時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の拾(完結)

時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の拾(完結)

 明けて文政二年正月三日、 江戸城吹上苑で、十一代将軍家斉の上覧相撲が催された。  当日、暁六つには竹橋門外の御舂屋に、惣年寄、行司、力士、すべて染帷子、上下、または羽織袴に帯刀で勢揃いした。  四つ時に始まった上覧相撲は、 まず、 行司・吉田追風が進み出て、天長地久、風雨順時の祭典を執行した。すなわち、土俵の内を太極、左右の入口を陰陽、四柱を四時に象どり、中央の土を加え、木火土金水、および仁義礼智信の五常に象どる。  この後、東方幕下二十一人、西方幕下二十一人、さらに東方

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加賀藩大槻伝蔵、前田土佐守御家騒動実録講談肉筆墨書和本古書……

加賀藩大槻伝蔵、前田土佐守御家騒動実録講談肉筆墨書和本古書……

 先日、今書いている作品の資料として戦国時代から江戸時代初期の加賀藩の「武家の献立」を調べていたら、「加賀藩 舟木何某」の料理の献立の古文書の直筆の写し本が、検索で出て来た。 「加賀藩の舟木さん、加賀の料理について詳しい人なんだな。ふーん」と、大して気にとめなかった。  その前に、ヤフオクで加賀藩の古文書が2冊で2500円だったので、内容も「お家騒動」のものだったので、つい落札した。  昨夜、Azmazon Prime Videoで、たまたま上戸彩主演の「武士の献立」を

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時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の九

時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の九

 相撲会所へ廃業を願い出に行った鬼瓦は、筆頭・荒波に強く引き止められた。 「お前の気持ちはわかるが、ここはひとつ、割り切って土俵を勤めてはくれまいか。今の江戸相撲には、お前の力が要るのだ」 「そう言われても、俺、勝つ自信が……」 「いや、勝たなくても──弱ったな」  荒波は視線を外し、 ひと息ついてから続けた。 「よし、本音で話そう。お前は勝たなくていいんだ。勝たれちゃ困るんだよ。お前の人気は、その弱さが肝心なんだ」 「それじゃ、俺、まるで道化じゃ……」 「餓鬼のような事言う

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再読の楽しみ

再読の楽しみ

久しぶりに小説を読んでいます 山本周五郎  『さぶ』 『赤ひげ診療譚』 くなんくなんさんの記事の中で 山本周五郎の『さぶ』の書評があり 『虚空遍歴』以外は 細かい事まで覚えていないので 山本周五郎ワールドへまた入ってみています 二十歳前後の頃にはまっていました 書店に並ぶ文庫本は おそらく全部購入して読みました 山本周五郎の作品に出てくる主人公の 思考のぐるぐるさ加減が歯がゆくて 当時はそれに感情移入して 一緒にぐるぐるしながら夢中で読みました でも現実に自分自身が

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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」 68

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」 68

 安慈は、僧兵数十人を集め、三井寺を脅しに行くと、山を下りて行った。  そして、そのまま京へと出て、叡山領内の商いの状況を見てくるという。  三井寺は、淡海の南西岸に位置する、これも天台宗の寺である。  比叡山延暦寺とは、目と鼻の先である。  同じ宗派で、お互い淡海の西岸に位置するが、この二寺、仲が悪い。  ただ仲が悪いという状況ではない ―― お互い親の仇のように毛嫌いし、何度も戦をしている。  三井寺は、もともと七世紀に半島から来た大友(おおとも)氏が建立した寺であったが

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神憑るとは

神憑るとは

先日より、Facebookの方で自著「小説咲夜姫」に関するグループを催していただき、そちらでは自分も作品の解釈や解説など時折書いています。 そこで最近思い当たったカミガカリ(神憑り・神懸り)について少し書きます。 小説咲夜姫では、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の化身である咲代さんに、何でもない竹取男の甚六さんが出会い、物語が展開します。 簡略すると「甚六さんが出世をし、出世したことで咲代さんの正体が明かされ、帰って行くことになる」のですが、この彼の出世が神憑りによるも

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時代小説、己が身で取材は、楽しい!

時代小説、己が身で取材は、楽しい!

「茶道」のために、色々と着物のアイテムをヤフオクで落札しました。それらが、一気にバタバタと届いてしまって。「こんなに、落札しちゃって」と後悔先に立たずです。  それで、仕舞う場所を探していたら、昔、両親が作ってくれた着物が出てきました。娘が取っておいてくれたんだと感謝しました。  以前に一、二度ばかり着たことがあるのですが、ちょっと短め。そこで、良く調べてみると、「身丈」の「内揚げ」が10センチ分くらいあります。ただ、その降ろし方が分からないので思案中です。しかし、今回、ヤフ

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時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の八

時代小説「鬼瓦妖之介土俵入り」全十回 其の八

 鬼瓦の失踪後、 一年余りの月日が流れた。  その間に、大鰯親方は病床でまたひと回り小さくなり、左手が少し不自由になった。  桜茶屋の千代は二十歳になり、言い寄る男の数は一桁増えたが、 前にも増して無口になった。  鬼瓦饅頭、鬼瓦煎餅、鬼瓦蕎麦は極度の売れ行き不振に陥り、三人組は店を畳んだ。  春場所では関脇・太刀風が七勝一敗一分の好成績を収め、次場所の大関昇進を確実にした。  七、八月と上方巡業に出ていた江戸相撲の有力力士が戻り、浅草、本所、深川界隈では、相撲銀杏に髷を結

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映画公開までに原作が読み切りたくて読み進めていた「燃えよ剣」。
先ほどやっと読み終えました‼️
文庫本で、上下巻合わせて1000ページを超える大作ですが、久々に時間を忘れて読んだ小説でした。
土方歳三がどこまでも格好良く、魅力的に描かれていて、歳三愛を感じる作品でした✨😊

映画公開までに原作が読み切りたくて読み進めていた「燃えよ剣」。 先ほどやっと読み終えました‼️ 文庫本で、上下巻合わせて1000ページを超える大作ですが、久々に時間を忘れて読んだ小説でした。 土方歳三がどこまでも格好良く、魅力的に描かれていて、歳三愛を感じる作品でした✨😊

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【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」 67

【歴史・時代小説】『本能寺燃ゆ』第二章「性愛の山」 67

 御山として、信長の要請は無視することとなった。  あくまで寺として、信長にも、浅井・朝倉にも与するわけにはいかない。  が、寺に入った者は、これまで通り守る ―― との意見でまとまった。  これを書状にして信長に送ろうかとも話があがったが、そうなると信長の朱印状に応えた様になり、彼に与したことになるのではという、なんとも複雑な理屈で、では無視しておこうとなった。  信長は、一見『うつけ』で、無法者に見えるが、これまでの経緯を見ると、なかなか定法どおりである。 「浅井・朝倉の

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