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論文紹介 戦争において国家は敵国とどのように外交を進めるのか?
戦争は他の手段をもって行われる政治的交渉の継続であるといわれていますが、実際に交戦国がどのような交渉を行っているのかを体系的に調査することは難しい状況が続いてきました。戦時中の交渉行動は興味深い研究テーマであり、理論的な分析は行われてきましたが、実証的な分析を進めるためのデータが欠けていました。
Eric Min氏の「戦いながらも、話し続ける:戦時交渉の役割を理解する(Talking While
「この戦争を知りたければ、ウクライナを知れ」 監修新著『美しきウクライナ』の紹介
露宇戦争全面侵略局面が始まって、日本ではウクライナに対する関心が爆発的に生じた。無理もないことで、2014年のクリミア・ドンバス侵略・占領を発端とする開戦後も、日本の多くの人にとってはウクライナは引き続き「よくわからない国」のままだったからだ。多くの専門家が過去1年にわたり、戦争の推移、侵略の犠牲者、地政学的文脈やら機甲やら長射程やらの兵器、あるいは時にはウクライナ人の今の不安や望みについて語って
もっとみるウクライナ戦争は世界をどう変えたかを読んで
これまでnoteには、社会や政治のことを書いたことがありません。
身近なことを気ままに書いていたいし、あまり難しくならずに、のんびり楽しみたいと思っているから。
また、歴史や政治は苦手な分野というか、どなたかに説明したり意見を述べられるほど、よくわかっていないのが正直なところです。
しかしながら、現在の世界情勢を知るのに参考になった本があるので、書いておきます。
それは『ウクライナ戦争は世界を
ウクライナ人の目の前で「戦争は絶対悪」を説く違和感
先日、NHKの報道特集において、ある高校生が主催した「ウクライナの学生と戦争を無くすための議論をしようぜ」的な趣旨のイベントが紹介された。
特集の中で紹介されていたのはそのごく一部であったため、全体としてどのような議論が交わされたのかは分からないものの、その切り出された質疑の一部分がひどく違和感を覚えるものだった。
質問者は、どういう神経で同世代のウクライナ人を目の前にしてその質問をぶつけたのか
地政学から見たウクライナ戦争 なぜロシアはクリミア半島にこだわるのか 海洋への出口をめぐる300年の闘争 ウクライナ戦争に関する私見10 2022年5月16日現在
今回の論考は、視点を大きく広げて考えてみようと思う。空間軸を地球全体、時間軸を100年単位に広げた「ビッグ・ピクチャー」にウクライナ戦争を置いて、それがどう見えるか考察する。
こうしたビッグ・ピクチャーから国際安全保障を考える思考については、拙著「世界標準の戦争と平和」(悠人書院)で詳しく述べた。興味のある方はそちらを参照してほしい。
同書で、地球を「海」「陸」「空」の3つの空間に分類し、地理
「『侵略国』を悪者にするのは簡単である。誤解を怖れずに言うと侵略国を「悪」とすることで、私は安心していないだろうか?」
はたして国際社会に正義はあるのか?これは国際政治学における古典的な問いです。
英国の国際政治学者へドリー・ブルは、各国により正義が異なることを強調する立場を「プルラリスト(pluralist)」、そして国際社会でも一定程度共有すべき価値を強調する立場を「ソリダリスト(solidarist)」と呼びました。
20世紀の国際社会は、1928年の不戦条約や、1945年の国連憲章、そして国際人道法など
"あいだ"にある国家、フィンランドとウクライナ
2月24日のほぼ同時刻、フィンランドの首相サンナ・マリン氏および大統領のサウリ・ニーニステ氏は、ウクライナへの侵攻を強い言葉で非難する投稿を行った。
フィンランドにとって、現在ウクライナで起きている出来事は、決して対岸の火事ではない。
以下の図を見てみよう。青色がNATO加盟国である。ご覧の通り、フィンランドは2022年現在、隣国スウェーデンとともに、NATOには加盟していない。
ロシアが戦
【緊急掲載】戦争という完全な悪に対峙する──ウクライナ侵攻に寄せて|ドミートリー・ブィコフ/奈倉有里編訳
1.形而上学的な憎悪にかられている今日の放送をしないで済むのなら、高い代償を払ってでもそうしたかった。自分の母親が亡くなった日と同じくらいの悲しみを抱え、それでも今日、逃げ出すことはできなかった。私たちが生きているあいだに、またもや戦争が起きた。
ロシアがどうやってこの戦争から抜け出すのか、そのときどうなっているのか、私にはわからない。おそらく、とても長い時間がかかるだろう。ロシアにとってこの戦
ウクライナとロシアの未来──2022年のあとに|ミハイル・シーシキン/奈倉有里訳
2013年末から2014年の2月にかけて、EU加盟をめぐり「ユーロ・マイダン革命」と呼ばれる大規模な反政府デモ運動がウクライナ国内で起こった。デモ参加者らに夥しい数の犠牲を生んだこの運動ののちに、当時のウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィチは失脚。しかしその直後、事態はロシアのクリミア半島併合、ウクライナ東部紛争へと動いていく。
以下、シーシキンがアフガニスタンで戦死した幼なじみのことを思い出し
スマホ+SNS時代の戦争ニュースを 理解するためのメディアリテラシー 国際世論を戦場に 「ハイブリッド・ウオー」が進んでいる ウクライナ戦争に関する私見4 2022年3月23日
<前置き1>今回も戦争という緊急事態であることと、公共性が高い内容なので、無料で公開することにした。
<前置き2>今回もこれまでと同様に「だからといって、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を正当化する理由にはまったくならないが」という前提で書く。こんなことは特記するのもバカバカしいほど当たり前のことなのだが、現実にそういうバカな誤解がTwitter上に出てきたので、あらかじめ封じるために断っておく。
はじめまして、ボグダン・パルホメンコです。〜「ぼくのおじいちゃんのこと」後編〜
ボグダン:
日本では、東日本大震災以降、「絆」ということばがつかわれるようになりました。震災は、愛する家族がいつ亡くなるかわからないという現実を私たちに突きつけました。
おじいちゃんは、家族の「絆」をどのように考え、日々、過ごしていますか?
ウラジミール:
1995年の神戸の震災以降、私たちの家族には日本人の知り合いが増えました。私の奥さんはその人たちに会いに日本に7、8回行ったし、日本からウ