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本能寺の変1582 第121話 15信長の台頭 2尾張統一 天正十年六月二日、明智光秀が織田信長を討った。その時、秀吉は備中高松で毛利と対峙、徳川家康は堺から京都へ向かっていた。甲斐の武田は消滅した。日本は戦国時代、世界は大航海時代。時は今。歴史の謎。その原因・動機を究明する。『光秀記』

第121話 15信長の台頭 2尾張統一 

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義龍は、鉄炮を使うつもりだった。

 鉄炮伝来は、天文十二年1543。
 その16年後の姿がここにある。
 諸国に普及していた。
 信長の着眼。
 堺見物は、「先見の明」、と言うべきだろう。 

  夜るは、伴の衆に紛れ、近々と引き付け、様子を聞くに、

  公方(将軍義輝)の御覚悟さへ参り侯て、
  其の宿の者に仰せ付けられ侯はゞ、
  鉄炮にて打ち侯はんには、何の子細有る間敷きと申し侯。

  (討手らは)急ぎ侯間、程なく、夜に入り京着侯て、
  二条たこ薬師*の辺に宿を取り、

   *京都市中京区蛸薬師町

これが信長の知るところとなった。

 兵蔵が信長の宿所へ駆け込んだ。

  夜中の事に侯の間、
  其の家の門柱左右にけづりかけを仕り侯て(目印をつけて)、

  それより、上総殿御宿を尋ね申し侯へば、
  室町通り上京うら辻(上京区裏築地町)に御座侯由申す。
  尋ねあたり、御門を扣(たた)き侯へば、御番を居置かれ侯。

  田舎より御使に罷り上り侯。
  火急の用事に侯。
  金盛(森)か蜂屋に御目にかゝり侯はんと申し侯。
  両人罷り出で、対面侯て、右の様子、一々懇(ねんごろ)に申し上げ侯。

 信長に、これを報せた。

  則ち、御披露のところに、丹羽兵蔵を召し寄せられ、
  宿を見置きたるかと御諚に、

  二条たこ薬師辺へ一所に入り申し侯、
  家宅門口に、けづり懸け在り侯て置き申し侯間、まがひ申すまじきと
  言上侯。

信長は、先制攻撃を懸けた。

 信長らしい。
 正面から。
 美濃の討手へ。

  夫(それ)より、御談合、夜も明け侯。
  右の美濃衆、金森存知の衆に侯間、早朝に彼の私宅へ罷り越し侯へと
  仰せ付けられ侯。

  丹羽兵蔵をめし列れ、彼の宿のうら屋へつつと入り、
  皆々に対面侯て、

 彼らは、驚いた。
 五百対三十人。
 万事休す。

  夕部(ゆうべ)、貴方ども上洛の事、上総介殿も存知侯の間、
  さて、参り侯、
  信長へ御礼申され侯へと、金森申し侯。

  存知せしむるの由侯つる。
  色をかへ仰天限りなし。

義龍の企ては、失敗した。

 手段を選ばず、である。
 「油断」
 それは、死を意味した。
 気の休まる暇などない。
 神経の磨り減る日々がつづく。

  翌日、美濃衆、小川表*へあがり侯。
  信長も、裁(立)売*より、小川表御見物として、御出で侯。
  爰(ここ)にて、御対面侯て、御詞を懸けられ侯。

  汝等は、上総介が討手にのぼりたるとな。
  若輩の奴原が進退にて、信長を躵(ねら)ふ事、
  蟷螂(とうろう=カマキリ)が斧(おの)とやらん。
  実(まこと)しからず。
  さりながら、爰にて仕るべく候やと、
  仰せ懸けられ候へば、

  六人の衆、難儀の仕合せなり。


   *小川表 京都府京都市上京区小川町
   *立売  京都府京都市上京区裏築地町68

信長は、用心深い。

信長の評判である。

 都人の評価は、二通りに分かれた。

  京童二様に褒貶なり。
  大将の詞には、似相はず、と申す者もあり。
  亦(また)、若き人には、似相ひたる、と申す者も候へき。
                          (『信長公記』)

信長は、京を発った。

 同七日。
 奈良・堺へ向かったものと思われる。

  七日、己酉(つちのととり)、雨降る、天一下良、二月中、
  一、尾州の織田上総介晝に立ち帰国すと云々、
                          (「言継卿記」)

信長は、八風越えにて清州に帰った。

 命懸けであった。
 信長は、無事、成し遂げた。 
 権威を喪失し、凋落した足利幕府の実態を、己の目で確と見た。
 体中に、抑えきれぬ若さと情熱が滾っていた。

  五三日(=半月)過ぎ侯て、上総介殿、守山(滋賀県守山市)まで御下り。
  翌日、雨降り侯と雖も、払暁に御立ち侯て、
  あひ谷より、はつふ峠(八風峠=近江~伊勢)越え、清洲まで廿七里、
  其の日の寅の刻(4時頃)には、清洲へ御参着なり。
                          (『信長公記』)


 ⇒ 次へつづく 第122話 15信長の台頭 2尾張統一 


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