は、現代社会における様々な課題を考える上でも、多くの示唆を与えてくれるでしょう!

 より深く理解したい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

国家の衰退と停滞を制する、経済学の秘策ここにあり!
経世済民とは何なのか? あなたもその真実を知りたくありませんか?

【編集後記】
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