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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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記事一覧

短編小説『思い出を失ってしまうことの悲しみ』

お父さんが亡くなってしまったことより、お父さんとの思い出を失ってしまったことが悲しい。 …

大河内健志
2か月前
21

短編小説『嫉妬より奥深に存在する美しい輝き』

自分のレジ袋に目をやった。 突き出ている土のついたごぼう。 スーパーマーケットのロゴが大…

大河内健志
3か月前
19

短編小説『嫉妬より奥深くに棲む魔物』

旦那が単身赴任をしている北大阪のマンションにきている。 名古屋で受けた精密検査の結果が悪…

大河内健志
3か月前
27

短編小説『美味しさが奏でるメロディー』

久々に手料理を味わっている。 それにしても香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸…

大河内健志
4か月前
36

短編小説『夕焼けを見ながら二人並んで歩きたい 』

胸騒ぎがしたので、単身赴任をしている部屋へ予定より1日早く行ってみた。 やっぱり私の予感…

大河内健志
4か月前
13

短編小説『夕焼けと古い街並み』

スヌーピーのエコバックを重たそうに提げる、香田さんの後ろを離れないように歩く。 スーパー…

大河内健志
4か月前
23

短編小説『お父さんの涙』

補助輪なしで自転車に乗れた日、 今でも鮮明に覚えている。 補助輪を外して乗れるように練習した。 最初は、お父さんがしっかりと荷台を持って、支えてくれるので、かえって安定感があった。 どんなに傾いたとしても、お父さんは、力ずくで戻してくれた。 「美月、持ってないよ、何も持ってないよ、手を放しているよ」 私は、乗れたと思った。 やっと支えなしで乗れたと思った。 お父さんから、離れてゆくと思ったら、後ろを振り返ると、すぐそこにお父さんがいた。 腕まくりして、が

短編小説『月明かりに照らし出される幻想』

「そろそろ閉店の時間になります」 追い出されるように二人はカフェの外に出た。 「随分、遅…

大河内健志
5か月前
18

短編小説『ひとりで歌うのが好き』

ワタシは、お父さんが自殺した日から、ピアノを弾くのをやめた。 なぜなら、ピアノを始めた頃…

大河内健志
6か月前
19

短編小説『木蓮の香り』

「貴島さん、分りますか?ここのところに黒い影が映っているでしょう。こちらが、4月結果の分…

大河内健志
6か月前
30

短編小説『永遠の深い眠り』

目を閉じた。 美月と妻の美由紀が現れて、お互いに顔を見合わせて笑っている。 美月と美由紀…

大河内健志
6か月前
20

短編小説『行く当てのない旅人』

古い町並みの中に、マンションがぽつりぽつりと現れてきて、仕舞には古い一戸建ての家は売れ残…

大河内健志
7か月前
14

短編小説『食が奏でるハーモニー』

それにしても、香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸とお茶碗の重量感がいい。 こ…

大河内健志
7か月前
18

短編小説『輝きを失った黒い革靴』

玄関のドアを開けると、いきなりお父さんがいた。 「ただいま!」 うつむいて靴を磨いているお父さんは驚いた。 記憶を失った者が、電気ショックで突然、記憶を取り戻したように。 その表情は、無実の少女が突然、裁判官によって死刑を宣告された時のように、驚きと戸惑いに満ち溢れ、やがて悲しみ変わって行くように変化した。 「おおきくなったなあ」 「・・・・・・」 「ごめんな。身体の調子を崩しちゃって、しばらく会社休んでいたんだ。また、明日から会社に行くよ。もう大丈夫、大丈夫」