天ノ

情けな人間の戯言など。 誰かの暇の、お供になりたい。

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最近の記事

そんなこと

『そんなこと』 恵まれた環境にいる人間が愚痴をこぼすと、こう軽んじられることがある。 人間の傷は見えづらい。 恵まれた環境にいる人間はとくにだ。 傷は特で隠れる。 見た目がいいとか、実家が金持ちとか、 まあ実際、恵まれた環境にいれば、特をする事も多いのかもしれないし、他と比べたら、辛さや悲しみは少ないのかもしれない。 けど…… 自分より辛い思いをしている人がいたら、 自分の辛さは軽くなるのだろうか? 自分より悲しい思いをした人がいたら、 自分の悲しみは薄くなるの

    • 女の子は…

      もう、何年も前のことだけど、 たまにふと思い出す光景がある。 リビングのテーブルの上で開いた鏡。 その鏡を丁寧に拭く姉の姿。 あまり几帳面ではなかった姉の意外な姿に視線が向いた。 そんな視線に気づいてか、 ただ話したくなっただけなのか、 鏡を拭きながら姉が言った。 「鏡は自分の顔を映す物だから女の子は鏡を綺麗にしておきなさい。て、きいちゃんに言われたんだよね。」 “きいちゃん” 我が家では祖母をそう呼んでいた。 あの時の姉が、なんだか嬉しそうで、 自分も少し、暖か

      • 一日遅れの恋

        「2月14日だね!」 「なんで毎年わくわくできんだよ。」 「毎年希望はあるから!」 この日のこいつのガッツポーズが、多分この世で1番虚しい。 「その希望叶ったことないよね。」 携帯を片手に晃貴が冷やかした。 「今年はわかんないじゃん!」 「いや、大地は貰えないよ。」 すかさず俺も冷やかす。 「うん。貰えないね。」 「なんで?!」 「なんとなく」 晃貴とはこういう時、せーのと言わなくても声が揃う。 「二人揃って言わないでよ……」 「晃貴は?今日彼女に会うの?

        • 出だし

          「いや、違うじゃん!!」 4時間前。 「今日は3時からね」 その日のバイトのシフト確認から、 一日が始まる。 バイト先までは徒歩40分。 健康の為。 などではなく、 ただただ乗り物の運転が苦手だからというだけで、徒歩通勤を選択している。 出勤時刻の1時間前に家を出る。 家を出るまで3時間弱。 はまっているスマホゲームに勤しむ。 外出1時間前。 スマホゲームを切り上げテレビをつける。 CSの音楽番組をザッピング。 好きな曲が流れると一人で熱唱。 生産性のな

        そんなこと

          嫌われない為に。

          優しくないんだから、優しいフリしよう。 良い奴じゃないんだから、良い奴のフリしよう。 上辺だけでも繕えばきっと、 心底嫌いになることはないから。 死ぬまでさよならできない自分に嫌われんのが 多分一番しんどいから。

          嫌われない為に。

          金次郎

          「え!マジじゃん!」 授業の準備の為、少し早めに訪れた昼休みの教室で浮かんだその声に、耳が傾いた。 「座ってんじゃん金次郎」 「うん、なんか違和感だよな。」 斜め後ろから聞こえた二人の会話に、 少し前に目にしたニュースが浮かんだ。 「え?なんで座ってんの?」 「歩きながら本読むのは危ないて意見が挙がったらしいよ。」 「えぇ………」 「時代だよな。」 私もそう思った。 「え?いや、金次郎てさ、働きながらそれでも勉学に励んだていうその心意気を買われて銅像になっ

          高嶺の花のユーモア

          その日は、なんだか忙しかった。 (今日は高いアイスを食う!) そう決意したのは、勤務終了の数時間前だった。 勤務終了後、 帰宅途中にあるコンビニで、いつもは手を出さない300円を超えるアイスを買った。 アイス一本が箱に入っている。 さすが高級アイス。 コンビニの前で箱を開けながら、 少し、罪悪感が生まれた。 (さすがに贅沢過ぎたかな……) いつもより忙しかったとはいえ、 300円を超えるアイスを食べるに値する働きが出来ていたのかどうかは、正直疑問だ。 300円

          高嶺の花のユーモア

          日常に潜む恐怖

          何年か前、 居酒屋でアルバイトをしていた時のこと。 帰宅は深夜になることも多かった。 あの日も多分、0時は回っていたと思う。 バイト先を出て、川沿いにある無料駐輪場に向かう。 無料なだけあって、駐輪していい所に、消えかかった白線の枠があるだけの粗雑なものだ。 自転車や、バイクも、雑多に置かれている。 ポツポツと街灯はあるが、薄暗い駐輪場。 人気はないが、駅前なので自転車やバイクの数はそれなりだ。 自分の自転車を、見失うことも多かった。 「あー、今日どこ停めたっけな

          日常に潜む恐怖

          可能性

          noteをやり始めて半年。 お題にそって文章を書くのが楽しいと思い始めていたそんな時に見つけたお題。 『あの選択をしたから』 (選択か……) 文章に起こせるような思い入れのある選択をしたことがなかった。 なんとなくとか、ラクな方とか、そんな情けない選択ばかりしてきた。 自分で決めることすら億劫で、人に言われるがまました選択すらある。 (このお題はムリかな……) そう思いながら、画面をスクロールしていくと コンテスト開催の背景の中の一文に手が止まった。 “人は、い

          どっちもどっち。……ではないか。

          買い物をするために、とある店に訪れた。 訪れた店は3階建て、 各階で販売されている商品が異なる。 目的の品を1階で購入。 特に用はなくても、毎回各階見て回るので、 階段を使って2階へ向かった。 特段狭い訳では無いが、広い訳でもない階段。 すれ違う時、相手にぶつからないよう、 多少気を使う程度の広さだ。 残り数段で2階に到着するという所まで来た その時、 2階から見知らぬ女子二人組が、横並びで降りてきた。 (あ、やべ、どうしよう……) いい歳して階段で人と鉢合わ

          どっちもどっち。……ではないか。

          煩悩親切

          ある日のバイト帰り。 夜11時頃だろうか、いつも通る道に、夜間ボタン式の信号がある。 と言っても、俺の進行方向側は常に青なので、俺がボタンを押すことはない。 この日も、いつも通り青であることの確認だけして、3、4歩で渡りきれてしまう横断歩道を渡り、何事もなく帰るはずだった。 横断歩道に差し掛かる少し前、ふと、右斜め前に視線が向いた。 車が信号待ちをしていた。 (あー、ボタン式気づいてないんだな……) ここの信号は車両用と歩行者用に分かれていない。その為、ボタンを押さな

          煩悩親切

          薄曇りの下で

          人生は度々空に例えられる。 晴れ渡る空のようにとか、止まない雨はないとか それで言うと、俺の人生は薄曇りというところだろう。 晴れ渡ってはいないけど、止むのが心配になるような雨も降っていない。 清々しく輝いてはいないけど、わりと平和に過ごせるそんな空。そんな清々しくない平和な人生を17年と数ヶ月過ごしてきた。きっと幸運なことだ。 まぁ、晴れ渡った人生に憧れがないわけではないけど、そんな物語の主人公のような人生が自分に訪れないことは、十代も後半になれば分かってくる。 「なあ!

          薄曇りの下で

          二十代も後半だというのに‥‥

          休日の夕方。 昨日の夜、バイト帰りに近所のコンビニで見かけて買わなかったアイスが無性に食べたくなった。 こんな時のための貯金箱から、小銭で2000円ちょっとをポケットに突っ込んで出かけた。 (ついでに夕飯用のおにぎりも買お。) コンビニについて、目当てのアイスとおにぎりなどをカゴに入れ、レジへ。 3つ選んだおにぎりのうち、1つはエコ割のシールが貼ってあるものにした。 これで少しは、社会貢献が出来た。 レジで店員さんがバーコードを読み取っていく。 表示される金額に

          二十代も後半だというのに‥‥

          無傷がイタい。

          自分を大事にし過ぎて、甘やかし続けた結果、 最弱人間になった。 弱いから戦わないし、 戦わないことに言い訳もする。 弱いからただ歩くだけでも疲れるし、 止まることも増える。 そのうち進む方向さえも分からなくなって、 座り込んで、顔を伏せた。 傷なんてどこにもないのに、傷ついたみたいな顔をして、動かないことを正当化している。 顔を上げられなくなったのは、 そのズルさがバレるのが怖いからだろう。 弱くてもいい。そう思っているはずなのに、 どうしても、誤魔化すことをやめ

          無傷がイタい。

          見るべきものは。

          誰かに差し出された言葉で、 苦しくなることがある。 でも、 大抵の場合、その誰かにそんなつもりはきっとない。 言葉は厄介で、同じ言葉でも受け取り手によって意味が変わったりする。 悪意のない言葉に、自分で悪意を持たせてしまうこともあるだろう。 だからきっと、言葉そのものより、 その言葉を差し出した人のことを見ないといけないんだと思う。 その言葉が自分にとっては苦しいもので、受け取ることができなかったとしても、 差し出した相手は、別に苦しさを押し付けたかったわけじゃないと

          見るべきものは。

          その始まりは。

          相手のことを分かってると思った時点で、分からなくなってると思う。 分からないから分かろうとするし、 分かりたいと思う相手だから優しくできる。 分かった気になると、きっと分かろうとすることをやめてしまう。 分かろうとしてないことが分かるわけないから 「分かった」は、多分 「分からない」の始まりなんだと思う。

          その始まりは。