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「おやこ見習い帖」へのご感想をいただきました!(5)

 皆様おはようございます。向暑の候、ご体調などいかがでしょうか。当地では本日息子の中学校は終業式でした。といっても日本のような式はないのですが…。これから8月末まで、長ーい夏休みの始まりです。ほんと長すぎて苦痛なんですが…(学校へ行ってください…汗)
 この週末は州内で剣道大会がありまして、剣道強化稽古でバタバタしております。道着の腕にお揃いのワッペンを縫い付けないといけないんですが…もう時間がなくて。今日空き時間に頑張って縫ったのですが、できあがってみたら思いっきり斜めだった(涙目)。
 しつけ縫いをしないのが悪いんですよね。夜にやり直します…。
 
 なんてことは置いておいて。交流させていただいている絵本の虫さまが「おやこ見習い帖」のご感想を記事にしてくださいました。ありがとうございます!ぜひご紹介させていただきたく…♪
 以下、かなり内容に踏み込んでおりますので、読了しておられない方は読み終えてからご覧になることをお勧めします。

 絵本の虫さま、時代小説は途中で挫折なさることが多いにもかかわらず、本書は夢中で読んでくださったとのこと…。
 う、嬉しいです!!(涙)
 登場人物たちに感情移入し、涙しつつ読んだとおっしゃっていただき感無量です。
 冒頭の、「江戸の大火直後の灰色の光景が最後にどのような色彩に変わるのか期待しつつ」お読みくださったとのこと。
 この焼け野原の景色に目を留めてくださったのがとてもありがたく。と言うのも、灰が降りしきる荒廃した景色は、実は久弥の心象風景と重ねていまして、幾度か物語の中に登場しているのです。冒頭、上屋敷での戦い、城に討ち入った後ですね。
 焼け野原から町が復興していく過程を、久弥が青馬と暮らすうちに変化していく心情と重ねるつもりで描いてもいます。
 これは青馬についても同じで、景色の変化を青馬の心象風景の変化とも重ねてあります。
…そんな小ワザ(というかこだわり)、まず気づく方もおられないだろうと思っていたので、情景の変化に目を留めていただいて驚くやら嬉しいやら。絵本の虫さま、さすが読書家でおられるなぁと驚嘆しました。
 
 さらにマニアックな部分なのですが、実は久弥と青馬の心象風景も微妙に違いがありまして。冒頭の景色は、久弥には灰色の雪が降る荒れ果てた世界に見えるのですが、青馬には灰が花びらのように舞っている、自由で空虚な世界に見えています。
 そんなこと知るか〜!という違いなのですが、なんと担当編集者さまがずばり言い当てておられました(…なんてここに書いてしまっていいのかな)。
「なるほど、久弥と青馬では見え方が違うんですね」
 とおっしゃるので、腰が抜けました。どうしてわかるんですか!?すすすごいですね!!ともう鳥肌が立ちました…。

 絵本の虫さまからは、参考文献についてのお訊ねをいただきました。本の末尾に少しだけ掲載しているのはほんとうにごく一部でして、紙幅の関係で三味線に関するものだけを少し載せています。元のリストは下のような内容です。

  1. 安藤優一郎(2020)『図解 百万都市を俯瞰する 江戸の間取り』彩図社.

  2. 安藤優一郎(2021)『江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ』朝日新書.

  3. 石橋健一郎(2008)『図解雑学 よくわかる歌舞伎』ナツメ社.

  4. 岩橋清美(2013)「近世都市江戸における迷子の保護」、『千葉経済論叢』48、pp.1−19、千葉経済大学.

  5. 植松清志、中嶋節子、谷直樹(2000)「高知藩屋敷の建築構成について −大阪・京都・伏見屋敷を中心に−」、『建築史学』35、pp.30-54、建築史学会.

  6. 大森英子(2008)「近世中期における仮養子制度 肥後人吉藩相良家の場合」、『湘南国際女子短期大学紀要』15 、pp.240−222、湘南国際女子短期大学.

  7. 鎌田浩(1962)「近世武士相続法の特色 −熊本藩を中心として−」、『法制史研究』13、 pp.1−52,法制史学会.

  8. 旧事諮問会編(1986)『旧事諮問録 江戸幕府役人の証言(上)』岩波文庫.

  9. 蒲生郷昭(1988)『岩波講座 日本の音楽・アジアの音楽 6 表象としての音楽』岩波書店.

  10. 菊岡栄一、岸辺 成雄、 吉川 英史、 小橋 豊、小泉 文夫(1958)「三絃師を囲んで」、『東洋音楽研究』14-15 、pp.101-128、東洋音楽学会.

  11. 久住裕一郎(2022)『江戸藩邸へようこそ 三河吉田藩「江戸日記」』集英社インターナショナル.

  12. 古瀬 和彦(2000)「大名家の存在形態−支藩(分知・分家)の分析を中心として」、『名城法学論集 : 大学院研究年報』 28、pp.139−156、名城大学法学会.

  13. 境英俊(1993)「近代剣道の技の変遷について−突き技を中心に−」、『島根大学教育学部紀要(教育科学)』27、pp.59−67、島根大学教育学部.

  14. 坂本太一、矢野裕介、八木沢誠(2014)「剣道における技の体系の変遷過程に関する研究―竹刀に着目して―」、『日本体育大学スポーツ科学研究』3、pp.21−35、日本体育大学.

  15. 西園寺由利(2019)『三味線ザンス 遊里と芝居とそれ者たち』小学館スクウェア.

  16. 西東社編集部編(2020)『地図と写真でわかる 江戸・東京』西東社.

  17. 沢井耐三(2011)「猿蟹合戦の異伝と流布」、『近世文藝』93、pp.45-58、日本近世文学会.

  18. 玉村恭 (2016)「長唄はどのような歌か−《勧進帳》の演奏比較を通じて~稽古の現象学Ⅲ−」、『上越教育大学研究紀要』36、pp.253-265 、上越教育大学. 

  19. 千葉 一大 (2007)「盛岡・八戸両藩の分立 : 経緯の再検討と考察(下)」 、『弘前大学國史研究』122、pp.24-45、弘前大学國史研究会.

  20. 中江克己(1998)『江戸の職人:伝統の技に生きる』中央公論社

  21. 福田千鶴(1998)「近世前期大名相続 の実態に関する基礎的研究」、『史料館研究紀要』29、pp.1−110、国文学研究資料館.

  22. 宮崎まゆみ(1984)「地歌「黒髪」・長唄「黒髪」に関する一考察」、『東洋音楽研究』49,pp.39-70

  23. 群ようこ(2008)『三味線ざんまい』角川文庫

  24. 山田佳穂(2018)「「手」に注目した長唄三味線の伝統的な指導 「勧進帳」の音楽の構成」、『音楽教育実践ジャーナル』16、pp.77−85、日本音楽教育学会.

  25. 山本博文(2017)『古地図から読み解く 城下町の不思議と謎』実業之日本社

  26. 山本光正(2019)「江戸を中心とした船舶による旅客輸送について」、『郵政博物館 研究紀要』10、1pp.83-201、郵政博物館.

  27. 吉田俊純(2013) 「徳川光圀の世子決定事情」、『筑波学院大学紀要』8、pp. 1 −23 、筑波学院大学.

  28. 吉原健一郎(1986)「庶民情報の活性化-文政12年の江戸大火-」、『予防時報』145、日本損害保険協会.

  29. 渡辺 浩一(2019)「近世後期の江戸における火事見舞と施行」、『人文研紀要』94、pp.117-150、中央大学人文科学研究所.

 このような感じです。他にも江戸時代の生活のこまごました部分などを参照したものはありますが、主要な資料はこういったものですね。
 ちなみに、本書末尾で紹介している「国立音楽大学付属図書館 竹内道敬文庫の世界(デジタルアーカイブ)」は素晴らしいコレクションです。三味線音楽に関する錦絵、正本(長唄の歌詞である詞章を掲載した稽古本を正本と呼びます)等の収蔵数は国内屈指の規模を誇り、正本の膨大なデジタル画像を閲覧することが可能です。

https://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/vm/kunitake/

(なぜか埋め込みがうまくいきませず…)

 また、本書に登場する「春駒」という三味線、あれにはモデルがあります。
 武蔵野音楽大学のウェブ博物館に掲載されている、石村近江(実在の三味線名工の一族)による希少な三味線、これが作中の「春駒」のモデルです。

 樫を芯にして紅木で被っているという極めて珍しい構造の棹は、この三味線からヒントを得ています。春駒の方は蒔絵や螺鈿象嵌を施した豪華な作りではありますが。

 さらに豆知識ではありますが、久弥の母が師事したことになっている岡安原富(あるいは原武太夫などとも)は実在の三味線の名手です。ご興味があればこちらなどご参照くださいませ。

 他にも色々と小ネタがあるのですが、だいぶ長くなりましたのでこの辺りで。
 絵本の虫さま、本書をお読みくださったうえに、素敵なご感想をお寄せくださりほんとうにありがとうございます!心から嬉しく拝読いたしました。
 楽しんでくださり、本書の背景にまでご関心をお持ちいただきまことにありがたく存じます。
 改めまして、心より御礼申し上げます!

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