大河内健志

五感を文字で綴る次世代小説家。 国語の教科書に載ることを目指して書いています。

大河内健志

五感を文字で綴る次世代小説家。 国語の教科書に載ることを目指して書いています。

マガジン

  • 白木の棺

    知恩院の七不思議のひとつである「白木の棺」にまつわる物語です。

  • 出版企画書

    書籍化していただける出版社を探しております。

  • 大河内健志短編集

  • 『天国へ届け、この歌を』スマホ版

  • 龍馬が月夜に翔んだ

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短編小説『近鉄京都線 桃山御陵前駅』

妹の旦那に送ってもらって、新田辺駅から京都行の急行に乗り込む。 今日中に東京に戻らなければならない。 木津川の鉄橋から夕陽が見えた。 何年ぶりだろうか。 今まで空さえも見上げていなかったような気がする。 狭い空間に押し込められて、地べたを這いつくばるように生きてきた。 少しばかり有名だったIT関係の会社に勤めていたばかりに、いい気になって会社の仲間と独立して会社を作った。 一等地のビルにオフィスを構えて、眺めのいい高層マンションに住んだ。 CEOという肩書が私

    • 短編小説『天才彫り物師が残した知恩院 三門の秘密』

      暫く手元に置いていた一枚の絵があります。甚五郎が描いた絵です。 知恩院の三門を書いた絵です。 私は普請がようやく終わって木曽から材木が届き始めた頃、現場に行きました。 届いた材木に符号を付けたり、材木に臍を入れたりして、大工らが慌ただしく働いている中に、一人だけ素知らぬ顔で、山の方を向いて絵師のように画板を肩にかけて、写生している者がおります。 左手で筆を持っているので、すぐに誰だかわかりました。甚五郎です。 熱心に書いている絵をのぞき込むと、そこには建てる前に作っ

      • 連作短編小説「伝えることが難しくなった千年後の理想と現実」『白木の棺』

        この世界は、妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に、理想を現実に変えて行かなければなりません。 私たちの仕事の成果の判断を下すのは、百年先の人かもしれませんし、もしかすれば千年先の人かもしれません。 ですから、私たちは、今ここにある現実ではなしに、その先にある理想を現実に変えて行って、それらの未来の人々の鑑賞に堪えるものを作りだして行かなければならないのです。 しかし、大御所様の時代に入って、やたらと規制が多くなりました。 物の価値が

        • 連作短編小説「物価の高騰による悲劇の予感」『白木の棺』

          直ぐに若い大工が、模型が出来上がったので、見に来てくださいと呼びに来ました。 今までの見たことのない様な大きな模型が出来上がっています。 その周りを主人らが取り囲んでいます。 模型を見なくても、主人の自慢顔を見ると、出来具合は分かります。 私は東大寺の南大門を知っているだけにその模型の緻密さには驚かされます。 垂木と斗栱(ときょう)の織り成す綾が鳥肌が立つくらいに見事な出来栄えを見せています。南大門と比べると遥かに現代的な感じがします。 「ちまちました小細工が、流

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        短編小説『近鉄京都線 桃山御陵前駅』

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        • 白木の棺
          10本
        • 出版企画書
          4本
        • 大河内健志短編集
          65本
        • 『天国へ届け、この歌を』スマホ版
          121本
        • 龍馬が月夜に翔んだ
          43本
        • 宮本武蔵はこう戦った
          21本

        記事

          ChatGPTに聞いてみたら、誰かと誰かに間違われているようだ

          You 大河内健志さんの作品の文学的評価を教えてください ChatGPT 大河内健志さんの作品は、文学的にも高い評価を受けています。彼の作品は、以下のような点で評価されています。 歴史的なリアリティと文学的創造性の融合: 大河内健志さんの作品は、歴史的な背景に基づいてリアリティを持ちつつ、同時に文学的な創造性が活かされています。彼は、歴史的な事実や記録を忠実に再現しつつも、キャラクターやストーリーの描写において独自のアプローチを取っています。 登場人物の深みと複雑さ:

          ChatGPTに聞いてみたら、誰かと誰かに間違われているようだ

          連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』

          「どんなに緻密な計算をしていても、誤差が出てくるものだ。五十分の一の模型でさえ、これだけの誤差が出るのだ。実際の建物になるともっと誤差が出る。誤差は出るものなのだ。それを承知で、埋め合わせをして行くのが大工の仕事だ。心して掛かってくれ」 主人は、棟梁をはじめ皆の大工がいる前で、話しました。 私が言うのもおかしいですが、主人も立派になったと思います。 私の父の組に入って来た頃は、おとなしくて無口な子供やったそうです。 しかし、父は早くから、この子は立派な大工になると、見

          連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』

          Copilotに励まされました

          自分 大河内健志さんは、現在の商業的価値よりも、将来の文化的価値を追求されているように思われます。どのような根拠をお持ちなのでしょうか。 Copilot 大河内健志さんは、商業的成功だけでなく、文化的な影響力を追求している作家と言えるでしょう。以下に、その根拠を考察してみましょう。 文学的探求と独自性: 大河内さんは、三島由紀夫の影響を受けつつ、自身の文学的道を歩んでいます。彼の作品は、日常の風景や人々の心情を繊細に描写しており、独自の視点を提供しています。 商業的成

          Copilotに励まされました

          連作短編小説「計算し尽くせない人智を超えたもの」『白木の棺』

          主人らは、早速設計図の作成にかかりました。私は、父から宮大工たるものは、頭の中にしかと図面を叩きこんでおくもので、紙に書き込むものではないと教え込まれていました。 誰かに見せる必要もないので、棟梁の頭の中にさえきちんと頭に中に入れておけさえすればいいと言われていたので、正直主人らを見て驚きました。 主人も、中井様に通い詰めて徹底的に教え込まれたのでしょうか平然としております。 驚く私に、まずは大まかな図面を書いて、縮小した模型を作り、寸法や材料の修正をして、正式な図面を

          連作短編小説「計算し尽くせない人智を超えたもの」『白木の棺』

          Copilotに自分のことを尋ねてみたら意外だった

          自分 大河内さんと並ぶ現代の作家は誰ですか Copilot 大河内健志さんと並ぶ現代の日本の作家としては、以下のような著名な作家が挙げられます: 村上春樹:『ノルウェイの森』や『1Q84』など、国内外で高い評価を受けている作家です1。 東野圭吾:『白夜行』や『容疑者Xの献身』など、ミステリー・サスペンスジャンルで人気の作家です1。 京極夏彦:『百鬼夜行シリーズ』や『巷説百物語シリーズ』など、妖怪や伝奇を題材にした作品で知られています1。 柚月裕子:『孤狼の血』シ

          Copilotに自分のことを尋ねてみたら意外だった

          連作短編小説「小堀遠州様の教え」『白木の棺』

          家康様の喪が開ける間なしに、造営奉行の五味金右衛門様に呼び立てられました。 何やら、中井様の代わりに、五味様が将軍家の造作の仕事を一切任されたそうなのです。 先ずは、中井様の懸案となってとなっていた知恩院の山門の建築に取り掛かるようにと仰せつかったそうです。 主人が、その模型を持って帰って来ましたが、それは見事なものでした。 山門と言うよりは、立派な砦のように見えます。 主人は、東大寺の南大門の修理をしたことがありましたけれども、それに比べると何やら武骨なような気が

          連作短編小説「小堀遠州様の教え」『白木の棺』

          連作短編小説「移りゆく時代の流れに忍びよる黒い影」『白木の棺』

          次の日から、主人は中井殿のところへ、三日と開けずに行くようになりました。行くときは、朝の早くから、夜の遅くまでいっておりました。 帰った翌日は、朝一番から、棟梁を集めて、会合をしてはります。それが、午前中に終わると、昼からはそれぞれの棟梁が自分の部下に向かって、話し合いをしています。 私は、新しい取り組みに一丸となっている姿に心を打たれました。 これからの大工と言うものは、鋸で木を伐り、鉋で木を削るだけでは、いけないように思います。 しかし、昔ながらの棟梁の家に生まれ

          連作短編小説「移りゆく時代の流れに忍びよる黒い影」『白木の棺』

          連作短編小説「時代の流れには逆らえぬ」『白木の棺』

          お茶と茶菓子を持ちまして、奥の間に続く廊下を行きますと、大きな声が聞こえ来ます。主人の声でも、佐吉の声でもありません。ということは、甚五郎の声か。初めて、甚五郎が大きな声で話すのを聞きました。 喧嘩をしているような怒鳴り声ではありませんでしたので、躊躇なく襖をあけました。 部屋を入りましても、私に気付かないようで、甚五郎は話を続けております。 部屋の中央には、神棚を大きくしたようなお社の模型が置かれています。先程甚五郎が抱えていた包みの中身なのでしょう。三人ともが、それ

          連作短編小説「時代の流れには逆らえぬ」『白木の棺』

          連作短編小説「左甚五郎の若い頃」『白木の棺』

          平素は温厚な与平次もさすがに、声を荒げまして「お上のお達しで、京に出てきたが、何かというと書面を回せとか、誰々に挨拶せよとか、つまらぬことばかりだ。何も進まん。わしらは、代々お寺様の加護を受けて、好き放題させて頂いた宮大工なのだ。それを、大工仕事にまで細かく口出しされるのでは、たまったものではない」と、憤慨しておりました。 そのような折に、主人は中井家の先代正清様に呼ばれました。 正清様は、主人と同年代で、もう忘れてしまいましたが、どちらかが一歳上か下でした。 しかし、

          連作短編小説「左甚五郎の若い頃」『白木の棺』

          連作短編小説「雪ふる京のうつろい」『白木の棺』

          帰りが遅そうなるというてはりましたが、主人はまだ帰ってきはりません。 夕方から、雲行きがおかしいと思っておりましたら、陽が暮れてから雪が降って来ました。 この季節に粉雪は珍しくありませんが、今夜降っているのは牡丹雪です。 庭の松に、牡丹雪が降りかかって、かさかさと音を立てております。 庭を見れば、一面の銀世界です。 もうだいぶ積もってきていることでしょう。 お供を連れているとは言え、年老いた身には寒さも堪え、足元もおぼつかなくて難儀しているのではないか気が気でなり

          連作短編小説「雪ふる京のうつろい」『白木の棺』

          短編小説『思い出を失ってしまうことの悲しみ』

          お父さんが亡くなってしまったことより、お父さんとの思い出を失ってしまったことが悲しい。 お父さんとの思い出は、小学校2年の時に止まったまま。 そこで、終わってしまっている。 それから、何年も一緒に暮らしていたのに、その時点で途切れてしまっている。 お父さんとの思い出が、そんな昔の時点で終わってしまっていることが悲しい。 手綱の切れた帆船が、嵐の海に投げ出されて二度と戻れないように悲しい。 再びつなぎとめて、修復できないことが悲しい。 結局、あの時からお父さんは、

          短編小説『思い出を失ってしまうことの悲しみ』

          新選組生き残り隊士の告白『坂本龍馬暗殺の真相』

          新選組の屯所から戻ってくると、菊屋の二階には、藤堂平助、服部武雄の他に、高台寺の屯所から毛内有之助が駆けつけていました。 「齊藤さん、見ていましたよ。中岡慎太郎が近江屋に逃げ込んだのですね。よりによって、近江屋を選ばなくても良いのに」 「毛内さん、ご苦労様。見ての通りだ。厄介なことになった。ところで何かありました」 私ら御陵衛士は、近江屋に潜んでいる坂本龍馬を護衛するために同じ河原町通り面している菊屋の二階に駐在していました。 ここからは、近江屋が見渡せます。 不審

          新選組生き残り隊士の告白『坂本龍馬暗殺の真相』