年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映…

年間読書人

その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学全般」「宗教」「映画」「アニメ」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。

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  • 「エンタメ(マンガ・アニメ・映画など)」作品のレビュー

    広く「マンガ」「アニメ」「映画」など、エンタメ作品関係のレビューを紹介します。後日整理の予定。

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    「思想」「哲学」関連のレビューを紹介します。

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    「政治」「経済」「社会」などの関連書のレビューを紹介します。

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    キリスト教関連書のレビューを、ひとまとめにしています。 後日、内容別に整理の予定です。

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    キリスト教以外の「宗教」関連書のレビューを集めました。 後日、整理の予定です。

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〈宇山秀雄殺し〉の 謎を解く : 『宇山日出臣 追悼文集』の密室

書評:太田克史編『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(星海社) エディターネーム「宇山日出臣」、本名「宇山秀雄」が、「新本格ミステリの仕掛け人」などと呼ばれた名編集者であることについて、ここであらためて説明する必要などないだろう。本書を購読したり、ネットで本書の内容を確認したりするほどの人なら、宇山についてそれなりの予備知識を、あらかじめ持っているはずだからだ。 本書は内容は、次のとおり。 (1)序文(太田克史) (2)編集者・

    • 風呂前有 『恋スルー乙女』 : 無邪気でありたい。

      書評:風呂前有『恋スルー乙女』(講談社 アフターヌーンKC・2011年) 先日、風呂前有のデビュー作『ぺし』(全4巻)のレビューをアップした。 と言っても、これは、ずいぶん前に書いたもののログを見つけたので、それをこちら(note)に転載しただけなのだが、とても好きな作品だったので、この機会にと単行本を買い直して再読し、あらためて、とても私好みの作品だと再確認させられたのだった。 で、『ぺし』のレビューを再アップした後、「風呂前は、他にどんな作品を描いているんだろう? 『

      • D・W・グリフィス監督 『イントレランス』 : ひと言でいうと「セットが凄い」映画

        映画評:D・W・グリフィス監督『イントレランス』(1916年・アメリカ映画) 本稿のタイトルにも示したとおりで、本作が「歴史的名作」となり得ている理由は、次の2点に尽きる。 これである。 つまり「お話(ストーリー)」の中身は、どうでもいい。 今から見れば、いたって「通り一遍」のものでしかないのだが、それだって「昔の作品だから、大目に見ないとね」ということで、特に問題にされることはないから、もっぱら上の2点において、本作は「歴史的名作」になりえているのである。 しかし、

        • 斉藤佳苗 『LGBT問題を考える 基礎知識から海外情勢まで』 : うんざりだ。

          書評:斉藤佳苗『LGBT問題を考える 基礎知識から海外情勢まで』(鹿砦社) まずは、タイトルから説明しよう。「LGBT問題」とは、何を問題としたものなのか。それは「LGBT」という「性概念」が孕む「弊害」についての「問題意識」のことである。 要は、それまでの長い歴史においては、人間には「男と女」しかおらず、この両者が愛し合うのが「当たり前」であり、それ以外は「異常」あるいは「病気」だとされて、治療の対象になったり、時には、差別的に社会から排除されたりしてきた。 その代表的

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          映画 『バニシング・ポイント』 : 北村紗衣の「消失点」

          ぬ映画評:リチャード・C・サラフィアン監督『バニシング・ポイント』(1971年・アメリカ映画) 本作に興味を持ったのは、今年(2024年)の1月か2月ごろ、大阪・十三のミニシアター「第七藝術劇場」で、リバイバル上映の本作予告編を見たからである。それまでは、タイトルこそ聞いたことはあったものの、どんな映画だかは、まったく知らなかった。 だが、予告編を見てみると、どうやら「カーアクション」が売りの、しかし「痛快アクション」ではなく「アメリカン・ニューシネマ」に分類される、どこか

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          小川哲 『スメラミシング』 : これは私たち自身の戯画である。

          書評:小川哲『スメラミシング』(河出書房新社) 本書は、「宗教」をテーマにした短編集だが、最後の「ちょっとした奇跡」のみは、「奇跡」と題されてはいるものの、「宗教もの」ではない。 収録作品は、次のとおりである。 本書の帯を見てみると、『陰謀論』『サイコサスペンス』『京極夏彦』『弩級』という言葉が目につくのだが、ここでポイントとなるのは、もちろん『陰謀論』である。後の三つは「凡庸な惹句」に過ぎないからだ。 しかし、ここで注意すべきは、なぜ『陰謀論』であって「宗教」ではない

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          マックス・オフュルス監督 『忘れじの面影』 : 見返りを求めないという「美徳」

          映画評:マックス・オフュルス監督『忘れじの面影』(1948年・アメリカ映画) 1948年だから、戦後の作品である。けれど、モノクロ作品であることを差し引いても、もっと古い映画という印象を与える作品だし、およそアメリカ映画らしくない。戦前のフランス映画かと見間違うばかりの、きわめて上品かつロマンティックな「メロドラマ」だ。 これは、原作が、オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの小説であり、ウイーンを舞台にした作品になっているからでもあろう。 しかし、それにしたって、昨

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          アビゲイル・シュライアー 『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』 : 現実を直視しよう。

          書評:アビゲイル・シュライアー『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』(産経新聞出版) 最近「トランスジェンダー」に関する話題が、一部で注目を集めている。だが、「トランシジェンダー」そのものが話題なのでもなければ、「トランスジェンダーの人たち」が話題なのでもない。 本書のタイトルは、原題の直訳だと『取り返しのつかないダメージ』というものなのだが、一方、邦題の方は『トランスジェンダーになりたい少女たち』となっており、このこタイトルからも分

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          アレックス・ガーランド監督 『シビルウォー アメリカ最後の日』 : 本当は「難解」な映画

          映画評:アレックス・ガーランド監督『シビルウォー アメリカ最後の日』(2024年・アメリカ映画) アメリカ社会の「分断」の先にある「内戦の可能性」を描いた映画一一だというくらいのことなら、どんなに無知で思考停止した人にでもわかることだろう。 彼らとて、さすがにテレビやネットニュースくらいは見ているから、アメリカ社会の「分断」という言葉くらいなら、何度も耳にしているはずなので、「その問題を扱った、一種の風刺的かつ警告的に、アメリカの近未来を描いてみせた作品」なのだな、という

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          マフムード・ダルウィーシュ 『パレスチナ詩集』 : 届かない声

          書評:マフムード・ダルウィーシュ『パレスチナ詩集』(ちくま文庫) 詩歌オンチを自認している私が、どうして本書『パレスチナ詩集』を読んだのかといえば、ひとつには「パレスチナ問題」については、もう30年来、興味を持って見守ってきたからであり、もうひとつは、尊敬する、故・エドワード・サイードが、この詩人に触れていたのを、かつて読んでいたからである。 ダルウィーシュの「詩」そのものを理解することはできなくても、その作品に触れることによって、その息吹に触れられれば、それで十分だと考え

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          安田淳一監督 『侍タイムスリッパー』 : 文句なし、 評判どおりの傑作

          映画評:安田淳一監督『侍タイムスリッパー』(2024年) あまりにも評判どおりの傑作なので、付け加える言葉が見つからない。 ひとまず、ありふれた言葉にはなるが、「とにかく見に行け」という他ないだろう。 本作は、インディーズ(独立系)映画の低予算作品でありながら、その口コミによる評判の高さから始まる快進撃に、かの大ヒット作『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)の再来かと騒がれている作品だ。 この先、本作がどれくらいヒットするのかはわからないし、さすがに『カメ止め』ほど稼

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          北村紗衣 『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』 : シェイクスピアの研究書ではない。

          書評:北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち 近世の観劇と読書』(白水社) 「武蔵大学の教授」で「映画評論家」でもある北村紗衣の著書を読んだことがある人でも、本書を読んだという人は、ごく限られているだろう。それが、北村紗衣の現在までの批評書4冊すべてを読んだ、私の結論である。 一一要は「こんなに値段が高くて退屈な本を、読むために買う人など、滅多にいない」ということだ。 北村紗衣には「Twitter(現「X」)」のフォロワーが「5万人弱」もいるのだが、私の見たところ、

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          風呂前有 『ぺし』 : さかさ眼鏡と異界

          書評:風呂前有『ぺし』(全4巻・講談社・2005〜2007年) 【旧稿再録:初出「アレクセイの花園」2007年3月31日】 (※ 再録時註:過去ログを整理していて、このレビューを発見した。それで、つい懐かしくなって、『ぺし』全4巻をブックオフオンラインで購入して再読し、その上で本稿を再録することにした。このレビューを書いたのは、まだ第2巻までしか刊行されていなかった段階だが、今回全4巻を読んでも、特に加筆等の必要は感じず、そのまま転載することにした。内容的には、当時興味を

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          エリア・カザン監督 『エデンの東』 : 薄っぺらい「建前と本音」の逆転劇

          映画評:エリア・カザン監督『エデンの東』(1955年・アメリカ映画) 本作は、なかなか評価の難しい作品であった。 というのも、エリア・カザン監督が、「ハリウッドでの赤狩り時代」に、「仲間を売った」ことで、映画監督として生き残っただけではなく、それを「恥じる」のではなく「開き直って自己正当化した」ために、当然の結果として、多くの映画人から「軽蔑・嫌悪」され続けた人であったというのを、私も知っているからだ。 そして、私自身も、そんなエリア・カザンが「大嫌い」だからこそ、この作

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          マーク・トウェイン 『トム・ソーヤーの冒険』 : 「差別者」とは誰か?

          書評:マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』(土屋京子訳・光文社古典新訳文庫) 私の場合、『トム・ソーヤーの冒険』には、あまり興味がなかった。 今回、この「光文社古典新訳文庫」版で読むまでは、「トム・ソーヤー」ではなく、ずっと「トム・ソーヤ」だと思い込んでいたくらいである。 なぜ、私が『トム・ソーヤーの冒険』に、興味が持てなかったのかというと、それは高校生の頃に見たテレビアニメの『トム・ソーヤーの冒険』(1980年1月6日〜12月28日)が、いささか子供っぽく感じられ

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          岩井俊二監督 『Love Letter』 : 岩井俊二の「オカルト趣味」

          映画評:岩井俊二監督『Love Letter』(1995年) およそ、私にはそぐわない映画である。 普通ならここで、その理由を、ある程度は詳しく説明するのだが、本作の場合は、そのタイトルからして、私向きじゃないというのがわかるはずだ。なにしろ、身も蓋もなく、ド直球に『Love Letter』なのである。 もちろん、本作の原作が、「叙述トリック」ミステリで知られる折原一の小説なのであったのならば、「ラブレター」と言っても、そこにトリックが仕掛けられているのだろうと、そうした

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