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#小説
【1分小説】死神さんとワルツを
真夜中、静まり返った病院の廊下を僕は歩いていた。
暗がりの中で、誰かが踊っていた。
窓から射し込む月明かりに照らされて顔が見える。
やつれきって肉がほとんどなく肌も真っ白、生きていないかと思えるような女性だった。
それでも踊っている姿がとても美しくて僕は見惚れてしまった。
「あら?こんな時間に可愛い坊や。
あなたも眠れないの?」
「うん…。
少しお姉さんの躍りを見ててもいい?」
「
ラベンダー畑の約束【ショートショート】
ラベンダー畑と一緒に見た夢がある。夏の日差しが降り注ぐ、何もない平原。遠くまで続くラベンダー畑が広がっている。
風が吹くとラベンダーの香りが全体を包む。瞬きする度に香りが増してくる。風が吹くと香りが強くなるのだ。
僕たちはそこで約束を交わした。二人だけの秘密の約束。一緒に畑を歩く約束。約束は簡単だけど、心は深い。
彼女が笑うと、全てが明るくなる。その笑顔が、僕の世界を照らす。何かを失った時、
【1分小説】きみのもとへ
彼はもう、どれくらいここにいるのか覚えていなかった。
覚えているのは、彼には
とても大切な人がいるということだけだった。
その大切な人が誰なのかもわかっていないけど、ずっと呼ばれているような気がしていた。
そして、彼自身も
その人に会いたかった。
でも、彼には足が無かった。
「神様、僕に走れる足をください」
彼は、天に向かってお願いをした。
すると、神様が
大根の足を授けた。
彼は
恋をして蝶になった主人公
きっと貴方は忘れているのでしょうね。
とうの昔から私の胸にある、この温かい想いを。
どのような言葉で表したら良いのか、自分では分かりかねます。
ですが確かな事は、酷なこと、不愉快に思ったこと、怯えたこと。
そのような時間は存在しておりません。
間違い無く貴方は私にとって、大切な気持ちを『香り』と共に心へ運んで下さいました。
どれだけの刻が経とうと、忘れる事など無いでしょう。
【掌編小説】魔法使いの弟子
数多くのモンスターを倒してきた魔法使いミラベーユの弟子になって、はや二年。
なのに今の自分に出来ることといったら、小指の大きさの炎がポッと出て、三秒後には消えてしまう程度の魔法。これじゃ、モンスターになんのダメージも与えられない。十二名いる弟子の中で俺が一番下手くそだ。
「俺、才能ないみたいです。役に立たなくてごめんなさい」
師匠に弱音を吐いてしまった。
「見てやるから、もう一度やってごらん
【詩】セレクションバイアス
1億円あげる代わりに未来を頂戴?
明日来ないのと1億円どっちがいい?
ちょっと、少なかった?
じゃあ1兆円でどう?
貴方が思う命の価値はお金に変えられない。
だけど、他人の命の価値は値付けされていて、
裁判で、大体このくらいって計算される。
なんでかな?
私が選んだ貴方だから。
そんじょそこらの人とは違う。
恋は盲目。
網膜には光の受容体があるけど、
一か所だけ、神経が集まっ