ふみ

書いたことすべて、ノンフィクションから生まれた暮らす手段としての完全なるフィクション、…

ふみ

書いたことすべて、ノンフィクションから生まれた暮らす手段としての完全なるフィクション、的な。

記事一覧

気圧

自分の機嫌は自分でとる、とかいうけど、はっきり言って取れない。そんな高度なオナニーの技術を持ち合わせていない。明日は仕事だから、英語レッスンを今夜に振り替えたい…

ふみ
12日前
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Inside Head of Eros (A LONG DAY)

 人のこころ、ひとの脳みそのなかほど、わからないもの はありません。 以前、このnoteでも書いたのですが、わたし以外わたしでない、ということの残酷さに、ひとは孤独を…

ふみ
2週間前
10

みっちー

 一昨日実家のある街へプチ帰省して、娘とふたり、小さなカフェでお昼を食べた。娘はピザを注文し、私はポキ丼を頼んだ。注文を取りに来た高齢女性に、セットの飲み物はア…

ふみ
1か月前
8

いま

いま仕事のかえり、定時であがれたしご飯作ってきたからすこし離れた公園にいる。6時半もすぎた。いちばん大きな木の下の奥まったベンチに座りたいのだけれど、もう15分く…

ふみ
1か月前
13

八代亜紀が死んだ日

 2月のある日、八代亜紀が死んだことを退勤直前に知った。  その日は、日中、仕事で、書類の不備をつよめに指摘された。前向きに捉えようとするものの理不尽も感じ、こん…

ふみ
1か月前
10

オレンジのかわ

 今井美樹の曲にオレンジの河というのがありますが、あれは、さようならともだちではくるしいのほんきだったの、という歌詞が印象的な、昭和の名曲でした。私にとってのオ…

ふみ
1か月前
16

主語で異なる

 朝から、息子を駅まで送った。自転車で行けばよいのに、暑いからと送迎をせがまれた。休みだし、別にいいのだが、それにしてもなぜ彼は高校のジャージを着ているのか謎だ…

ふみ
1か月前
9

題名とかはない

気の重さ。ずっと深い底の方、川の流れも届かないくらいの超絶下のほうにある。ここ最近ずっとそう。水面は、いつもではないけれど、時にきらきらしたり楽しそうに波打った…

ふみ
1か月前
9

魂の仕返しについての短い会話

 昨日、子どもの用事から帰宅すると、洗濯ものはとりこまれたまま乱雑に積まれ、タイマーをセットした第二陣の洗濯機のなかみ(シーツ類)はそのまま、エアコンもつけず…

ふみ
1か月前
17

せかいの車窓から

 いまはまだお昼前。娘と、電車に乗っている。  行き先は美術館。もうまもなく終わってしまうある展示を、わたしがどうしても見たくて、娘を誘ってみたら行くというので…

ふみ
2か月前
10

ポエム・ザ・ひとり

ほんとうのなまえなんていわないままたのしいね、そんなのあたりまえだよ、きいたってわすれちゃう、うそのなまえでよんじゃうもんね、ただただたのしくてほんとうによかっ…

ふみ
2か月前
8

わたし以外わたしじゃないことのざんこくと、

 今週は本当に疲れ果てた。 私以外私じゃないこと由来の様々な問題が子供に起こって、彼自身それを痛いほど思い知っただろうし、私もまた、さいきん私に起こった似非色恋…

ふみ
2か月前
9

このお話は完全なるフィクションです。  中野良太は焼き肉屋のこどもであった。こどもといってももう高校三年生だった。そのころ、石田奏子は中野良太を知らなかった。石…

ふみ
2か月前
9

おとこのひとの知らない

その壱  上石神井の古いコンクリートのアパートだった。 黒い短髪、シベリアンハスキーを思わせる色のカラーコンタクト、 ネメスのデニムとシャツ、玄関にはマーチンのブ…

ふみ
3か月前
13

ママの声泣いてるみたいでむかつく

 土曜の夜、仕事を終え帰宅したとき、家族はみな夕食を食べ終えていた。 夫は、夕方、仕事中の私にLINEを送ってきて、「夜は○○のもつ鍋ということにしたい」と、千葉雅…

ふみ
3か月前
13

きらいのはじまり

「あっ、クッキーとか、買ってくればよかったね」 真夜中に、裸で抱き合っているときにおなかが鳴ったとて、そんなこと言う人、それまで一人も知らなかった。 「何か買って…

ふみ
3か月前
16
気圧

気圧

自分の機嫌は自分でとる、とかいうけど、はっきり言って取れない。そんな高度なオナニーの技術を持ち合わせていない。明日は仕事だから、英語レッスンを今夜に振り替えたいのに、誕生日を祝うって昨日いきなり言われて、断れない。おやすみをとって、すこし不在にしてたら、キッチンは片付けてあるようで生ゴミは捨てられていない。誰がこれを片付けるのか、誰かがやらなければ永遠にここにある、まーそのうちミイラになってかさか

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Inside Head of Eros (A LONG DAY)

Inside Head of Eros (A LONG DAY)

 人のこころ、ひとの脳みそのなかほど、わからないもの はありません。
以前、このnoteでも書いたのですが、わたし以外わたしでない、ということの残酷さに、ひとは孤独を感じ、わからなさやわかられなさにときに苦しむ。しかし、日常のなかでは、このわたし以外わたしでないおかげで、私が社会的わたしを保つことができている、ということも十分にあります。
 
 私は世の多くの人同様、とある会社で会社員として仕事を

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みっちー

みっちー

 一昨日実家のある街へプチ帰省して、娘とふたり、小さなカフェでお昼を食べた。娘はピザを注文し、私はポキ丼を頼んだ。注文を取りに来た高齢女性に、セットの飲み物はアイスコーヒーを食前にください、とおねがいしていた。
 料理を作っているのは同世代くらいの男性で、おそらくその注文を取りに来た高齢女性の息子、つまり二人は親子のようだった。そのことには娘も気づいていたようで、店を出た後、あの二人親子だよね、じ

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いま

いま

いま仕事のかえり、定時であがれたしご飯作ってきたからすこし離れた公園にいる。6時半もすぎた。いちばん大きな木の下の奥まったベンチに座りたいのだけれど、もう15分くらい、微動だにせずおじさんが座っていてずるい。たぶんあの席は蝉の鳴き声が頭に降り積もるくらい落ちてくるはず、いいなー、夕方の蝉の声は真夜中の雨音的で包まれたい。暗め重めの空に比して風が気持ち良い、どかないかなー、、と見てたら

おじさんが

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八代亜紀が死んだ日

八代亜紀が死んだ日

 2月のある日、八代亜紀が死んだことを退勤直前に知った。
 その日は、日中、仕事で、書類の不備をつよめに指摘された。前向きに捉えようとするものの理不尽も感じ、こんな統一されてないルールの中で全部に完璧な正解出せるかよ、とか思うけど、そういう仕事ではある。し、意識の問題でもある、ともおもう。その頃の私は、好きだったひとに急に去られて、というか私がぶん投げたせいなんだけと、それの影響で、それ以外のさま

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オレンジのかわ

オレンジのかわ

 今井美樹の曲にオレンジの河というのがありますが、あれは、さようならともだちではくるしいのほんきだったの、という歌詞が印象的な、昭和の名曲でした。私にとってのオレンジの河は、家からほど近いあの美しい川。朝に夕に遊歩道を歩けば、季節ごとの美しさ、空気の匂い、草花の生命力、晴天でも曇天でもそこにある空の広がりや、行き交う人々、休日の早朝は、土手を降りた水辺の際の石畳で、ソプラノでなにか歌うご婦人がいら

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主語で異なる

主語で異なる

 朝から、息子を駅まで送った。自転車で行けばよいのに、暑いからと送迎をせがまれた。休みだし、別にいいのだが、それにしてもなぜ彼は高校のジャージを着ているのか謎だった。「なんでジャージなの」と聞くと「予備校が寒いから」と言う。であればきみはスウェットとかカーディガンとかもっているじゃないか。まるで理由になっていない。
 「てか、高校生カルチャー的には、そういう休みの日に学校ジャージとか着ちゃうのって

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題名とかはない

気の重さ。ずっと深い底の方、川の流れも届かないくらいの超絶下のほうにある。ここ最近ずっとそう。水面は、いつもではないけれど、時にきらきらしたり楽しそうに波打ったりして跳ねる日もあり、それ以外の日は穏やかに流れているけれど、もう底の方は砂塵さえも動かないっす。重い、重い、ひとなんかみんなわかんない、わたしのこともよくわかんない、わたしをわかってると思ってるのかあほなのかからだが欲しいのか、まだ私のそ

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魂の仕返しについての短い会話

魂の仕返しについての短い会話

 昨日、子どもの用事から帰宅すると、洗濯ものはとりこまれたまま乱雑に積まれ、タイマーをセットした第二陣の洗濯機のなかみ(シーツ類)はそのまま、エアコンもつけず、自分が座るソファのまよこの掃き出しの窓だけを開けて、そこに扇風機を置いて自分に当てて何かのテレビを見ている夫がいた。おふろ、トイレ、玄関、どこを掃除するわけでもなく、ただただひたすらにひがなソファに座っている。そういう夫がいる休日の午後は

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せかいの車窓から

せかいの車窓から

 いまはまだお昼前。娘と、電車に乗っている。
 行き先は美術館。もうまもなく終わってしまうある展示を、わたしがどうしても見たくて、娘を誘ってみたら行くというので、一緒に出かけることにした。娘は小学生だが美術館は好きで、ひとり黙々と作品を見つめては納得したりじっと動かなくなっていたりしているので、わたしも遠慮なく誘えるというのがある。

 最寄り駅から上り電車に乗ると、途中、田園風景が広がる区間があ

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ポエム・ザ・ひとり

ポエム・ザ・ひとり

ほんとうのなまえなんていわないままたのしいね、そんなのあたりまえだよ、きいたってわすれちゃう、うそのなまえでよんじゃうもんね、ただただたのしくてほんとうによかったね、ただただたのしくてあーほんとによくて

かんがえてないでかんじなよそんなかんがえてないでかんじなよ、かんじかたはひとそれぞれだからねひとのかんじかたなんかしったことではないよ、はなしきいてくれてうれしいだけどわかったふりしないでね、は

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わたし以外わたしじゃないことのざんこくと、

わたし以外わたしじゃないことのざんこくと、

 今週は本当に疲れ果てた。
私以外私じゃないこと由来の様々な問題が子供に起こって、彼自身それを痛いほど思い知っただろうし、私もまた、さいきん私に起こった似非色恋些事を重ねて、他者のわからなさ、について深く考えた一週間だった。
 他人はわからない、という共通認識ならば、私たちはきっと皆ある程度もっているけれど、だからと言ってそのわからなさを、すんなり受け入れたり理解することはなかなかできるものではな

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謎

このお話は完全なるフィクションです。

 中野良太は焼き肉屋のこどもであった。こどもといってももう高校三年生だった。そのころ、石田奏子は中野良太を知らなかった。石田奏子は、中野良太とは、同じ地区にあるが違う高校に通っていたのである。
 ところが二人は、高校を卒業した後、共通の友人aを介して出会った。ともにお互いの高校や住まいや共通の友人や今の仕事や兄弟姉妹の有無くらいまでは、普通にしゃべった。お互

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おとこのひとの知らない

おとこのひとの知らない

その壱

 上石神井の古いコンクリートのアパートだった。
黒い短髪、シベリアンハスキーを思わせる色のカラーコンタクト、
ネメスのデニムとシャツ、玄関にはマーチンのブーツ。アキさん、と言ってもあき竹城ではない、のは、当たり前であるが、アキさんに振られたばかりのAのこのアパートで、なぜ私は今、Aとともに茹でたそうめんを食べているのか、ひどく謎であった。
 普段から、○○ちゃん、と私の苗字でAは私を呼ん

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ママの声泣いてるみたいでむかつく

ママの声泣いてるみたいでむかつく

 土曜の夜、仕事を終え帰宅したとき、家族はみな夕食を食べ終えていた。
夫は、夕方、仕事中の私にLINEを送ってきて、「夜は○○のもつ鍋ということにしたい」と、千葉雅也が「これを言語の非意味的形態と呼びたい」と言うときみたいな言い回しで伝えてきて、そのあと「買ってきた」と言うわけで、夜ご飯にもつ鍋が用意されていることはわかっていて、疲れてはいたけれども、私は機嫌が良かった。

 食べ始めて、ビールを

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きらいのはじまり

きらいのはじまり

「あっ、クッキーとか、買ってくればよかったね」
真夜中に、裸で抱き合っているときにおなかが鳴ったとて、そんなこと言う人、それまで一人も知らなかった。
「何か買ってきておけばよかったね、サンドイッチとか」ではなくて、深夜2時も回って、それもこんなに汗だくで夢中で、小さな夜の片隅に閉じこもって溺れかけているのに、クッキーだなんて。
夜のはじまりに、例えば明るいコンビニで、私のためにクッキーを選ぶとか、

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