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「パラソル&アンブレラ」②

第二話「ヨセフ登場」
 八未と違って、古透子には「華麗なる」男性遍歴など何ひとつとしてなかったが、いわゆる男友だちというのは存在している。この間の面接で受かった、スーパーのレジ打ちのバイトを終えて帰宅すると、アパートの前に「その男」が、ポツネンと立ち尽くしていた。
「あ、あ、あ、、、」
バイクで来たようで、いかついバイクの横でヘルメットを持ってオドオドしている。
「、、、ジョセフ、また来てたの?」
「うん!」
古透子が呆れたように声をかけると、半分髭面のその男は、サーッと笑顔になって輝かんばかりの白い歯を見せた。大学で知り合った、ハーフの男であった。
「でも、僕、ジョセフって呼ばれたくない!友人(ゆひと)という名前で呼ばれたいから、、、」
「ミドルネームは嫌ってこと?ハイハイ!」
古透子は、ガックリと肩を落とした。
「でもなんで、あんた家まで来てんの?ストーカー!?」
問い詰めると、
「ノーノー!!違います!大学の課題を一緒にやりたくて、、、」
「もう、私は休学してるの!他を当たってよ!?」
良い加減に怒り出す古透子であった。古透子の癖のひとつに、男性にはキビシイという理があった。
ジョセフこと友人(ゆひと)は、そんな古透子だからこそ、コッソリとアタックし続けているのかも知れなかったが。
「アパートには、絶対に入れないわよ!!」
「はい、喫茶店で話しませんか?」
「、、、あんたのオゴリ?」
「はい!!」
「じゃあ、良し!」
そう言われて、またしても、サーッと微笑む友人(ゆひと)であった。

 ここでしばし古透子の外見を描写してみよう。彼女はやや長い髪の毛を背中に垂らし、まつ毛が長く奥目の奥二重で、華奢ではないが細い方。典型的な日本人的ルックスで、なんだかいつも謎の透明感や発光感があるようなタイプであった。蛋白な性格が、それを醸し出しているのかも知れなかった。
翻って、妹である八未は、くっきり二重の黒目がちな、肌の浅黒い少女だった。いわゆる、美人と呼ばれても差し支えない位、整った顔立ちをしていて、髪はやや天然パーマ気味だったが、それがありがちな美人とは一線を画した作用を施し、エキゾチックな雰囲気に仕立て上げていた。
彼女が来ると、周りの温度が幾度か上がりそうな、一種特別なオーラを放っていた。

 一方、古透子と友人(ゆひと)は、コーラとアイスコーヒーを頼むと、やっと近くの喫茶店で見つめ合った。傍から見たら、恋人同士にも見えたことであろう。だが、そんなことは微塵も感じていない古透子が、面倒くさそうに友人(ゆひと)との話に乗っているだけで、そのような色気のあるものではなかった。
 友人(ゆひと)の外見にも着目してみるが、彼の父はアメリカ人で、母は日本人というハーフであり、それ故それなりに整った顔立ちだった。だが、なにせ性格がまるきり「チー牛」だった。彼はオタクであり、背は高かったがガリガリに痩せていて、筋肉のかけらも見えなかった。話すことはいつも一方的だし、古透子の方が頭の出来も良かった。何故か古透子に気があるらしいことは気がついてはいたが、古透子にその気は全くなかったのだった。


 

 
 

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