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気持ちを代弁してくれているものもあれば、ただひたすらに読んで打ちひしがれたもののような。
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星野源の音楽と共約不可能性

星野源の音楽と共約不可能性

 科学哲学の分野には、「共約不可能性」という概念がある。もともとは、“いかなる整数比によっても表現することのできない量的関係”を表すための数学用語であったが、人文科学ではしばしば、この「共約不可能性(通約不可能性とも)」という用語が、別のパラダイムを背景に持つ他者との分かりあえなさや、他者理解、共感の限界を示す言葉として使われる。

 そして私は、“共約不可能”という事態について考えるとき、ふと、

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たとえば男が妊娠できるとして(妊娠9週/つわり)

たとえば男が妊娠できるとして(妊娠9週/つわり)

つわりがひどい時期にちょうど重なるようにして、夫の仕事が忙しくなった。帰りは0時を過ぎることが多く、ひとり静かな家では孤独と不安が苦しさを増長させる。気を紛らわす策として、映画や漫画を漁ってみたが、集中力が続かない。switchのソフトを買ってからは(ゼルダの伝説を買ったよ!)ある程度は気を紛らわすことに成功したものの、やはり限界があり、早く帰ってきて、と縋るような気持ちで夫の帰りを待ち侘びる日々

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【はじめに全文公開】佐渡島庸平氏が“羨ましい”とさえ思った、多様性の時代を最も象徴する、アイデアのつくり方

【はじめに全文公開】佐渡島庸平氏が“羨ましい”とさえ思った、多様性の時代を最も象徴する、アイデアのつくり方

『マイノリティデザイン
弱さを生かせる社会をつくろう』
澤田智洋(ライツ社)2021/3/3発売

「いい仕事をしたい」と願う、すべての人へ。
むなしさの頂点のようなこの時代に「マイノリティデザイン」という宝物のような考え方を、まずはひとりでも多くの人に届けたいと思い、本の中身がギュッと要約された「はじめに」を無料で全文公開いたします。興味を持っていただけましたら、お近くの書店やAmazonでお買

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違う話

違う話

数日前からシェアハウスに人が来ているのだけど、誤解を恐れずに、失礼を承知で言うと、めちゃくちゃ変わっている人だ。彼のこれまでの人生の生きづらさをどうしようもなく感じさせられて、多様性を受け容れられる社会って難しいなあと思う。

僕自身、久しぶりに違和と出会って、いろいろなことを感じた。もちろん僕が感じている彼の生きづらさは僕目線のものでしかなくて、彼の口から「生きづらい」に相当する言葉は一度も聞か

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その前向きな言葉が、誰かを傷つけることがある。

その前向きな言葉が、誰かを傷つけることがある。

やさしいって、むずい。

「山中さんはやさしいですね」なんてたまーに言われる。そんなことないっす! と思う。僕はやさしさってなんなのか、32年生きてきていまだによくわからないのだ。

たとえば。

人生に悩んでいたり、なにか病気にかかっていたりする人がいると、「元気だして!」「この経験には意味があるよ!」なんてつい言ってしまったりする。

でも、バラに棘があるみたいに、みかんの汁が目に入ると痛いみ

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世界一のブランドは、たぶん家族だ

世界一のブランドは、たぶん家族だ

これは、産声をあげたばかりのブランドと、家族の話です。

家ではただの兄貴なのに、一歩外にでると「障害者」という枠組みに兄貴は当てはめられる。血の通った親戚すらも「お前は兄貴の分まで一生懸命いきろよ」と語る。気持ち悪いくらいに可哀想バイアスがかかっている・・兄貴は不幸ではないのに。

「知的障害のイメージを変えよう」

重度の知的障害を伴う自閉症の兄・翔太がきっかけとなり、双子で決断した。兄のため

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読みやすい文章は「デザイン」が優れている

読みやすい文章は「デザイン」が優れている

 村上春樹さんや林真理子さん、糸井重里さん、『嫌われる勇気』の古賀史健さん。彼ら彼女らの文章は、スルスルと読める。とっても読みやすい。

 その「読みやすさ」の正体ってなんだろう? と考えてみる。

 読みやすい文章は、パッとその文章を見た瞬間に「読みやすそう!」と思える。これは「文章の中身」というよりも「デザイン」に近いのではないかと思う。

 漢字とひらがなのバランス、改行の位置、「(会話文)

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社長の隣に「編集者」を

社長の隣に「編集者」を

今回お伝えしたいことは、これです。

社長の隣に「編集者」を。

今年から力を入れているのが「顧問編集者」という仕事です。

企業には「顧問弁護士」「顧問税理士」などがいることが多いですが、ぼくはこれから経営者の隣に顧問としての「編集者」が必要なんじゃないかと思って始めた仕事です。

経営者は「未来をつくるクリエイター」ぼくは本の編集の仕事を主にやってきました。

いろんな著者・クリエイターの方と

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「喫茶ランドリー」はやっぱりヤバい?コロナで来客3名!?になっても開け続けたら…地域に開くってそういうことだよ、と教わりました。

「喫茶ランドリー」はやっぱりヤバい?コロナで来客3名!?になっても開け続けたら…地域に開くってそういうことだよ、と教わりました。

2018年1月5日にグランドオープンした「喫茶ランドリー」は、おかげさまで2年が経ち、3年目に突入しました。当時オープンしてまもなく書いた下の記事は、この2年間ずっと毎日誰かしかが読んでくださり、また、この記事をきかっけに全国各地からも来店してくださる方が絶えないので、本当に嬉しい限りです。

そして、ここをきっかけに喫茶ランドリーをつくり、運営しているグランドレベルという会社には、住宅や団地、マ

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「ウサギとカメ」の解釈から思うこと

「ウサギとカメ」の解釈から思うこと

「ゴールデンウィークは、母の実家である山形に行く」という暗黙のルールが明石家にはある。

母も姉も妹も(父は自由人なのでルール適応外)、どんなに私生活や仕事が忙しくてもゴールデンウィークの2日あるいは3日間は家族のために時間を作り、みんなで揃って祖父母に顔を見せに行く。

このルールは、私が生きている25年間、いまだかつて1度も破られたことがない。3姉妹が社会人になり実家を出て、家族の住む場所は京

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人を好きなことを軽々しく愛と言うな

人を好きなことを軽々しく愛と言うな

先日、長い間恋人ともセフレとも友達とも言えない関係だった男の、LINEとTwitterをブロックした。
なんともありきたりな話だ。友人には「ずっとセフレじゃん、って思ってたから良かったね」と軽く言われた。私も今となってはそう思う。少しずつ思い返す頻度が減っていっている。どんな声で私を呼んでいたか、とか、どんな体温だったかとか、細かい事が思い出せなくなっている。キスもセックスもなんだか気持ち悪いよう

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言葉で損をする人。

言葉で損をする人。

タイトルはそのまま私自身のことでもあるのですが、自覚・無自覚問わず使う言葉遣いが下手で他人とのコミュニケーションが上手く取れない人のことです。

ストレートに物を言い過ぎたり、人を傷つける言葉を使っては周囲から距離をおかれている。そんな人は周りに居ませんか?かくいう私は妻のおかげで年々丸くなり更生してきてはいるものの、まだまだ身内に甘えては失敗を重ねる日々を送っています。

「貴方は本当はすごくや

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旅の変わりに私の五感を起こしてくれる鍵を求めて #100枚で写す夏の日 を終えて

旅の変わりに私の五感を起こしてくれる鍵を求めて #100枚で写す夏の日 を終えて

底が見えるくらいの中途半端に高いところと、物凄く早口で喋る人。観たいアニメのない静かな夜に、田舎の暗闇に突然現れる自動販売機。空虚を見つめ続けるうちの猫。

生きている中で怖いものは沢山あるけれど、その中でわたしが最も恐れてることのひとつに、五感が死んでしまうことがある。
何を見ても何をしていても心が目が味覚が触れた指先が、決して熱をおびず、ただただ途方もない時間だけが横たわり、流れていく。

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「まわりの視線が怖い。」そんな生きづらさがあったからこそ、できることがある。-尚工藝代表・宮田尚幸さん-

「まわりの視線が怖い。」そんな生きづらさがあったからこそ、できることがある。-尚工藝代表・宮田尚幸さん-

「生きづらさを抱えていた僕でも、今こうして社会に関われている。生きづらさはかるくなる、ということを伝えたいんです。」

デザイナー・宮田尚幸さんとメールでやりとりするなかで、そんな言葉と出会った。

「生きづらさ」には、僕も心あたりがある。大学時代、人の視線がこわくて、就職活動はおろかバイトもできず、ニートになった。病院に行くと、「社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorde

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