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なんでもない。

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記したつもりが消えていくもの。
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#記憶

純正じゃない思い。

純正じゃない思い。

 最近、"母に似て来た"と自分でも思うようになった。
以前ほど思い出さなくなっているのにも関わらず、日々、鏡に映る顔を見る度に"母"を感じる。
幼少期には、もうこの世から消えてしまったから、その記憶のほとんどはアルバムの中に在る。自分の子供と向き合う時、ふとスマホに視線を落とす時、
わたしは母親の姿をそこに見つける。

 母は美大の学生だった。21歳でわたしが生まれた。わたしが絵が好きなのは遺伝な

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夢、記憶、可塑性。

夢、記憶、可塑性。

 連続の夏日が薄らいだ昨日、夢をみた。

 「何処でも行けるけど何処にも行けない」彼はそう言っていた。中目黒のベッカーズから学校まで歩く途中で、山手通りの排気ガスとビルの谷間を屈折して、アスファルトに反射する照り返しに眩しく目を細めて、人生について話し合っていた。青春時代の悩みの大半は哲学に触れてから、人生というカテゴリーに分別される。似ているようで似ていない。重いようで軽いようで。擦れているよう

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車エピソード。

車エピソード。

 教習所って言うより、ドライビングスクールって言う響きが好きです。(画像は和泉自動車学校から引用しています)あんまりにも、このキャッチコピーが面白くて。運転しながら上機嫌になる気持ちは理解するけど、実際にひとりで笑顔でも……ね。(怖い)

 吉祥寺にあるドライビングスクールに通っていた記憶を思い出していました。もう閉校してしまったので記憶のみなんですが、総武線の電車に乗り、校舎と走行コースが車窓か

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R.M.T.T(ラーメン食べたい)

R.M.T.T(ラーメン食べたい)

 急に食べたくなるもの。それは、ラーメン。こんな寒い日には特に。いろいろあるけどスープは、澄んだ醤油がいいね。じゃあ、行っとく?行っちゃおうよ!騒がしいクラブ音楽からエスケープするように、R.M.T.T(ラーメン食べたい)と口にすれば気分も高まる。

 六本木の交差点を少し歩いたその先へと、白い息を吐いて彼とふざけ合いながら、えんとつが目印の屋台みたいな建物を目指して、濡れて鈍い街のネオン、車道で

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栄養えいよー。

栄養えいよー。

 冷凍庫に一枚、玄米食パンが残っていた。ブイーンと唸る機械音と共にさみしそうに。パンにそんな感情があるはずがない。茶色い表面がちょっと冷凍焼けしているせいで、白くしらけている様が、そのように見えた。「もう〜白いパンより茶色いパンの方が体に良いんだよ」なんて家族に言ってみても、白くてやわらかいルックスで、お砂糖やバターたっぷりの方が魅惑的だから、仕方ない。

 コーヒーと一緒に、トーストして食べた。

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纏う。

纏う。

 先日の夏日。

 季節が過ぎて、いつものように衣替えの作業に手を出していたら、真逆の夏日。

 よく考えてみたら、いつから季節と季節の変わり目が薄れるようになったのだろう。異常気象、温暖化問題もあるし、秋らしい秋や春らしい春って、実に短い。秋や春はお洒落に最適なのにね。だから、その季節の洋服の売上が上がらないんだよね、との声も聞いたりする。

 また先日、あるコートを手離した。それはセリーヌのカ

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本や写真集。

本や写真集。

 引き続き、整理整頓期でのんびりと過ごしています。

写真集は、割とたくさん所有していて、クローゼットにはぎっしりと秘蔵しているものたちが眠っている。

せっかくだから、片付けついでに、お気に入りを備忘録しようと。

今回は3つ。

①色の名前/近江源太郎/ネイチャー・プロ編集室

 頭でデザインを描いている時、単純な色じゃなくて、豊富な色の名前を知りたいと思いました。絵画にしても、例えば空をひと

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ある嫉妬について。

ある嫉妬について。

 父と2人で、暮らしていた小学ニ年生の頃、よく駄菓子屋に通った。子供の夢の国。めんこや、麩菓子、よっちゃんイカ、のらくろのチューイングガム、チューブに入ったカラフルな飲料、思い出すと、一瞬であの記憶が瞬き出す。手に握りしめた100円玉が世界の全てだった日々。
記憶とは輝きと痛みを同時にファイリングするようにも思う。

 ある日、いつも通りにお菓子を選び、いつも通りに100円玉を、椅子に座り雑誌を読

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ELEGANCE。

ELEGANCE。

 リラックス・イン・ザ・ムードってCD💿を聴きながら、整理整頓しています。このオードリーの写真好きです。

 こういうコンピレーションアルバムが当時流行ってました。つい最近まで忘れていて、ストックの引き出し開いたら、もう止まりません!😊

 音楽って、想い出とセット✨
 記憶を手繰り寄せてしまう✨

 「夜空のトランペット」🎺🌌は、8才の頃👂
亡き父親との想い出の大切な曲✨未だに聴けば"

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遠くて近くて近くて遠い。

遠くて近くて近くて遠い。

 マスクで、雨。
 
 元彼と偶然再会した。

 お互いに一瞬👀!!からの会釈。

 大概そういう場面に出会す日は、時間の流れが何処かおかしい。玄関を出てエントランスまでエレベーターで降りてから「あっ…!」と忘れ物に気がついたり、コーヒーカップに気を取られ過ぎてテーブルの上のプリントを落としたり、髪留めが急に外れたり、高いヒール履いてる訳でもないのに何もない道路でコケたり、移動が電車の時は目の前

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そういうものはそういうことだから。

そういうものはそういうことだから。

 季節的にも、今頃だっただろうか?
うつらうつらとしていたら、あの日のベンチに座っていた自分を手繰り寄せていた。

 確か、杉並区の妙正寺川の近くの公園。
あの時は、精神的にズタボロだった。精神的に追い詰められて余裕がなかった。笑顔なんて嘘のように忘れて、高校時代に読んだシェイクスピアの登場人物のように、苦悩に満ちた表情をして生気を失っていた。休みだから、髪はボサボサで化粧っ気なしのすっぴんにキャ

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not to be。

not to be。

 彼は言った。

「僕をみて…僕だけを」

 真っ直ぐな眼差しで体を射抜く。
 秋風が左から右へ吹き、髪が乱れる。

(みてるよ、そのコートは、わたしがプレゼントしたものだから)

 此れが、木枯しと言うものらしい。
 落葉が、カラカラと早足で目の前を転がっていく。

 そんなに素敵なコートを羽織ってるのに、何故に、アナタは、、、
あ、そのシャツとニットもいいね、
え、ハンカチまで持ってるの?

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多面体。(父の夢をみたから固定)

多面体。(父の夢をみたから固定)

 夏が過ぎ、秋へ向かう。

 季節の変わり目は、いつも高校2年の夏休みを思い出す。
精神は湖のように深くゆれ揺らぎ、全身を浸した水面で手足を掻き続けて底が濁る。濁らせたい訳ではないが動けば動くほど濁りは広がってゆく。同時にいつ沈むのか推測不能な不気味さに体が冷え切る。常に水の中に浸っているからか手先足先が痺れる。一歩進み出したら一瞬で溺れてしまうかもしれない恐怖と緊張と裏腹に、陸に上がり自分の体温

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白昼。

白昼。

 川沿いを歩いて、この場所まで来た。ここら辺ドラマの撮影にもよく使われるのよね。なんて独り言を呟いたら、急に右側の木がザワって揺れて、あの匂いを纏った風が全身を力強く、かつ優しくフワリと抜けた。

 背後に気配を感じて振り向いたら、彼がいた…。

『あ、昼間でも登場出来るものなんだ?』

「アハハ…まあね、第一声がそれ?」

『何時も夢の中でじゃない?それにメール中とはね…』

「僕が去った後、キ

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