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記事一覧
桐野夏生『オパールの炎』(毎日読書メモ(549))
桐野夏生の新作『オパールの炎』(中央公論新社)を読んだ。「婦人公論」に2022年~2023年に連載。
かつて、中ピ連(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)という活動があったが、その中心だった榎美沙子(1945-)の生涯をモデルにした小説。本人は出てこないが、細かい章立てで、ライターの女性が、ピ解同(ピル解禁同盟)の中心人物だった塙玲衣子とかかわってきた人たちから話を聞き、ルポ的に「婦
『ルクレツィアの肖像』(毎日読書メモ(547))
マギー・オファーレル『ルクレツィアの肖像』(小竹由美子訳、新潮クレストブックス)を読んだ。1年くらい前から読もうと楽しみにしていた本。各ページからあふれる情報を堪能しつつ、生きることの苦しさにうっとなる、そんな読書。
最初に「歴史的背景」が書いてある。
あとがきまで含め447ページある、厚い本の最初で、主人公ルクレツィアが僅か16歳で亡くなる、という結末が書かれてしまっている。これは、何故16
岩村暢子『ぼっちな食卓』(毎日読書メモ(546))
岩村暢子『ぼっちな食卓 限界家族と「個」の風景』(中央公論新社)を読んだ。昨年、同じ作者の『変わる家族変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識』と『普通の家族がいちばん怖い 崩壊するお正月、暴走するクリスマス』を読んで、現代日本の家庭の食はどうなっているんだろう、と驚愕したが、昨年刊行されたこの新刊では、具体的な食事の内容ではなく、食を切り口として、家族関係がどのように変容して生きているかを
もっとみる上間陽子『海をあげる』『裸足で逃げる』(毎日読書メモ(545))
「Yahoo!ニュース|本屋大賞2021 ノンフィクション本大賞」や、第14回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞して話題になった、上間陽子『海をあげる』(筑摩書房)を読み、娘との生活の中で発見した物事をきっかけに、それまでに出逢ってきた人々との交流について考察する様子に感銘を受ける。あわせて、彼女にとっての研究対象であると同時に、寄り添うということについて、深く考えさせるきっかけ
もっとみる額賀澪『タスキメシ 五輪』(毎日読書メモ(544))
額賀澪の「タスキメシ」シリーズ(小学館)。2020年に『タスキメシ』を読み、『タスキメシ 箱根』を読み、4年たった今年になって直接関係はない箱根駅伝の戦下の歴史を伝える『タスキ彼方』を読み、ぼーっとしていたらそれより前に『タスキメシ 五輪』も出ていたことに気づき、慌てて読む。
2019年11月に刊行された『タスキメシ 箱根』の中で、登場人物たちは、2020年の夏に、東京で開催された東京オリンピック
畑中幸子とリトアニア(毎日読書メモ(543))
宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版)を読んだ時(感想ここ)、巻末の参考文献に畑中幸子『リトアニアー小国はいかに生き抜いたか』(日本放送出版協会)があった、ということを書いた。
畑中幸子は、文化人類学者として、南太平洋(ポリネシア)の島民の習俗を研究し、その後、ニューギニアの山中の民族の文化史の聞き取り調査をし、その後、リトアニアの研究をしている。
ニューギニアの山奥での研究中、作家
毎日読書メモ(541)なかなかまとめきれなかった感想文、走り書きで
本を読むスピードと、感想文を書くスピードが合ってなくて、読み終わってかなり時間がたったのに感想をまとめられないでいた本がたまってしまったので、短くても控えとして簡単な感想を書いておこうかな、と。
吉川トリコ『余命一年、男をかう』(講談社文庫)
昨年、山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』を読んだときに、文中に出てきた読書記録で気になって、割とすぐ読んだのに、うまくまとめられな
右手首骨折! 近況&毎日読書メモ(540)『あなたの燃える左手で』
4月20日にランニング中に転倒して右手首を骨折した記録その11。
手術痕は少しずつつながってきた感じ。何故か一直線の傷の真ん中あたりがつながって細くなってきて、両端がまだ開いている感じ(特に手のひらに近い側の開きが大きい)。中でつまんである部分、まだ糸が溶けてくる気配はなく、片側5つずつ、10個のつままれた跡が盛り上がっていて、普段の生活の中で、この盛り上がっている部分が当たる感じでひりっと痛いこ
中島京子『うらはぐさ風土記』(毎日読書メモ(539))
中島京子の新刊、『うらはぐさ風土記』(集英社)を読む。2022年11月から2023年7月に「小説すばる」に連載されていて、2024年3月に単行本刊行。
うらはぐさは架空の地名だが、著者の母校である東京女子大学がある西荻窪近辺をイメージして書かれているそうだ。
うらはぐさ、は風致草とも呼ばれる、イネ科の植物。
古くからある地名だが、この植物の花言葉は「未来」。
そして、タイトルの「風土記」は井伏
米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』(毎日読書メモ(538))
米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』(創元推理文庫)、発売前から楽しみに待ち、復習しなくちゃ、と『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』(上)(下)『巴里マカロンの謎』と、ゴールデンウィークに一気読み。
『春期限定いちごタルト事件』2004年8月に刊行されたが、わたしが読んだのは2011年3月。当時書いた短いメモ。
『夏期限定トロピカルパフェ事件
恩田陸『夜明けの花園』(毎日読書メモ(537))
恩田陸続く。
今年の1月に刊行された『夜明けの花園』(講談社)、水野理瀬シリーズ最新刊だが、2022年に雑誌に発表された「絵のない絵本」(学園を出たあとの理瀬が、ヨーロッパ方面のリゾート地で思いがけない事件に巻き込まれる)
2023年に雑誌発表された「月蝕」(学園を出る直前の聖が思い出話と暗殺への不安を並行して語る、過去のおさらい的物語)、書下ろしの「丘をゆく船」(聖のひとり語りにも出てきた、黎二
春のみみずく朗読会、雑誌掲載(「新潮」2024年6月号)(毎日読書メモ(536))
2024年3月1日、早稲田大学大隈記念講堂で開催された、「早稲田大学国際文学館主催 村上春樹ライブラリー募金イベント Authors Alive!~作家に会おう~特別編 『村上春樹×川上未映子 春のみみずく朗読会』に行ってきた、その時の記録が雑誌に掲載された。
「新潮」2024年6月号、創刊120周年記念号でもあり、川端康成文学賞発表業でもあり、そこに「春のみみずく朗読会」特集をつけ、当日読まれ