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あなたの心に何かひとつでも届き残るものがあれば、とても幸せです(*.ˬ.)"
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【短文朗読】夏色のキミ【文披31題】

【短文朗読】夏色のキミ【文披31題】

☆所要時間:1分
☆人数:1人

大人になってしまった、と思った。

真っ直ぐに受け取れない、この歪みを。

無邪気なキミの笑顔につられて、
つい、忘れてしまうんだ。

それどころではなかった、と。

そして、思い出してしまうんだ。

誰かを恋しく思う感情を。

ボクは、恐れているのだろう。

キミのことばかり考えてしまう日が来ることを。

稲穂が揺れた。

キミの髪が、一緒に揺れた。

夜を含み

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【朗読版】病室の朗読会

【朗読版】病室の朗読会

☆人数 :1人用
☆声に出すと3分〜4分
約750文字

⚠こちらを朗読される際は、文章の変更はせずにお読みくださいますようお願いします⚠

最低限の明かりだけが灯(とも)る
深夜の病室。

命を確認するための
機械音。

フロアに時折響く
ナースコール。

精一杯の
呼吸音。

もう、言葉を交わすことができないお父さんへ。

今まで恥ずかしくて言えなかったけれど、

わたし、文章を書いていました

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ビートルズで見送って【エッセイ】

ビートルズで見送って【エッセイ】

1640文字
声に出すと約6分

「この曲、わかる?」
和音を探りながら、父は言った。

ピアノを弾くところなんて、それまで見たこともなかった。
私のピアノの練習はおろか、発表会にも来たことのない人だった。
まさかピアノに関心があるとは思いもよらず、小学生の私は戸惑った。

「これが、イントロ。」
たどたどしくも力強い和音が部屋に響く。
ビートルズの「Let it be」という曲だった。

父は

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 絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた8年間 【エッセイ】

絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた8年間 【エッセイ】

1810文字 
声に出すと約7分

幼い頃の家の風景を思い出してみると、
「絵本」がいつもテーブルの上にあったように思う。

超が付くほど本好きの母が、幼い私にたくさんの絵本を読んでくれた。
そのお陰なのか、私にとって本というものはとても身近な存在だった。
年齢とともに児童書、ライトノベル、小説と読むものは変わっても、本はいつも生活のどこかに必ずあった。

子どもを授かったと分かった時、何より先に

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病室の朗読会

※家族の闘病や人が亡くなる話がお辛い方は見ないことを推奨します※

深夜の病室で、朗読会をしました。
お客さんは、作品内で思いを馳せている相手の「父」ひとり。

その時にはもう、目覚めて言葉を交わすことはできない状態でしたが、
だからこそ 読むことができました。

父の前で朗読などしたことのなかった私。
まして、文章を書いて人様に台本を読んでいただいているなど欠片も知らせていません。

けれど、ま

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あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

あなたはいないのに桜は咲くのです【エッセイ】

※人が亡くなった話がお辛い方は見ないことを推奨します※

(約730文字)

「ひと月前は」と思い返しながらの、ひと月だった。

「もう2月も終わりになりますね」
「あっという間に年度末です」

流れてくる月末の挨拶が

とても怖かった。

その日 その日

生きていてくれることを祈って

生きていてくれることが

毎日 奇跡だった。

もう1日

もう1日

終わりを感じながら

もう1日

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風に溶けてしまいたい【エッセイ】

風に溶けてしまいたい【エッセイ】

約1080文字
声に出すと約4分

知らないことは大好物。
生まれながらに好奇心の塊の私は、なんでも経験したがりだ。

そのせいで、しなくてもいい苦い思いをしたこともあったが、自分に対して「苦労は買ってでもしろ」精神なので、後悔はしていない。

無計画に住む場所が変わっても、急に違う業種の職に就いても、”なんとなく”どうにかなってしまう。
それは何の能力が高いわけでもなく、
用意された箱でやり繰り

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【短文朗読】あなたが芽吹く頃

【短文朗読】あなたが芽吹く頃

☆所要時間:2分
☆人数 :1人用

疲れた
って、言っていいよ

大丈夫
って、言わなくていいよ

誰かのために
がんばらなくていいよ

真っ直ぐで
いなくてもいいよ

崩れているように見えても

倒れているように見えても

今は

あなたが

新しく芽吹く前なんだ

何も見えなくても

何も聞きたくなくても

それは今が

冬芽(ふゆめ)のように

固く自分を守り

新しい世界に

新しい自分

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【歌詞】【和風】小さき花よと微笑んで【朗読版】

【歌詞】【和風】小さき花よと微笑んで【朗読版】

残暑の熱も冷めやらず
夜長月には間に合わず

夜露煌めく風
混ざる私
あなたは気付いてくれました

さやかに吹く香(か)は
秋の調べ
このひと時こそ
美しい

小さき花よと微笑んで
わずかでも
次の雨雫まで

届け届けと橙(だいだい)が
陽の差す方へと向かいます

薄曇りの神無月
流るる雲を
見上げる私
あなたは見つけてくれました

さやかに吹く香(か)は
秋の調べ
このひと時こそ
命の光

小さ

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【短文朗読】無口な父

【短文朗読】無口な父

☆所要時間:1分
☆人数 :1人用

口数の少ない父からは、
特に用件がなければ
声を掛けられることはなかった。

その分、父が発するひとことは重く、
他の人の言葉よりも、
価値があるように感じた。

ずるいな、と私は思う。

あまり面と向かって話す機会がない
私のことを
父は、私のいない場所で誉めていることがあるらしい。

そんな話を人伝(ひとづて)に聞いた時
私は、こそばゆさに人知れず舞い上が

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【写真詩】日だまりの誓い

【写真詩】日だまりの誓い

☆所要時間 1分
☆人数 :1人用

知らなかったよ
足元に
こんな可愛い花が咲いていたなんて

知らなかったよ
なんの疑いもなく
信じてくれる人が現れるなんて

「みつけたよ」と
道端の花まで私の手を引いた
ちいさなあなたを思い出す

ちいさな手は
なんでも掴む

私が引いていたのなんて
ほんの一瞬だったかのよう

友(とも)を得て
知(ち)を得て

いつの日か
浮かんだ夢を
掴むのだろう

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【詩】よはくのせかい

【詩】よはくのせかい

わたし以外から
みえている せかい

働くわたし
先輩のわたし
部下のわたし

パートナーのわたし
親のわたし
子のわたし

わたし以外には
みえない せかい

わたしだけが
知っているわたし

「わたし」でいるための
たいせつな せかい
#ことばおもい お題
「よはくのせかい」より

【詩】その手が闇を晴らしてくれた

【詩】その手が闇を晴らしてくれた

☆所要時間:1分
☆人数 :1人用

⚠こちらは一人称二人称も含め、文章は変更せずにお読みくださいますようお願いします。

怒りなのか
悲しみなのか
悔しさなのか
もうどれかを特定することもできず

黒い感情に飲まれては
同類になってしまうと抗(あらが)いながら
ぽつり ぽつりと
涙が零(こぼ)れた

話して いいんだよ
放(はな)して いいんだよ

抱き締めてくれる
きみのあたたかさが
きみの優

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【新月の夜によむ】照らされぬ夜に許しを【短文朗読】

【新月の夜によむ】照らされぬ夜に許しを【短文朗読】

☆所要時間:2分
☆人数 :1人用

波に揺れる月明かり

夜に消えてしまいそうな笑顔

儚げなあなたを

守りたかった

「ふたりだけだったら  よかったね」

まだ幼かった

わたしたちは

世界の圧力に

立ち向かうことすら

できなかった

「私を
    まだ
    覚えていますか」

あなたに

触れられなくても

あなたを同じ距離から見守れる

月のようでありたかった

「ふたりな

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