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壮大な人類史をはかるメジャー『計測の科学』/ジェームズ・ヴィンセント

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です。

 今回は、私たちの生活を支える「測る」という行為の知られざる物語について紹介したいと思います!

 昔読んだ本に、主人公のKという測量士が目的地の城に永遠に辿り着けないという物語がありましたが、この本はしっかりとゴールが定められているので安心して読むことができますよ。笑
 
 というわけで、今回ピックアップする1冊は……、
 ジェームズ・ヴィンセント『計測の科学ーー人類が生み出した福音と災厄』です。

 古代から現代まで、人類がどのように世界を「測る」ことで発展してきたのか、その驚くべき歴史を紐解くノンフィクションです!

 本書では、以下のような内容が扱われています。
 それでは詳しく、見ていきましょう。

  • 計測の歴史 古代から現代まで、人類が様々なものをどのように計測してきたのか、その歴史を紐解いていく。長さ、重さ、時間といった基本的な単位の成り立ちや、温度、IQ、幸福度など、抽象的な概念を数値化する試みについて解説

  • 計測が社会に与えた影響 計測は、科学技術の発展や社会の進歩に貢献する一方で、格差や差別を生み出す要因にもなっていると指摘。優生学や標準化といった負の側面にも目を向け、計測が社会に与える光と影(計測の功罪)を浮き彫りにする

  • 現代社会における計測の課題 現代社会では、ビッグデータやアルゴリズムによって、私たちの行動や思考がますます数値化されると予測。事態に対し警鐘を鳴らし、計測とどのように向き合っていくべきかを問いかける

 ジェームズ・ヴィンセントは、イギリスのジャーナリストであり、本書が初めて上梓された本だそうです。

 たしかに、計る/測るという行為は、人類の文明の発展と密接に結びついていますよね。
 この本をより理解するために、計測の歴史をざっと概観していきましょう!

計測の歴史(著者まとめ)

古代

  • 身体尺 人間の身体の一部(指、掌、腕、足など)を基準とした長さの単位が使われた

  • 自然物 太陽や月の動きを基準とした時間の単位や、穀物の量を基準とした重さの単位などが用いられた

  • 文明の発展 エジプトやメソポタミアなどの古代文明では、ピラミッド建設や灌漑事業など大規模な計画のため、より正確な計測が必要となり、測量技術や標準化された単位が生まれた

中世

  • 地域差 ヨーロッパでは、地域ごとに様々な単位が使われ、統一されていなかった

  • 科学の発展 ルネサンス期以降、科学の発展に伴い、より正確な計測が求められるようなったという。例えば、ガリレオ・ガリレイが振り子の等時性を利用した時間計測法を開発する等

近代

  • メートル法 フランス革命後、世界共通の単位系としてメートル法が制定される。これは長さ、重さ、体積などの基本単位を定め、10進法に基づいた体系的な単位といえる

  • 産業革命 産業革命により、機械の製造や貿易の拡大が進み、標準化された単位の重要が増した

  • 科学技術の進歩 電磁気学や熱力学などの発展に伴い、電流、電圧、温度などの新しい物理量の計測技術が開発された

現代

  • 国際単位系 (SI) メートル法を基礎として、より精密で体系的な国際単位系(SI)が確立された

  • 高度な計測技術 レーザーや原子時計など、極めて高精度な計測技術が開発され、科学研究や産業に応用されていく

  • 情報化社会 コンピュータの発展により、膨大なデータを高速かつ正確に計測・処理できるようになった

計測の未来

  • 量子技術 量子力学に基づいた新しい計測技術が開発され、従来の限界を超える精度や感度を実現するという

  • AIと計測 人工知能(AI)を活用した計測技術の進歩により、複雑な現象の解析や予測が可能になるという

 計測の歴史は、人類が自然現象を理解し、社会を発展させていく上で欠かせないものでした。今後も、新しい計測技術の開発が、科学技術の進歩や社会の発展に大きく貢献していくでしょう!

 つづきまして、詳細な内容というか……、
 私が個人的に面白いと感じたポイントをご紹介します。


面白いポイント

1. 測定の起源と進化

  • 古代文明における身体尺や自然現象に基づいた測定から、メートル法のような普遍的な単位の確立まで、測定の歴史を詳細に解説している

  • 時間の測定方法の進化、天体観測から原子時計まで、技術の進歩と社会への影響を明らかにしている

  • 重さや体積、温度など、様々な物理量の測定方法の発展と、それらが科学や産業に与えた影響を分析している

2. 測定と社会:

  • 標準化された測定単位の導入が、貿易や産業の発展に不可欠であったことを歴史と科学の根拠をもって解説している

  • 地図作成や航海における測定技術の重要性、大航海時代や帝国主義との関連を精緻に分析している

  • 統計学の発展と社会調査における測定の役割、国家や社会の管理における影響を考察している

3. 現代社会における測定:

  • ビッグデータや人工知能の発展により、膨大なデータの測定と分析が可能になった現代社会における測定の新たな側面を提示している

  • 環境問題や健康問題など、現代社会が直面する課題解決における測定の重要性を強調する

  • 測定技術の進歩が、社会の監視や統制に利用される可能性、倫理的な問題についても考察している

4. 測定の本質と未来:

  • 測定は客観的な行為ではなく、常に社会的な文脈や価値観に影響されることを指摘している

  • 測定対象の選択や測定方法によって、結果や解釈が大きく変わる可能性を提示する

  • 未来の測定技術が、社会や人間の理解にどのような影響を与えるかについて展望する(その考察がこれからの未来にまで伸長する)

感想

良かった点

  • 身近なテーマを掘り下げた視点 わたしが日常生活において意識することのなかった「計測」という行為が、歴史、文化、社会、科学など、多岐にわたる分野に深く根ざしていることを明らかにし、新たな視点を与えてくれました

  • 豊富なエピソードと歴史的背景 古代文明における身体尺から現代の量子技術まで、幅広い時代と地域における計測の歴史を、豊富なエピソードや具体的な事例を交えながら解説しており、最後のページまで飽きさせない内容でした

  • 科学技術と社会の関わり 計測技術の発展が、社会の進歩や人間の認識にどのような影響を与えてきたのか、また、現代社会における計測の課題や倫理的な問題点についても考察しており、日常に照らし合わせながら考えさせられる内容でした

気になった点

  • 専門用語や概念の説明 一部の章では、科学的な専門用語や概念が多く登場するため、専門知識がない読者にとっては少し難解に感じる部分があるかもしれません。わからない部分は何度か日国を引きました。

  • 物語としての流れ 時系列に沿って歴史を解説するだけでなく、テーマごとに章が分かれているため、物語としての流れがやや掴みにくい印象を受けました。ただし、時系列にするとテーマがわかりづらくなり、内容も年表化してしまうという問題もあるので、これはこれでよかったのかも……?

こんな人におすすめ!

  • 歴史好き、科学好きはもちろん、世界の裏側を謀りたいあなたに!

  • 日常に潜む困難な事態を深く理解し、その解決策を図りたいあなたに!

  • AI時代を生きる私たちの未来を測りたいあなたに!

 この本は、書店によくある科学教本ではなく、歴史、社会学、哲学など、多岐にわたる分野の知識を織り交ぜながら、「計測」という行為の奥深さを探求した作品です。

 計測が私たちの生活に深く根ざしていることを再認識させられるとともに、その功罪について考えさせられる1冊となっています。

 さあ、あなたも「測る」という行為の奥深さに触れてみませんか?

 数値の背後にある人類の物語を体感してください。
 どんなメジャーでも、はかりきれない壮大なスケールが
この本に凝縮されています!

【編集後記】
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