カウンセラーの本棚 3<アメリカの超人気カウンセラーによるベストセラー『不倫の現実』>
今回の記事では、アメリカでベストセラーとなった不倫に関する本をご紹介します。
この本は、前回の記事でご紹介したアメリカのカウンセラー、エスター・ペレル氏によって書かれ、大変話題になりました。タイトルは『不倫の現実: 浮気を再考する』(拙訳、原題 “ The State of Affairs: Rethinking Infidelity”)です。2017年に出版された本ですが、今でもアメリカの本屋では平積みになっていることがあるほど注目され続けています。
心理カウンセラーが書いた本ですが、社会学や文化人類学の視点も加えて不倫・浮気が考察されていてとても面白かったです。残念ながらまだ翻訳はされていないようなのですが、不倫・浮気を考える上でとても参考になったので紹介させていただきます。
この本の中で最も記憶に残ったのが次の一節です。
この言葉は、不倫・浮気はこれまで築き上げてきた関係性を一瞬で壊してしまうほど破壊力が大きく、もう元の関係には戻れないという厳しい現実を突きつけると同時に、そこからまた二人で新しい関係を築き上げていくことだって可能である、という希望も与えてくれる、大変奥の深い一節だと私は感じました。
私のクリニックでも、不倫や浮気に関して多くのご相談をいただきます。お互いに別れた方が幸せだということがはっきりしている場合もありますが、中にはお互いへの愛情は残っているけれど、浮気発覚による心の痛みでどうしたらよいか分からないという状態のカップルもいらっしゃいます。
後者の場合には、これから二人で新たな結婚を築いていくことができるのかを模索してみるのもよいと思います。それは簡単なことではありませんが、これまで私がお手伝いさせていただいたカップルの事例から、決して不可能なことではないと考えています。
そして信じられないことかもしれませんが、不倫・浮気後にお互いの関係を見直すことで、より良い関係が築かれる事例もみてきました。大学院在学中にこの本に出会った当時の私は、「そんなことって可能なの?」と思っていましたが、多くのクライアントさんたちのおかげで、私もご紹介したペレル氏の言葉の意味がよく分かるようになりました。
本書では他にもたくさんの興味深いトピックが扱われています。たとえば、なぜ不倫が起きるのか、不倫の事実をパートナーに打ち明けるか、といった点についてもペレル氏は独自の視点から深い考察をしています。
アメリカにおける心理学の世界では、不倫をしてしまう原因を、結婚生活に何か問題があるから、あるいはその人の自己肯定感の低さや、深い人間関係をおそれる心理的要因、幼少期に目の当たりにした両親の不幸せな結婚、セックス依存症、といった点から解釈する傾向にあります。
しかしペレル氏は自身が扱ってきた事例を通して、最高に幸せな結婚をしている場合や個人の心の問題がない場合にも不倫は起きる、という見解を示しています。
大変興味深い内容だったので、また機会があればブログで紹介したいと思います。
本書は こちらよりご購入いただけます。電子版でも出版されています。
※ 翻訳のご依頼はダイレクトメッセージにてお願いいたします。
長谷川由紀
☆おことわり☆
本ブログ内の記事は、精神科・心療内科等での治療を代替するものではありません。必要に応じて医師・心理カウンセラー等に直接ご相談ください。また本ブログの事例にて紹介されている人物や状況は、全て架空のものです。セッションを通して伺ったお話をブログにて公開することはありません。
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