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米国ニューヨーク州公認心理士が心についてお話しするブログです
私は米国ニューヨーク州公認心理カウンセラーです。米国のコロンビア大学臨床心理学修士課程を修了し、資格を取得、当地で開業してカウンセラーとして活動していました。ニューヨークで10年ほど暮らした後、現在はシンガポールに拠点を移し、引き続きカウンセリングに従事しています(詳しくはページ最後の略歴をご参照ください)。
私がカウンセラーになるために米国の大学院で学んだこと、そしてカウンセラーとして働きなが
カウンセラーの本棚2<米国経済学者が教える、育児における賢い選択術(新生児期〜幼児期編)>
前回の記事では産後育児中に不安に陥りやすい理由を睡眠不足の観点からお話ししました。今回は、不安になりやすい育児中に役立つ本をご紹介します。
今回ご紹介する本は、米国ブラウン大学の経済学教授エミリー・オスター氏が執筆した『育児のカンニングペーパー:統計的データに基づくより良い、より楽な育児(新生児期〜幼児期)』(拙訳、2019年)(”Cribsheet: a data-driven guide t
その不安、睡眠不足のせいかも?
睡眠が不足することによってイライラしたり、気分が優れなかったりすることは、経験的に容易に想像できるのではないかと思います。しかし、睡眠不足と不安の関係について考えたことはあるでしょうか。
2024年4月号の『Psychological Bulletin』という雑誌に、過去50年間に行われた154件5,717人を対象とした睡眠不足に関する研究を解析した結果が発表されました。それによると①睡眠を全く
トラウマは現在進行形<フラッシュバックのメカニズム>
先週から数回にわたり、危機的状況に陥ると「闘争・逃避反応」(扁桃体ハイジャック)を起きることをご紹介しました。「危機的状態」といってもさまざまなものがありますが、強度によってはトラウマ(PTSD)として残る場合があります。今回はこれまでご説明した内容を交えながら、トラウマと記憶の関係をお話します。
トラウマ(PTSD)を抱える人は、フラッシュバックを経験されたことがあるかもしれません。フラッシュ
感情チャート<感情の種類、どれだけ知っている?>
前回のブログでは、気持ちを落ち着ける方法として、感情を言葉にする(Affect Labeling)というテクニックをご紹介しました。感情を的確に言い表す言葉を見つけるのは簡単なことではありません。しかし、前回の記事で書かせていただいた通り、私は感情表現の上手い下手は資質ではなく、練習により上達することができるスキルだと考えています。
こうした考えは、私がこれまで10年ほど暮らしたニューヨークや現
感情に振り回されない方法<気持ちを言葉にする>
前3回にわたって、脳の中にある小さなアーモンド型の扁桃体が活発になると、感情に振り回されてしまうことがあるというお話をしました。今回は、感情的になってしまったときにどうやって気持ちを落ち着け、理性を取り戻すことができるか、簡単にできる方法をご紹介します。
その方法は、感じている気持ちを言葉にする、という非常にシンプルなことです。たとえば、エレベーターに乗るとパニック発作が起きてしまう人にとって、
感情に支配される<扁桃体ハイジャック?!>
不安や恐怖、怒りといった強いネガティブな感情によって扁桃体が活性化されると、理性を失い、感情に振り回される状態になるというお話を前2回にわたってしました。このように、感情に体と脳を乗っ取られてしまったような状態はまるで、ハイジャックされてコントロールを失った乗り物のようです。
こうしたことから、アメリカでは扁桃体が過剰反応してしまっている状態を「扁桃体ハイジャック (amygdala hijac
脳科学から理解しよう<闘争・逃避反応>
前回の記事では、私たちが理性を失ってしまうとき、その原因となる「闘争・逃避反応」について解説しました。今回は、なぜこの反応が起きるのか、脳のメカニズムからご説明します。(以下、分かりやすさのためにかなり簡素化している点をご了承ください。)
闘争・逃避反応が起きる際に重要な役割を果たすのが、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる器官です。なぜ扁桃体という不思議な名前がついているのか。それは形が扁桃(アー
「闘争・逃避反応」(fight-or-flight respons)とは
そうした悩みをご相談いただくことがよくあります。気持ちを落ち着けて理性を取り戻すことは、仕事や学業、そして友達・家族・職場といったあらゆる人間関係において、とても重要なスキルです。しかし、場合によってはとても難しく感じられることもあるでしょう。そこで今回は、理性を失ってしまうとき、私たちの中で何が起きているのかを解説したいと思います。
感情的になってしまった後で、「なんであんな言動をとってしまっ
カウンセラーの本棚1<『生きるに値する人生を自分で作る:ある心理学者の自伝 (Building a Life Worth Living: a Memoir)』>
読書感想の第一回目となる今回、ご紹介する本のタイトルは『生きるに値する人生を自分で作る:ある心理学者の自伝 』(2020年)(拙訳、英題 ”Building a Life Worth Living: a Memoir” )です。こちらはアメリカで出版された本で、マーシャ・リーネハン(Marsha Linehan, 1943年生まれ)という著名な心理学者によって書かれました。彼女はDBT(Diale
もっとみる解釈を変えれば気分も変わる1<解釈は千差万別>
他者と話していて、ものの捉え方、感じ方の違いに驚いたことはないでしょうか。
私の場合、親しい友人との間に次のようなことがありました。
いつもとても勤勉な友人ですが、ある日疲れが溜まっていたのか始業時間から2時間も寝過ごしてしまいました。いつまでも出社しない友人を上司や同僚は心配し、同僚の一人が自宅まで様子を見に行くことに。友人はドアベルの音でやっと目を覚まし、同僚と共に出社をしたのでした。上司
なぜいつも同じような人を好きになる?3<親子関係で満たされなかった願望>
前回の記事では、知らず知らずのうちに親と似た特性を持つ人に惹かれてしまうことがあるということをご説明しました。今回の記事では、どうしてそのような現象が起きるのかをご説明します。
心理学では、親と似た雰囲気、性格の人と交際することにより、親との間では満たされなかった願望を叶えようとする傾向がある、と考えられています。
たとえば前回の記事でご紹介したG子さんの場合、お父様と交際中のH男さんは、批判
なぜいつも同じような人を好きになる?2<親と交際相手に類似点?!>
前回の記事では、G子さんはいつも同じようなモラハラ男を好きになりがち、ということに気が付きました。今回の記事では、G子さんがそうした好みのタイプを持つに至った背景について探ります。
G子さんのように子供の頃に親から罵倒されると、幼い子供は親を批判することができないため「全て自分が悪いんだ」と思ってしまうものです。
G子さんご本人としては、「父と似たタイプの男性なんてお断り」と思っていたのに、実