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悠冴紀/小説家・詩人
2021年8月4日 12:04
作:悠冴紀答えなどはじめからどこにも存在しない誰かの導き出した明確な答えは他の誰かにとっての問いとなる私にも誰にも答えようがないその時どきに見出す小刻みの持論ならすでに幾度となく言葉にしてきた年月を経てそれら全てが問いに帰するだから朽ちない循環により生を得る終局を迎え 落ちた木の葉は残像だけをおいて土にかえる土を踏みしめる誰かが樹を見上げるときそこに
2020年2月29日 08:38
作:悠冴紀雪を見るたび 私はいつも何故だか君を 思い出す君の喪失は受け入れない受け入れられるわけがないだがこの悲しみは引き受けるあえていつまでも悼み続ける忘れるつもりなど更々ない君との日々も その別離さえもたとえそれが楽な道でも私は決して忘れない君の記憶は心の宝悲しみの深さはその大きさの証失うに堪えない関係があること自体恵まれている証拠なのだと
2020年3月18日 19:27
作:悠冴紀底知れぬダークブルーの海の中からゆらりと立ち現れるペールグレーの刃物隙のない冷ややかな眼差しで静かに鋭く 水を斬る鮫は笑わない何者にも靡くことなくどこにも馴染むことなくギラリと横切り 去っていくその研ぎ澄まされた姿を変えぬまま何億年もの間 君臨し続けてきた鮫は語らない群れを集うことなく通じ合うことなく音もなく忍び寄る 闇夜のハンター決してすべ
2020年1月19日 21:12
作:悠冴紀雪が降り積もる枝から舞い落ちた枯れ葉の上にすべてを無に返す 白い雪がこの終わりは旅の始まり束の間の平穏に中断された忘れかけていた歩みの再開遠くへ行くよ本来の私に相応しい彼方どこでもない枠組みの外側へ築き上げたものを 自ら打ち壊しあるべき道のため 初期化するそうして何度も 再生してきた接した人々の瞳の中で私の背中が消えていく白く不透明な霧の彼方
2019年9月19日 23:01
作:悠冴紀ユグドラシルの根に湧くミーミルの泉にゆらりと蒼白い月明かりが浮かぶ君は私の月だった君の言葉と視線は私を映し出す水鏡誰もに見放され厭われていた私とは違い君は輝かしい前途を期待された才ある者何故こんな私が残り君のような人が去らねばならなかったのか……かつて私は君を目指して走っていた君の背中だけを一心に見つめ君の賞賛を何よりもの励みとしいつまでも追いかけて
2019年11月27日 08:06
作:悠冴紀蒼白い雪を被った鋭い針葉樹林を私は手探りで駆けていくどこから来たのかどこに向かっていたのか時折わからなくなる自分がいる今はそれでも走るほかない凍てついた樹海の奥から狼たちの遠吠えが聞こえてくるあれは血に飢えた冬の捕食者かつての私に 似た奴らだ目印もない雪原の中私には君だけが道標だった君の雪山に語りかけ木霊する声の反響で己の立ち位置を知ることが
2020年1月31日 08:08
作:悠冴紀傷を秘めてきた君に贈りたいものがある心の一端を見せてくれたお礼にオーロラを贈ろうそう、夜の終わりを告げるあの謎めいた曙の光だ虹ほど馴染みやすくはないけれど恐れる必要は少しもないあれは空の贈り物そして夜を耐えた者の中に色彩豊かに宿るもの冬が過ぎても 見ることはできる君が自身の力を信じ心の空を照らし出せば私は彩り方を教えよう言葉ではなく 在り方で
2020年5月9日 13:42
作:悠冴紀空が泣いている深く深く傷を負った空が黒い涙を頭上から散らし夜の大地に染みていく雨が降る見える者にのみ見える泥づいた黒さで鋭い雨が降りしきる警告のように 罰のように汚れた大地を打ち付けて何が空を切り裂いたのか……昨日の不実か 明日の残酷さか知っていたはずだ我々は証人忘れてはならない加担した雨が見える黒ずんだ雨が空は不気味に赤黒く濁り
2020年3月28日 11:44
作:悠冴紀人類の繁栄と 夢の果て止め処ない人口爆発とグローバル化広がるところまで広がればいずれ自壊して収縮の時を迎える目に見えていたはずのことこれはいわゆる揺り戻しだよもやこんな形でとは知り得なかったが予感と覚悟は常にあったこれ以上はないところまで伸びきった末文字通りに弾けてしまったのだこれもおそらく自然現象の一つヒト科の動物『ヒト』が猛威をふるい汚染し続け
2019年9月9日 22:41
作:悠冴紀真実とはただそこにあるもの誰も守りはしないし誰の味方もしないそう先人たちの言葉通り真実とは残酷なものだが知りたくなかったとは思わないそれらは明日の礎になるいつでも私に知恵をくれた人間の判断を狂わせるのは期待通りの優しい嘘想定外の残酷な真実は人を突き放しつつも 成長させる向き合えない者はデタラメに堕ちいつの日か手にした全てがニセモノだと知るだろ
2019年9月13日 08:09
作:悠冴紀音もなく降りしきる霧雨に 大気が霞み近くにあるものさえ 遠く感じる世界があなたを 失ったからだろうかあなたを想う人の数だけ止まってしまった時計があるあなたが旅立ったあとも時間は無慈悲に流れ続け何事もなかったかのように多くの人々を押し流していくけれど あなたを愛した人たちは彼等の中の時間を止めるあなたをこれからも想い続けるためその余韻を少しでも長く続かせる
2020年1月11日 19:37
作:悠冴紀木々がざわめき雲が不安定に闇夜を漂う試されているのは君か? 私か?この闘いに 敵はいない明確な目標になるような 人間の敵は実体のない幽霊を相手にしているかのようある日突然襲い掛かり姿も見せずに蝕んでいく数えて何度目の試練だろうこれまでで一番危うい気がする明日を脅かす類いのやつだいつかのように知恵を絞って策を講じることも技を磨いて力を身に付けるこ
2020年2月19日 19:09
作:悠冴紀「おかえり」その響きに対する憧れはなかった今も変わらず 昔から長い間 ずっと帰りたい家がなかったためかそれを寂しいと 感じたためしもない「おかえり」その一言を聞いて抱くのは違和感のみだった自覚はある醒めた人間だ無い物ねだりの甘い期待に縋るほどロマンチストになどなれなかったいかにも自分らしいとつくづく思う誰も帰りを待たない自由を愛し清々しい充実
2019年12月6日 09:08
作:悠冴紀深すぎる傷跡凍てつく大地に刻み込まれた底知れぬ裂け目こんなにも深部に達していながらもはや血も出ないほど時を刻んだのか……遠い記憶に実感はなくただただ知識として残るばかりだがそれが今ではコアを成す地中に食い込む 深いクレバス血は凍結して色素をなくしもはや涙も出てこない癒えたわけではない傷は今も大きく開いたまま雪解けを知らぬ冷徹さでむしろ克明に形を留