年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映…

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その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映画」「アニメ」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。

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  • 「純文学・文芸評論」関連書のレビュー

    主に「文学・文芸評論」関係書のレビューを紹介しますが、分類は目安に過ぎず、「ミステリ・SF」系の作品も含みます。

  • 「政治・経済・社会」関連書のレビュー

    「政治」「経済」「社会」などの関連書のレビューを紹介します。

  • 「エンタメ(マンガ・アニメ・映画など)」作品のレビュー

    広く「マンガ」「アニメ」「映画」など、エンタメ作品関係のレビューを紹介します。後日整理の予定。

  • 「ミステリ・SFなど(純文学系以外)」関連書のレビュー

    もとより文学におけるジャンル分けは恣意的なものとならざるを得ないが、ここでは「娯楽性」に主眼を置いた、小説やマンガ、映画などの作品を扱ったレビューを紹介します。

  • 「思想・哲学」関連書のレビュー

    「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。

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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新本格ミステリの仕掛け人」などと呼ばれた名編集者であることについて、ここであらためて説明する必要などないだろう。本書を購読したり、ネットで本書の内容を確認したりするほどの人なら、宇山についてそれなりの予備知識を、あらかじめ持っているはずだからだ。 本書は内容は、次のとおり。 (1)序文(太田克史) (2)編集者・

    • 岸本佐知子 『気になる部分』 : 似ているところと真逆なところ

      書評:岸本佐知子『気になる部分』(白水Uブックス) 岸本佐知子の第1エッセイ集である。 ただし、「エッセイ」とは言っても、岸本のそれは、普通のエッセイとはだいぶ違う。いわゆる「身辺雑記」だとか「随筆」といったものではなく、かなりの部分が「フィクション」なのだ。 だが、だからと言って、「掌編小説」だとされないのは、岸本が「小説」を書く気で書いているわけではないというのが窺われるからだろう。つまり、岸本は、思いついたことを自由に、妄想を膨らませながら、好きに書いているのであり、

      • 森田芳光監督 『家族ゲーム』 : 「昭和の家族」のリアル

        映画評:森田芳光監督『家族ゲーム』(1982年) 森田芳光監督の代表作と呼ばれる作品である。 テレビで視るのは別にして、もともと私は、映画館で日本映画を見ることは、まずなかった。まして、この映画が公開されたのは、私が社会人になった頃で、本を読むために好きなテレビアニメさえ自制し始めた時期だから、いくら評判がよかろうと、わざわざ日本映画を見にいくような気にはならなかった。 しかしまた、そんな私の耳にさえ届くほど、評判も良ければ話題にもなった作品である。 で、どうしてそれを今

        • ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 『愛はさだめ、さだめは死』 : 「二重性」の悲劇

          書評:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『愛はさだめ、さだめは死』(ハヤカワ文庫) ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『愛はさだめ、さだめは死』は、先日読んだ『たったひとつの冴えたやりかた』に続く、私にとっては2冊目となる同著者の著作なのだが、本書を読んで、前冊に感じた「違和感」の正体が、ほぼ判明したように思う。 それは、原題がどうであれ、『たったひとつの冴えたやりかた』とか『愛はさだめ、さだめは死』とかいったタイトルは、いずれにせよ、娯楽小説らしく表面をとり繕った「偽善

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          ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 『舞踏会の手帖』 : オムニバスという形式の精華

          映画評:ジュリアン・デュヴィヴィエ監督『舞踏会の手帖』(1937年・フランス映画) これは本当によくできた、贅沢な映画である。 私が視たDVDの箱裏には「オムニバス映画の最高峰」と書かれているが、この言葉に偽りはない。 その紹介文にもあるとおり、「オムニバス」というのは、元は「乗合馬車」という意味で、要はいろんな人が同じ乗り物に乗り合わせるのと同様に、1本の映画の中にいろんな「物語」が盛り込まれている、という形式の作品を言う。 だが、そうした意味での「短編集」形式だとは言

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          夏目漱石 『草枕』 : 「文学」とは 何ぞや?

          書評:夏目漱石『草枕』(新潮文庫) 夏目漱石の『草枕』。初読である。 私が「活字の本」に親しむようになったのは比較的遅く、高校二年の時に、国語の課題として「読め」と言われて読んだ、漱石の『こころ』に感動してからである。 それ以前は、もっぱらアニメやマンガであったから、「絵のない、文字ばかりのものが面白いわけがない」と、そう合理的かつ頑なに信じていた。だが、『こころ』を読んで「絵に描かないからこそ、描けるものがある」のだと知って、大いに感心したのだ。 そんなわけで漱石の本

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          ロジェ・ヴァディム監督 『バーバレラ』 : 「ラブ&ピース」な 反世界

          映画評:ロジェ・ヴァディム監督『バーバレラ』(1968年、フランス・イタリア合作) まあ、どう評していいのかと、考え込んでしまう作品である。 「B級SF」だとか「SFエロティックコメディ」だと言っても間違いではないものの、それではこの作品の「肝心の部分」を、何も語っていないようにしか思えない。 本作を「どうでもいい、おふざけ作品」だと断じても、それはそれで間違いではないのだろうけれど、この作品は、単なる「手抜き作品」などではなく、なんらかの「思想性」を込めた、確信犯的とも

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          松浦寿輝 『ゴダール』 : ロマンティックな幻想

          書評:松浦寿輝『ゴダール』(筑摩書房・1997年刊) 松浦寿輝の「ジャン=リュック・ゴダール」論である。 松浦寿輝は、今でこそ芥川賞を受賞した小説家として知られるが、もとは詩人であり批評家として出発した人だ。 そのあたりの事情については、松浦の小説『半島』(2004年刊・読売文学賞受賞)を論じたレビューに詳しいので、そちらに譲るが、松浦の最初の小説書が1996年刊行の『もののたはむれ』であり、小説書として4冊目の『花腐し』による芥川賞の受賞が2000年であるから、本書『ゴ

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          黒澤明監督 『羅生門』 : 「難解」と言う勿れ。

          映画評:黒澤明監督『羅生門』(1950年・大映) ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明監督の国際的な出世作である。 先日、スタンリー・キューブリック監督の名作『2001年宇宙の旅』のレビューを書いたのだが、その後、この作品を「難解映画」として紹介しているネット記事を見かけたので、では他にどんな「難解映画」があるのだろうかと気になり、その記事の以前の回をチェックしてみた。すると、その中に黒澤明の『羅生門』があったので、「ん?」と引っ掛かってしまった。一一黒澤の『

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          note不具合(編集エディタ)

          noteの不具合 以前にはなかったことなのですが、最近、パソコン(i Mac)で編集エディタを開いた時に、ツールバーが、最初から画面の最下部に固定されて表示される場合があり、その際、文中の言葉を選択した後にリンク(埋め込み)ツールを選択すると、アドレスを入れるウィンドウは開くものの、右側の緑色の「反映」ボタンをクリックしても反応せず、リンクが張れません。 エディタを開いた際、ツールバーが最初からは表示されない場合もあり、その際は、文章を選択した段階で初めて、文章の直近にツ

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          山野辺太郎 『こんとんの居場所』 : 完全にハズしました。

          書評:山野辺太郎『こんとんの居場所』(国書刊行会) いかにも怪しい装丁。 なんだかヌメヌメした感じの、妖怪とも怪物とも異星生物ともつかぬモンスターの絵が表紙を飾っている。マタンゴとナメゴンの「合いの子」みたいな感じだ。しかも、タイトルが『こんとんの居場所』というのだから、この絵の怪物が「こんとん」に違いないし、「こんとん」を探しに行く、B級SF的な作品なのだろうか? それに、作者の名前も聞いたことがない。もしかして、素人の自費出版かと疑い、出版社名を確認すると、「世界幻想

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          映画 『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』 : 陽気なホラ吹き男の「孤影」

          映画評:オーソン・ウェルズ監督『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』(1965年、スペイン・スイス合作映画) オーソン・ウェルズによる「フォルスタッフ」である。 なんで邦題が『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』なのかと言えば、西欧では「フォルスタッフ」はあまりにも有名なキャラクターなので、タイトルだけでは、誰のどの作品を指しているのかわからにくいからであろう。同様の事例としては『ゴダールのリア王』もある。「リア王」が、あまりにも有名であるために、かえって日本では「ゴダール

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          ユリイカされない panpanya : 『ユリイカ 2024年1月号 特集=panpanya』

          書評:『ユリイカ 2024年1月号 特集=panpanya』(青土社) ひさしぶりに大阪梅田まで出て紀伊国屋書店に寄ったところ、雑誌『ユリイカ』の本年1月号「特集=panpanya」が出ていた。 以前なら週に2回は紀伊國屋を覗いて新刊をチェックしていたから、こんなに買い遅れることもなかったのだが、まあ「新刊の買いすぎは、隠居の身には好くない」ので、これは仕方のないことだ。 だが「おくづけ」を見てみると「第2刷」となっているのが、ちょっと悔しい。昔なら、書店を渡り歩いて「第1

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          映画 『沖縄狂想曲』 : 日米合同委員会と売国利権政治家

          映画評:太田隆文監督『沖縄狂想曲』(2024年) 「沖縄」問題に関する、ドキュメンタリー映画である。 「沖縄問題」と言ってもいささか漠然としすぎているという印象を持たれた方もいるだろう。そういう人は、「沖縄」の問題について、ある程度の関心を持ち、知識も持っている方だろうと思う。じつのところ「沖縄」の問題は、新旧あれこれ色々とありすぎるから、知識のある人なら「どの問題を扱っているのだろうか?」と疑問に思って当然なのだ。 言い換えれば、「沖縄」の問題について興味のない人にと

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          ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 『たったひとつの冴えたやりかた』 : 「強く気高くあれ」という意志の問題

          書評:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』(ハヤカワ文庫) 表題作の中編「たったひとつの冴えたやりかた」は、日本での「海外SF短編オールタイムベスト」の、ベスト5常連作である。 SF小説専門誌『SFマガジン』が行ったベスト投票の結果では、 といった具合だ。 私の場合だと、1998年の第1位を知っているので、これは絶対に読まなければならない作品だと、その頃にも本書ほか著者の本を何冊か買ったのだが、いつも書いているように、その頃の私は「本格ミ

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          『ジャン=リュック・ゴダール/遺書 奇妙な戦争』 : 信者向けの遺書

          映画:『ジャン=リュック・ゴダール/遺書 奇妙な戦争』(2022年・フランス・スイス合作映画) 端的に言って本作は、「作品としての映画」と言うよりも、「映画の構想メモに手を加えて、映画仕立てにしたもの」だと言えよう。 だから、何の予備知識もなしに観た者には、本作は完全に理解不能なのだが、ゴダール晩年の事情を知っている者には、「ああ、ゴダールは、プルニエの映画が撮りたくて、叶わなかったんだな。可哀想に」と、しみじみできる、そんな作品だ。 もちろん、私は「ゴダール信者」でもな

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