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《多様性》と《主観》のはざまで 「生命科学的思考」/高橋祥子

会社に属している身の私ですが、「会社」へ自発的に属していたいとは1ミリも思ったことがありません。言ってしまえば、《報酬を得る》それだけのために仕方なく属している、ただそれだけが理由です。

そうは言いつつも、《報酬を得る》ためには、様々な種類の「課題」に取り組む必要があります。例えば、【現場レベルで展開すべき課題】【支店・支部レベルで展開すべき課題】【本社レベルで展開すべき課題】…と、多様ですね。

大体の人は、【現場レベル】の課題に取り組みますが、その課題は、【本社レベル】で議論され揉まれた内容が必ず関わってきます。トップダウンで課題は言い換えられ、私たちの課題となります。

ですので、私たちが日々目にする「課題」は、本社レベルでどうにかすべき問題であるということ、すなわち、会社存続のためにクリアすべき壁、ということになります。現場まで降ってきたころには、細分化されているというわけです。

「現場」で働く人は、いわば戦闘に立つ兵士。しかしながら、納得する前にただ死んでいくだけでは、もちろんいけません。そこで必要になってくるのは、本社(社長・取締役という名のドン)に依存しすぎないこと、すなわち「主観の偏った信念を持つための尽力」という本質こそが、肝腎であるとおもいます。

ドンは、企業理念に則った、クリシェを用いるような正攻法しか明言しません。トップダウンを利かせやすいような工夫かも知れませんが、そこには現場への期待もあるのだろうと、私はいつも考えています。

期待というのが、「主観に偏った信念」、いわば「現場の知恵」そのものを示します。

私はいつも、「課題」に納得ができません。あえてしない、と言う方が正しいかもしれません。「課題」は、「課題」として明示される文面そのものではなく、その「課題」の真の意図というのは、大きいくくりで言いくるめられている中に存在するものだからです。

例えば、「ABCDE」という連続性のある課題があり、それが細分化され、「A」のみが課題として与えられたとする。最初は困惑し、納得できないこともあるでしょう。

そこで私たちが兵士として発揮すべき力は、その「課題」に対して、現場の知恵に則った主観を駆使し未来を思い描きながら仕事をする、というシンプルな事実のみ、だと思います。


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現状を俯瞰しながら理解を深め、それだけに留まらず、自分自身の「主観」を活かすことで、意志を持った未来予想図を描くこと。

上記の、「現状を俯瞰」という部分をいかに深めていくかということが重要であり、その理解は「生命科学的思考」によって可能となる、と本著に書かれています。


叫ばれる《多様性》が多様すぎてあり余っている

おそらく、「多様性」を接頭に置けば、なんとなく説得力のある言葉になるだろう、という認識があるのだろうと思います。メディアでも、新聞でも、本でも、何でもかんでも「多様性」を言及しすぎです。

「パーソナルな多様性」にクローズアップし、女性の社会参画、移民の取入れなど進められている現状は、過去のアメリカの勃興した歴史から見ても、メリットが多いと思います。しかしながら、それ以上に必要なのが、「タレントベースの多様性」と言われています。

パーソナル多様性は、ほぼ相対主義に傾倒します。相対主義的な多様性は、その集団における「同質性」を欠いています。ようするに、会社員の多様性によって、未来予想図を描きずらい構造になってしまう、ということです。企業理念もくそもないわ、ってな感じです。

タレントベース多様性は、まさに前述した通り、多様な個々の「主観」などから構成されたものです。

会社へ所属するための「同質性」をベースに、タレントベース思考で多様な人材を保有する会社は、生命科学的視点からみても、非常に強固というわけです。

その生命科学的視点とは、①人間のゲノムは99.9%が同等であるということ。逆に言えば、0.1%の差異しかない、ということです。要するに、人間のパーソナルな差異自体は微々たるものです。

また、②生態系にとって多様な種を駆逐し少数の種によって寡占化が進むことは悪い状況である、ということです。寡占化が進みうるような多様性ではなく、タレントベースの多様性によって内集団としての会社の生態系を守ること。さらに、会社同士の多様性の保有を死守すること。これは、長期的な時間的視野から見ても、今後の日本に必要な要素です。


そもそも人間は、個々の「信念」などによって、多様な存在であることは間違いがありません。また、この多様性は近年に発生した人間的進化でもないわけです。

日々使われる、「多様性」という言葉に対し、自分の「主観」を駆使しながら注意深く思考する。その思考によって研ぎ澄まされた「主観」を用いて、日々の課題に取り組むべきです。


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