天ノ

情けな人間の戯言など。 誰かの暇の、お供になりたい。

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記事一覧

唱え薬

多分、普通ならなんてこと無いこと。 そんなことに、恐怖や不安を、 無性に感じてしまうことがある。 そんな時、いつも頭の中で唱える言葉がある。 何度も唱えたせいで…

天ノ
2週間前
1

運の道

曲り角1つ違えば、 俺もあっち側にいたかも知れない。 キラキラした人を見ると、たまに思う。 人生は運だ。 ステージの上で輝く芸能人も、 何かしらの賞を受賞した芸術…

天ノ
1か月前
5

薄曇りの下で〔じいちゃん家〕

今日も、清々しくない平和な1日だ。 俺の人生は、今日も変わらず薄曇りだ。 いつものように学校に行き、授業を受けて、下校している。  が、今日は少し、いつもと違う。…

天ノ
2か月前
1

煌めきは小さき名探偵により運ばれた

『事実は小説よりも奇なり』 そんなことわざがあるけれど、 少なくとも、自分の人生には、 “小説よりも奇” はおろか、小説やドラマのような煌めきすらも起こったことが…

天ノ
3か月前
1

今回に限っては

「あー、どうしよう。」 noteを始めて1年数ヶ月。月1投稿を続けている。 が、書くことがない。 ネタに困らないような刺激的な人生ではないし、次から次に物語が溢れてく…

天ノ
4か月前
1

そんなこと

『そんなこと』 恵まれた環境にいる人間が愚痴をこぼすと、こう軽んじられることがある。 人間の傷は見えづらい。 恵まれた環境にいる人間はとくにだ。 傷は特で隠れる…

天ノ
5か月前
1

女の子は…

もう、何年も前のことだけど、 たまにふと思い出す光景がある。 リビングのテーブルの上で開いた鏡。 その鏡を丁寧に拭く姉の姿。 あまり几帳面ではなかった姉の意外な姿…

天ノ
6か月前
5

一日遅れの恋

「2月14日だね!」 「なんで毎年わくわくできんだよ。」 「毎年希望はあるから!」 この日のこいつのガッツポーズが、多分この世で1番虚しい。 「その希望叶ったことな…

天ノ
7か月前
1

出だし

「いや、違うじゃん!!」 4時間前。 「今日は3時からね」 その日のバイトのシフト確認から、 一日が始まる。 バイト先までは徒歩40分。 健康の為。 などではなく、 …

天ノ
8か月前
3

嫌われない為に。

優しくないんだから、優しいフリしよう。 良い奴じゃないんだから、良い奴のフリしよう。 上辺だけでも繕えばきっと、 心底嫌いになることはないから。 死ぬまでさよな…

天ノ
9か月前
1

金次郎

「え!マジじゃん!」 授業の準備の為、少し早めに訪れた昼休みの教室で浮かんだその声に、耳が傾いた。 「座ってんじゃん金次郎」 「うん、なんか違和感だよな。」 斜…

天ノ
10か月前
2

高嶺の花のユーモア

その日は、なんだか忙しかった。 (今日は高いアイスを食う!) そう決意したのは、勤務終了の数時間前だった。 勤務終了後、 帰宅途中にあるコンビニで、いつもは手を出…

天ノ
11か月前
1

日常に潜む恐怖

何年か前、 居酒屋でアルバイトをしていた時のこと。 帰宅は深夜になることも多かった。 あの日も多分、0時は回っていたと思う。 バイト先を出て、川沿いにある無料駐…

天ノ
1年前
2

可能性

noteをやり始めて半年。 お題にそって文章を書くのが楽しいと思い始めていたそんな時に見つけたお題。 『あの選択をしたから』 (選択か……) 文章に起こせるような思…

天ノ
1年前
3

どっちもどっち。……ではないか。

買い物をするために、とある店に訪れた。 訪れた店は3階建て、 各階で販売されている商品が異なる。 目的の品を1階で購入。 特に用はなくても、毎回各階見て回るので、 …

天ノ
1年前
1

煩悩親切

ある日のバイト帰り。 夜11時頃だろうか、いつも通る道に、夜間ボタン式の信号がある。 と言っても、俺の進行方向側は常に青なので、俺がボタンを押すことはない。 この日…

天ノ
1年前
5
唱え薬

唱え薬

多分、普通ならなんてこと無いこと。

そんなことに、恐怖や不安を、
無性に感じてしまうことがある。

そんな時、いつも頭の中で唱える言葉がある。

何度も唱えたせいで耐性が出来てしまったのか、端から自分に合っていないのか、
この言葉で、恐怖心や不安が消えることは、
ほとんど無い。

でもたまに、頭に広がる恐怖や不安を、薄めてくれることがある。
だから常備薬のように常に頭の中に置いている。

「恐怖

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運の道

運の道

曲り角1つ違えば、
俺もあっち側にいたかも知れない。

キラキラした人を見ると、たまに思う。

人生は運だ。

ステージの上で輝く芸能人も、
何かしらの賞を受賞した芸術家も、
ニュースで称えられているスポーツ選手も、

全部、偶然の産物だ。

たまたま才能があったとか、
偶然見出してくれる人と出会えたとか、

そんなところだろう。

『努力』

うん、そりゃあしただろう。

努力なくして栄光を掴め

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薄曇りの下で〔じいちゃん家〕

薄曇りの下で〔じいちゃん家〕

今日も、清々しくない平和な1日だ。
俺の人生は、今日も変わらず薄曇りだ。

いつものように学校に行き、授業を受けて、下校している。 

が、今日は少し、いつもと違う。

「あ、今日俺もこっち。」

「あぁ、じいちゃん家か。」

「うん。」

いつもは別れる分かれ道で、大輝と同じ方向に曲がった。

「毎週大変だな。」

「いや、別に大変ではないよ。じいちゃん好きだし。」

毎週金曜日、母からの命で祖

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煌めきは小さき名探偵により運ばれた

煌めきは小さき名探偵により運ばれた

『事実は小説よりも奇なり』

そんなことわざがあるけれど、
少なくとも、自分の人生には、
“小説よりも奇” はおろか、小説やドラマのような煌めきすらも起こったことがない。

多分、この先もそうだろう。

奇なる現象や、ドラマチックな煌めきが巻き起こるのはきっと、自ら動き、何かと関わることができる人間の人生だろう。

“面倒くさい” が、己の感情の最高位にいる自分の人生には、到底訪れることはないだろ

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今回に限っては

今回に限っては

「あー、どうしよう。」

noteを始めて1年数ヶ月。月1投稿を続けている。

が、書くことがない。

ネタに困らないような刺激的な人生ではないし、次から次に物語が溢れてくるような才能もない。ちょっと悲しくなるくらい平凡な人間。

それでも、世に何かを残してみたいと思うのだから、人間とは複雑だ。

「あー、もう今月やめちゃおうかな…」

(いや、ダメだ。今月やめたら来月もやめる。)

自分がそうい

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そんなこと

そんなこと

『そんなこと』

恵まれた環境にいる人間が愚痴をこぼすと、こう軽んじられることがある。

人間の傷は見えづらい。
恵まれた環境にいる人間はとくにだ。

傷は特で隠れる。
見た目がいいとか、実家が金持ちとか、

まあ実際、恵まれた環境にいれば、特をする事も多いのかもしれないし、他と比べたら、辛さや悲しみは少ないのかもしれない。

けど……

自分より辛い思いをしている人がいたら、
自分の辛さは軽くな

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女の子は…

女の子は…

もう、何年も前のことだけど、
たまにふと思い出す光景がある。

リビングのテーブルの上で開いた鏡。
その鏡を丁寧に拭く姉の姿。

あまり几帳面ではなかった姉の意外な姿に視線が向いた。

そんな視線に気づいてか、
ただ話したくなっただけなのか、
鏡を拭きながら姉が言った。

「鏡は自分の顔を映す物だから女の子は鏡を綺麗にしておきなさい。て、きいちゃんに言われたんだよね。」

“きいちゃん” 我が家で

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一日遅れの恋

一日遅れの恋

「2月14日だね!」

「なんで毎年わくわくできんだよ。」

「毎年希望はあるから!」
この日のこいつのガッツポーズが、多分この世で1番虚しい。

「その希望叶ったことないよね。」
携帯を片手に晃貴が冷やかした。

「今年はわかんないじゃん!」

「いや、大地は貰えないよ。」
すかさず俺も冷やかす。

「うん。貰えないね。」

「なんで?!」

「なんとなく」
晃貴とはこういう時、せーのと言わなく

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出だし

出だし

「いや、違うじゃん!!」

4時間前。

「今日は3時からね」

その日のバイトのシフト確認から、
一日が始まる。

バイト先までは徒歩40分。

健康の為。

などではなく、

ただただ乗り物の運転が苦手だからというだけで、徒歩通勤を選択している。

出勤時刻の1時間前に家を出る。

家を出るまで3時間弱。
はまっているスマホゲームに勤しむ。

外出1時間前。
スマホゲームを切り上げテレビをつけ

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嫌われない為に。

優しくないんだから、優しいフリしよう。

良い奴じゃないんだから、良い奴のフリしよう。

上辺だけでも繕えばきっと、
心底嫌いになることはないから。

死ぬまでさよならできない自分に嫌われんのが
多分一番しんどいから。

金次郎

「え!マジじゃん!」

授業の準備の為、少し早めに訪れた昼休みの教室で浮かんだその声に、耳が傾いた。

「座ってんじゃん金次郎」

「うん、なんか違和感だよな。」

斜め後ろから聞こえた二人の会話に、
少し前に目にしたニュースが浮かんだ。

「え?なんで座ってんの?」

「歩きながら本読むのは危ないて意見が挙がったらしいよ。」

「えぇ………」

「時代だよな。」

私もそう思った。

「え?いや

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高嶺の花のユーモア

その日は、なんだか忙しかった。

(今日は高いアイスを食う!)

そう決意したのは、勤務終了の数時間前だった。

勤務終了後、
帰宅途中にあるコンビニで、いつもは手を出さない300円を超えるアイスを買った。

アイス一本が箱に入っている。
さすが高級アイス。

コンビニの前で箱を開けながら、
少し、罪悪感が生まれた。

(さすがに贅沢過ぎたかな……)

いつもより忙しかったとはいえ、
300円を超

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日常に潜む恐怖

何年か前、
居酒屋でアルバイトをしていた時のこと。

帰宅は深夜になることも多かった。

あの日も多分、0時は回っていたと思う。

バイト先を出て、川沿いにある無料駐輪場に向かう。
無料なだけあって、駐輪していい所に、消えかかった白線の枠があるだけの粗雑なものだ。
自転車や、バイクも、雑多に置かれている。

ポツポツと街灯はあるが、薄暗い駐輪場。

人気はないが、駅前なので自転車やバイクの数はそれ

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可能性

noteをやり始めて半年。

お題にそって文章を書くのが楽しいと思い始めていたそんな時に見つけたお題。

『あの選択をしたから』

(選択か……)

文章に起こせるような思い入れのある選択をしたことがなかった。
なんとなくとか、ラクな方とか、そんな情けない選択ばかりしてきた。
自分で決めることすら億劫で、人に言われるがまました選択すらある。

(このお題はムリかな……)

そう思いながら、画面をス

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どっちもどっち。……ではないか。

買い物をするために、とある店に訪れた。

訪れた店は3階建て、
各階で販売されている商品が異なる。

目的の品を1階で購入。

特に用はなくても、毎回各階見て回るので、
階段を使って2階へ向かった。

特段狭い訳では無いが、広い訳でもない階段。
すれ違う時、相手にぶつからないよう、
多少気を使う程度の広さだ。

残り数段で2階に到着するという所まで来た
その時、

2階から見知らぬ女子二人組が、横

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煩悩親切

ある日のバイト帰り。
夜11時頃だろうか、いつも通る道に、夜間ボタン式の信号がある。
と言っても、俺の進行方向側は常に青なので、俺がボタンを押すことはない。

この日も、いつも通り青であることの確認だけして、3、4歩で渡りきれてしまう横断歩道を渡り、何事もなく帰るはずだった。

横断歩道に差し掛かる少し前、ふと、右斜め前に視線が向いた。
車が信号待ちをしていた。

(あー、ボタン式気づいてないんだ

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