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「おやこ見習い帖」へのご感想をいただきました!(7)

 日本は太平洋岸各地で大雨となる予想とのこと。先日は沖縄や鹿児島などが大荒れの天候だったようですし、どうぞ皆様安全にお過ごしください。今年は水害が少ない年だといいのですが…。

 さて、交流させていただいている虹色のかめと花笑のさるさまが、「独り剣客山辺久弥 おやこ見習い帖」のご感想を記事にしてくださいました!ほんとうにありがとうございます…!!
 ぜひご紹介させていただきたく☆  

 虹花さま、本書を「かりそめの家と名で生きてきた男が 家もなく名もない男の子と出会い、真の家と真の名を見つける物語」と美しい言葉で表現してくださっています。
 また、「引き裂かれた青馬と真澄との絆、真っ二つに割れた藩の行く末。久弥の剣が禍根を絶ち、三味線の音色が傷を癒す」のだと。
 断ち切るだけではなく、癒す、そういう主人公なのだと改めて知った気持ちです。彼はずっと自分が生きていくために奏でていたけれども、青馬と出会って人のために弾く喜びを得て、やがて敵であった宗靖のために音曲を奏でるようになっていく。
 なるほど…と深く感じ入りました。
 彼は江戸へ戻るという個人的な願望を捨てて、青馬の世代と国の未来を優先し、結果宗靖を庇って斬られるわけですが。大局を見て、可能な限りの手を尽くし、自分の心よりも優先すべきものを優先する。それは成熟した大人の姿であって、久弥が様々な絆を得て、変化し強くなった結果なのだろうと思います。

 ちなみに、久弥と青馬がよく口ずさんでいる「越後獅子」という長唄ですが、これは越後(新潟)の農村から江戸へと出稼ぎに来る旅芸人を唄ったものです。角兵衛というのはこの芸人の名前ではなく(由来は人物名ですが)、角兵衛獅子という、頭に獅子舞の獅子を被って踊るスタイルをこう呼びます。「角兵衛角兵衛と招かれて〜」というくだりは、角兵衛さんと呼んでいるのではなく、角兵衛獅子を踊っておくれと乞われているんですね。
 これは子供たちが集団で踊ることも多いのですが、唄の中では妻帯しているので大人の男性であろうと。「おらが女房をほめるぢゃないが〜」とのろけてます。
 唄の解釈は色々あるのですが、この芸人は女房が恋しいと唄い、旅芸人の寄る辺のなさとままならぬ暮らしを「辛苦甚句もおけさ節」と笑い飛ばし、「いざや帰らん 己が住家へ」と故郷へ帰っていくのです。
 真の家、青馬と真澄がいる場所へと帰りたいと願う久弥にふさわしいと思いました。

 それから、「久弥という男が、真澄という女が、心の奥底に秘めた情念が抑えきれずにふとこぼれる様が三味線と長唄の艶やかさと重なります」と書いておられる点。「艶のある物語」と言ってくださり嬉しい限りです。
 久弥が真澄を思う時に思い浮かべるのは「鷺娘」という長唄で、もう詞章が最高ですよね。
「妄執の雲晴れやらぬ朧夜の 恋に迷ひしわが心  忍山 口舌の種の恋風が 吹けども傘に雪もつて  積もる思ひは泡雪と 消えて果敢なき恋路とや」
 ですよ!?
 妄執の雲がかかった朧夜のように恋に迷うわが心、恋風が傘に雪を積もらせ、しかし積もる思いは淡雪と消えてああ儚い恋路であることよ…ですよ!?(悶絶)

 ネタバレしますけれども、世子就任式の直前、久弥が見上げた空を横切る白鷺。あれは真澄の暗喩でして…。書いていませんが江戸の方角へと飛び去っていて、真澄であり自由の象徴であり、といくつか意味を込めています。そんなマニアックな小ネタわからないと思いますが、担当者様、「白鷺は真澄ですよね」とまたもや読み取っておられ、表紙に白鷺を飛ばしてくださいました。だから久弥と青馬が見上げているのは真澄なのでした。
 …担当者様、恐ろしい方です…。

 虹花さま、青馬と宗靖をたいへん気に入ってくださったご様子。ありがたい限りです。
 わかります…久弥は書いていて楽しい文武両道の好男子なんですが、親目線で青馬がかわいくてならず。もっと色々甘やかしたいところでしたが文字数制限のカベが。せめて宗靖と遊ばせてやりたい!と乗馬のくだりをねじ込みました。
 宗靖、主役を食ってしまいそうなキャラクターですよね。苦労人ゆえか努力家で賢く、型破りに見えてさりげなく気配りの人。家臣になりたい。

 久弥が宗靖に弾いた「三曲糸の調」ですが、こちら名曲中の名曲。超絶難しい曲だそうです。曲も唄も胸を掻きむしられるような情緒と冴えが素晴らしい。YouTubeで探してみていただきたいです。大人数による演奏ではなく、唄方一人に三味線二人のスタイルのものをぜひ。 
「身の程を、知らずと人の思うらん」という出だしがもう痺れますね。
「流れもやらぬ薄氷」で、薄氷が流れにとどまっている感じでしょうか。
「解けぬ心を明かしてそれと」で解けぬと溶けぬをかけているのだと思いますが、心を溶かして明かせぬ思いがあると(大雑把)。
 そして「いうにいわれぬ我が思い、調べ掻き鳴らす」と続く。…明かせぬ我が思いのかわりに調べをかき鳴らすのです。
 このセンス…好き…!!(悶絶)

 お気づきかと思いますが、改題前のタイトル「調べ、かき鳴らせ」はここから取っています。これも好きなタイトルでしたねぇ…。

 「久弥のように自分自身が「個」として優秀でその道を突き詰めていく人よりも、宗靖さまのように回りの人を動かし活かせる人が長に立つ方が組織としては上手くいく」という虹花さまのご感想にはまったく同感です。家臣になりたい(二度目)。

 実写化してほしいとおっしゃってくださり光栄です。頭の中で映像にして執筆することが多いのですが、実現したら素敵だろうな。ちなみに、久弥のモデルはNHK大河ドラマ「青天を衝け」に登場した町田啓太さん扮する土方歳三だったりします…。青馬のモデルはやはりNHK大河ドラマ「義経」で幼い牛若を演じる神木隆之介さんです。むちゃくちゃ可愛い。イラストレーターの立原圭子さま、見事にイメージを再現してくださっています。
 具体的にイメージしたい方はググってみてくださいませ(イメージが壊れるという方にはお勧めしませんが…!)
 
 長くなりましたのでこの辺りで。
 虹花さま、お心の籠もった美しいご感想をほんとうにありがとうございます。
 楽しんでくださりとても嬉しく幸せです!
 改めて御礼申し上げます。

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