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犬の天使ポチ子ちゃん
第一話 はじめましてポチ子ちゃん
その日は台風が来ていました。風がごうごうと唸りをあげ、雲は薄暗く、どんどん濃くなっていきました。窓を見て不安そうにしている子どもたちはお留守番にさせて、お母さんは、一人で夕食の買い物に出かけることに決めました。普段使っている、自転車も、使わないことにして、丈夫そうな傘をぎゅっと抱えて、商店街へ向かいました。
子どもたちは心配でした。特に上の子は、お母
短編小説「明けまして、ボケました」
「おかーさーん!電話よーっ!新田さんって人から!」
と、呼ばれた懐子は、丁度鼻眼鏡で居眠りをしていたところだった。隣には、コーヒーと読みかけの本。んん?とずり落ちた眼鏡を戻すと、目の前に娘の雛子が仁王立ちで立っていた。
「いい加減、スマホの使い方覚えりゃ良いのに!いちいち家電繋ぐの、面倒なのよ!?」
雛子が、眉根を釣り上げても、懐子はどこ吹く風で、サッと家電を取り上げた。
「もしもし?」
隣
「犬はバナナを食べない」あとがき一風が強く吹いてる一
全話お読みになってくださった方も、まだ未見の方も、ありがとう御座いました。これで、全9話、「犬はバナナを食べない」は、完結致します。
実は、この小説、プロットや、メモ書きは、全て私の頭の中にあります。事前に、ノートや、スマホに書きつけたりせず、ぶっつけ本番で、noteの原稿にまとめたものが、このお話なのです。
それというのも、私は、ネタのメモや、プロットを書くだけで、「書いた気」になる、と
「犬はバナナを食べない」9
墓地は、長い坂を登った所に、あった。とても広く、墓地全体が山のようにつらなっており、一旦ヒューと風が吹くと、どこまでも吹き渡るように、あつには感じられた。納骨の際に、来たはずなのに、未だに、墓地に沢山の死者が眠っているということにただただ、驚かされた。もしかしたら、それはあつの母ではなく、ミキヨシの彼女だったかも知れない。いや、もしかしたら、あの時トボトボと夜道を彷徨っていた、私なのかも、知れな
もっとみる「犬はバナナを食べない」最終回前の、中書き
あと一回を残し、「犬はバナナを食べない」は、連載終了致します。読んでくださった方も、まだ未見の方も、ありがとう御座いました。
「若い少女が、恋愛を救済としない物語は、無いのだろうか?無かったら、作ってしまえええ!」と、考えて、生み出したのが、この物語です。「頑張ってる女の子が良いな~。頑張ってるってどんな子かな?あ、昔の私か!!」と、今回もノンフィクション要素、私小説的要素がふんだんに入ってい
「犬はバナナを食べない」8
「◯月 ◯日 拝啓 お母さんへ
お元気ですか?そちらには、もう慣れましたか?こちらは、ほぼ変わりはありません。一人暮らしは、お母さんが入院中に、もう、平気になってしまいました。悲しいことに、この方が居心地が良いのです。より子が、ルームシェアしたい、と言ってきましたが、断りました。私としては、犬を飼いたい。トイプードルとかじゃなくて、日本犬、柴犬のような犬を。それは、無理なので、金魚を飼いました。
「犬はバナナを食べない」7
秋になった。季節が変わり、物悲しくなる前に、私は、一つ、年をとった。鏡を覗いてみても、相変わらず、子どもくさい顔とスタイルが現れるだけだったが、周りの人間の反応は、子ども時代と少しずつ、変わっていた。女性として、見られているのだろうか?なんて、訝しんでしまう。それだけ、自分が、真の女性という性とはまだまだ程遠い気がしていた。パンツスタイルで通していたし、メイクはおろか、化粧水も使ったことがなく、
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