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#本

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気になった本をただただ読む。そのまとめ。
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#読書感想文

この世界には確かなことなんて無いかもしれない。けれども、何かを信じることはできる。「騎士団長殺し」/村上春樹

この世界には確かなことなんて無いかもしれない。けれども、何かを信じることはできる。「騎士団長殺し」/村上春樹

『騎士団長殺し』面白く、不思議で、洞察深い物語でした。

『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』『街とその不確かな壁』に続き、村上春樹は3作目です。『騎士団長殺し』の前に読了した2冊で、村上春樹の『手腕』的なものと『文章技巧』的なものと『軸』みたいなものが、概ね把握できたのは、『騎士団長殺し』を読むうえで有益でした。

今回は読みながらその瞬間に思ったことをツイートし書き留める作業をしてみまし

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三島由紀夫の『金閣寺』をスライド形式で振り返る 

三島由紀夫の『金閣寺』をスライド形式で振り返る 

先月に三島由紀夫の「金閣寺」を読了してからその衝撃を忘れることができず、一スライド一題目の「1対1対応」で振り返ってみました。

振り返るとわかる、内容の密度と、その文言の壮麗さ。

何度でも読んでその内容を噛みしめたい、そう思わせてくれる作品です。

※スマホを横にして任意の画像をタップすれば、あとは横にスライドして画像を流れるように閲覧できます。

私の中の「信仰」

私の中の「信仰」

私はいつしか、「私」を捨てることになった。

「なんで、胸の下に線があるの?おもしろい。」
小学校のプールの授業の時間に言われたこの言葉を、十数年たった今でも、鮮明に思いだすことができる。

それは、初夏盛りの午後だった。お昼休みのあと、水泳の授業のために水着に着替え、プールサイドに集まって整列していた時のことだ。
この発言をした同級生は、きっと面白半分で言ったことなのだろう。
ただ、私にとっては

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意志を否定して、意志を救う

意志を否定して、意志を救う

他者への配慮として、「わかりやすい表現」というのは、実に望ましい形式である。誰かに何かを伝えるという行為において、短く、簡潔に言葉をまとめて、それを発語することに、なんら問題はない。

けれども、その言葉の中に含侵されている「意味」というのは、実に、その言葉のままであるという逆説があるだろう。その言葉には、まさにその「言葉そのもの」が、ただ純粋に含まれているだけである。

公理的な言葉としての「こ

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現実はなぜひとつなのだろう 『ゆるく考える』/東浩紀

現実はなぜひとつなのだろう 『ゆるく考える』/東浩紀

「意味」に居る私『黒い正方形』という、無対象を志向した絵画がある。

「約束事」とはつまり、絵画そのものが持つ《写実性》である。つまりは、絵画は何かを「再現」するプラットフォームであり続ける限り絵画的リアリズムは絵画に存在していない、と逆説的に示してしまうような事実のことを〈規定性〉のある「約束事」として保持している、ということだ。

いつでも私たちの視野は「中心となるもの」と、その「中心の周囲の

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汚い居酒屋と今にある未来 『未来』/ 湊かなえ

汚い居酒屋と今にある未来 『未来』/ 湊かなえ

年季の入った居酒屋が好きだ。

店内の隅々まで「汚さ」が行き渡ったような景観は、その「汚さ」自体がなくてはならない事実のように、「端正に」そこにある。

「汚いもの」にはきっと、誰かによる《過去の軌跡》を見て取れるから、なのだろう。

店内の壁に貼られたチラシやシールを見てみると、古ぼけて解読不能なものも多い。そして、「貼られた当初には、きっと誰かが必要に迫られて貼ったものなのだ」と、想像してみる

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競争には99%勝つことができない

競争には99%勝つことができない

「不自由な男たち」というのは殆ど〈形式名詞的〉だ。不自由な男は、男内部に存在している一部分でもあれば、男社会に存在している男の一部分でもある。このタイトルは、実質的に中身がない。ネガティブなタイトルに惹かれて購入を迫られる消費者に向けることで、空虚な意味を得ることが出来るような、無意味な〈形式名詞〉だ。しかしながら、このような空虚な意味を、ある意味で明確な当事者意識をもって目にすることが出来る男た

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不自由な〈秩序〉について 「人類と哲学」/岡本裕一郎

不自由な〈秩序〉について 「人類と哲学」/岡本裕一郎

《人類の進歩》を、《哲学という明るみによって照らすこと》で、別角度からの学びを与えてくれる著作となってます。1章から8章に分かれており、明瞭な文章で、理解し易く書かれています。

こんな人におススメ!
・ホモサピエンスに興味がある
・哲学に興味がある
・どちらにも興味がある

以下、本著で印象的だった部分を解説しています。是非、拾い読みして頂いて、気になったら購入してみて下さい。

「本書は哲学の

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哲学者を隣において生活をしてみたら

哲学者を隣において生活をしてみたら

最近、哲学書を読みたい欲求が強くなってきて、ツァラトゥストラはこう語った、人間の条件、死に至る病など、いろいろとつまみ食いしてます。(いわゆる積読)

しかし、ささっと内容を一瞥してみると、そこには《哲学語》がひしめき合っていて、一言で言えば、「わけわからん」という感じ。

藁にもすがる思いで、本著を読んでみました。

歴史上重要な哲学書50冊分を、各々10ページ程度で纏められており、各々の書物の

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ストーリーとか人生は脈絡が無いからこそ面白いんじゃないの? 「竜とそばかすの姫」/細田守

ストーリーとか人生は脈絡が無いからこそ面白いんじゃないの? 「竜とそばかすの姫」/細田守

「竜とそばかすの姫」の文庫版を読了しました。

基本的に映画のストーリーラインとほとんど同じで、登場人物の背景や設定、心象描写などが詳しく書かれている感じです。

「映画」⇒「文庫本」⇒「映画」の流れで見てみると、また違った印象を得ることが出来そうです。

ふわっとしたストーリーライン「ふわっ、としたストーリー」と映画でも、文庫版でもそのように思いました。設定やその整合性、緻密性に関しては、「粗」

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《多様性》と《主観》のはざまで 「生命科学的思考」/高橋祥子

《多様性》と《主観》のはざまで 「生命科学的思考」/高橋祥子

会社に属している身の私ですが、「会社」へ自発的に属していたいとは1ミリも思ったことがありません。言ってしまえば、《報酬を得る》それだけのために仕方なく属している、ただそれだけが理由です。

そうは言いつつも、《報酬を得る》ためには、様々な種類の「課題」に取り組む必要があります。例えば、【現場レベルで展開すべき課題】【支店・支部レベルで展開すべき課題】【本社レベルで展開すべき課題】…と、多様ですね。

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五線譜で縛られたハーモニーに私自身を見た 「ハーモニー」/伊藤計劃

五線譜で縛られたハーモニーに私自身を見た 「ハーモニー」/伊藤計劃

ユートピアの臨界点を描き出した、国産SF小説「ハーモニー」を読了しました。(少しだけネタバレあります。)

あらすじ:21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ駆逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する”ユートピア”。そんな社会に潜んだ3人の少女は餓死することを選択した。-それから13年。死ねな

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壁にひそむ神様を見つける 「進撃の巨人」/諌山創

壁にひそむ神様を見つける 「進撃の巨人」/諌山創

「進撃の巨人」に存在する《壁》こそ、壁内人類を物理的に守り、自己を開花させるような《神様》みたいなものなのだと思う。

そのように思う考え方、つまり《思想》とは何なのだろう、と考えてみる。

このような説明は、思想をすべからく説明し得ないものだ。ある個人Aが、ある特定の思想Bを持ち合わせていたとしても、その思想Bを持つ集団が、特定の性質を共有しているとはかぎらない。個人Aが思想Bに還元できても、思

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私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

「殺人出産」「コンビニ人間」の次に、『地球星人』を読了しました。

あらすじ:恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生のころ、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた2人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて…。

私たちの周囲に存

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