年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映…

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その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映画」「アニメ」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。

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  • 「学術書・学術啓蒙書」のレビュー

    人文書、科学書など(別立ての宗教関連書を除く)学術書と啓蒙書を紹介します。

  • 「思想・哲学」関連書のレビュー

    「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。

  • 「純文学・文芸評論」関連書のレビュー

    主に「文学・文芸評論」関係書のレビューを紹介しますが、分類は目安に過ぎず、「ミステリ・SF」系の作品も含みます。

  • 「政治・経済・社会」関連書のレビュー

    「政治」「経済」「社会」などの関連書のレビューを紹介します。

  • 「宗教(キリスト教以外)」関連書レビュー

    キリスト教以外の「宗教」関連書のレビューを集めました。 後日、整理の予定です。

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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新本格ミステリの仕掛け人」などと呼ばれた名編集者であることについて、ここであらためて説明する必要などないだろう。本書を購読したり、ネットで本書の内容を確認したりするほどの人なら、宇山についてそれなりの予備知識を、あらかじめ持っているはずだからだ。 本書は内容は、次のとおり。 (1)序文(太田克史) (2)編集者・

    • 岸政彦 『断片的なものの社会学』 : ラノベ的な「ライト学問」

      書評:岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社・2015年刊) 本書は「紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞」作品であり、ベストセラーにもなった本である。 私も「紀伊國屋じんぶん大賞」は、書籍購入の参考にしているので、この年のことも記憶しているし、もしかすると本書も買ったかもしれないのだが、例によって、結局は読んでいなかった(すでによく売れていたから、古本待ちにして、買わなかったかもしれない)。 先日、私が「note」にレビューを書いたのと同じ映画について書いている、他の

      • 小津安二郎監督 『風の中の牝雞』 : 「批評的深読み」 とは何か。

        映画評:小津安二郎監督『風の中の牝雞』(1948年・モノクロ作品) 小津安二郎の戦後第2作目となる作品で、「敗戦」が濃厚な影を落としている。 小津の作品としては、一般に「失敗作」とされており、なるほどそうした評価も頷ける作品だ。 どういうところが欠点なのかというと、 といったことだ。 (1)については(2)の「社会派」だからこそで、小津が「暗い作品」を撮ってはならないという道理はない。あくまでも「楽しく見ることのできる作品」を求める人たちに不評なのは仕方ないとしても、

        • 森岡浩之 『プライベートな星間戦争』 : 生まれ変わったわけでもなかろう。

          書評:森岡浩之『プライベートな星間戦争』(星海社) あまり面白くなかったし、体調も良くないので、簡単に片付けてしまおう。 原稿料がもらえるわけでもなければ、無論、仕事でもないというのに、それでもこんなものを書こうというのは、我ながら本当に書くのが好きなんだなと感心するし、そっちの方が大切なことなのだと思う。 あと、私には「片づけ癖」があるので、面白くなかったものは面白くなかったものなりに、あるべき位置に片付けてしまいたいという欲望が強いのだ。我ながら因果なことである。 本

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          溝口健二監督 『残菊物語』 : 忘れさられた「身分差別」

          映画評:溝口健二監督『残菊物語』(1939年) 溝口健二の作品を見るのは、これが3作目なのだが、実はこのレビューを書き始めるまで、前の2作のことは、すっかり忘れてしまっていた。要は、面白いとは思わなかったので、記憶から消えていたのであり、私は本作『残菊物語』が、初溝口作品のつもりで見たのである。 溝口健二を見るきっかけは、映画評論家の蓮實重彦が溝口を「日本を代表する映画監督」だと書いていたからで、それなら代表作の1本や2本は見ておかないといけないなと思い、最初に見たのが、

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          ロベール・ブレッソン 『シネマトグラフ覚書 映画監督のノート』 : 禁欲者の 怖れと傲慢

          書評:ロベール・ブレッソン『シネマトグラフ覚書 映画監督のノート』(筑摩書房) フランス文学者で映画評論家、と言うよりも今では芥川賞受賞のベテラン小説家と言った方が通りが良いかもしれない、松浦寿輝の翻訳になる、フランスの映画作家ロベール・ブレッソンの、映画創作における「覚書」である。 長くて4行ほどの短文集だ。 本書の構成は、ブレッソンの良き理解者であったフランスのノーベル文学賞作家ル・クレジオが寄せた「序言」のあと、本文としてブレッソンの「覚書」が、「1950-1958

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          『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 地球最後の日』 : 挫折した、今川泰宏版「ゲッターロボ」

           作品評:『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 地球最後の日』(1998年・OVA 全13話) 「OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)」として製作された本作は、言うなれば「いわく付きの作品」である。 当初、シリーズ全体の監督を務めるはずだった今川泰宏が、第3話まで制作した段階で降板させられ、スタッフロールからもその名前が削除され、以降は別の監督が、今川の敷いた基本設定を引き継ぐかたちで、残りの物語を展開し完結させた作品、らしいからである。 「らしい」というのは、制作ス

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          日和聡子・金井田英津子 『瓦経』 : 頬をかすめた微風

          書評:日和聡子(著)・金井田英津子(挿絵)『瓦経』(岩波書店) 本書は、岩波書店が刊行していた叢書「Coffee Books」の1冊として刊行されたもので、挿絵に重点をおいた「絵本寄りの小説本」という感じの作りになっている。 カバーなしの46上製、100ページほどの薄い本だが、挿絵のないページも含めて全ページがカラー印刷のため、厚めの上質な紙が使用されている。絵本としては少々小ぶりなのだが、まあ大人向けの贅沢な挿絵本といった位置づけであろう。 ただし、造りが凝っている分、薄

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          スタンリー・キューブリック監督 『2001年宇宙の旅』 : 語りえないものを見せ、解き得ない謎を解く。

          映画評:スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968年・イギリス・アメリカ合作映画) SF作家アーサー・C・クラークの同名原作小説の映像化作品である。一一と、こういう「いい加減な説明」をしているレビューが、どれほど多いことか。 そして、それを鵜呑みにして、思考停止している「知ったかぶり」の映画ファンやSFファンが、どれだけ多いことだろう。 この名作を、虚心に見るならば、そうした態度が間違いだというのは明らかなのだが、人は、作品に貼られた「レッテル」や「値

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          伊藤潤一郎 『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』 : 今どきの柔な「哲学書」

          書評:伊藤潤一郎『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』(講談社) 本書の著者は、フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシーの研究者である。ナンシーの翻訳書を何冊か持つものの、自著は本書が初めてのようだ。 フランス現代思想の入門書程度は齧っているので、私もナンシーの名前くらいは知っていた。 もしかすると読んだことがあるかもと、そう思って「Wikipedia」を確認したが、それらしい翻訳書名が見当たらない。ただ、ナンシーの場合は、同じくフランスの哲学者である、フィリップ・ラクー

          伊藤潤一郎 『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』 : 今どきの柔な「哲学書」

          ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 『巴里の空の下セーヌは流れる』 : 永遠なる「花の都」

          映画評:ジュリアン・デュヴィヴィエ監督『巴里の空の下セーヌは流れる』(1951年・フランス映画) フランス映画の古典的名作である。 ちなみに、「巴里」とは、フランスの首都「パリ」のことだ。昔は、このような当て字表記をした。「獨逸(ドイツ)」とか「亜米利加(アメリカ)」などと同様である。 さて、本作には2つの主題歌「巴里の空の下」(作詞ジャン・ドルジャク、作曲ユベール・ジロオ)、「巴里の心臓」(作詞ルネ・ルーゾオ、作曲ジャン・ヴィーネ)があって、どちらも名曲だが、特に「巴里

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          カート・ヴォネガット・ジュニア 『猫のゆりかご』 : 猫の不在

          書評:カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』(ハヤカワ文庫) 最初に言っておくと、本作に猫は登場しない。ハインラインの名作『夏への扉』のように、猫好きの期待に応じてくれる作品ではないのだ。 こう書くのも、Amazonのカスタマーレビューで「猫が出てこない」と不満を漏らしていた人がいて、私も読むまでは、猫が出てくる話だと、なんとなくそう思っていたからだ。だが、幸いなことに、私は特に猫好きということではないから、猫を期待して本作を読んだわけではないので、その点で失望した

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          平尾隆之監督 『映画大好きポンポさん』 : 長いものに巻かれた、 短めの長編アニメ

          映画評:平尾隆之監督『映画大好きポンポさん』(2020年) この作品が、映画ファンにウケるのは当然だろう。映画制作者の世界を描いた作品だからである。 映画制作者の苦労や葛藤や喜びを描いているのだから、そこだけを見ている分には、映画ファンは、その「同族意識」をくすぐられて、共感しないわけがない。 共産主義者が共産主義映画を支持し、右翼が右翼映画を喜ぶのと、基本的には同じことだ。 要は、飴玉をしゃぶらされれば「甘い」のは当然。じつに「たわいのない」話なのだ。 しかしながら、

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          中井英夫論 「眠り男の迷宮・迷宮の夢」 : 『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』月報 所収

           【旧稿再録:初出は、2006年1月17日刊行『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』。2005年後半に執筆】 (※ 再録時註:本稿は、当時使っていたペンネーム「田中幸一」名義で執筆したものである。原文は縦書きであり、改行も少ないため、ここではウェブブラウザ上の横書き文として読みやすくするために、適宜、改行や1行開けを加えるなどした)  ○ ○ ○ 眠り男の迷宮・迷宮の夢          田中幸一  武蔵小金井の家で初めてお会いした時か、それとも二度目だったか、今とな

          中井英夫論 「眠り男の迷宮・迷宮の夢」 : 『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』月報 所収

          中井英夫 『月蝕領映画館』「中井英夫全集12」 : 反世界からの映画批評

          書評:『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』(創元ライブラリ・2006年) 『月蝕領映画館』は、1984年に大和書房から初版単行本が刊行されたものの、その後、再刊や文庫化もなく、中井英夫の主だった作品(著書)を収めた第二次「中井英夫作品集」(三一書房・全10巻+別巻1)にも収録されないままだったのが、「創元ライブラリ」版「中井英夫全集」において初めて収録され、いわば「文庫化」も成った著作である(なお、三一書房は、1969年に1巻本の『中井英夫作品集』を刊行しているので、こちら

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          黒澤明監督 『用心棒』 : 「豊かになった昭和」の求めた ヒーロー像

          映画評:黒澤明監督『用心棒』(1961年・モノクロ映画) 1961年に「東宝」が「超娯楽大作」として制作した作品だ。予告編で、そう広告されるのである。 したがって、本作は黒澤作品の中でも、最右翼の娯楽作で、人生哲学的な『生きる』や、一種の社会派時代劇である『七人の侍』、あるいは、シェイクスピアを原作とした翻案時代劇である『蜘蛛巣城』といった作品とは一線を画して、完全に「娯楽作品」に徹している。 だから、よほどのへそ曲がりでもないかぎり、誰が観ても面白い作品なのだ。 旅の

          黒澤明監督 『用心棒』 : 「豊かになった昭和」の求めた ヒーロー像