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一流ブランドを「着る」ではなく「読む」。ブルネロ・クチネリ『人間主義的経営』

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 皆さんは、ブルネロ・クチネリというファッションブランドを知っていますか? 有名なイタリアの高級ブランドで、銀座三越や新宿伊勢丹等で見かけた方も多いのではないでしょうか。
 
 かなりのハイブランドであるため、私は袖を通したこともなければ、店に入る勇気もないのですが、この本を読んで買ってみたくなりました。
 ブルネロ・クチネリの創る服がなぜ高いのか?
 その理由も、この記事や本を読めばわかるとおもいます。


人間中心の経営哲学:ブルネロ・クチネリの「人間主義的経営」

 経済成長が優先される現代社会において、イタリアの高級アパレルブランド「ブルネロ・クチネリ」は、一線を画す経営哲学を掲げています。それは、ブルネロ・クチネリによって書かれた『人間主義的経営』です。この経営モデルは、経済的利益の追求だけでなく、人間の尊厳、自然との調和、そして従業員の幸福を重視し、持続可能な社会の実現を目指しています。

ブルネロ・クチネリ:人間主義的経営を体現する企業

ブルネロ・クチネリ氏は、イタリア・ウンブリア州の美しい丘陵地帯に広がる中世の村ソロメオを拠点に、世界最高峰のカシミヤ製品を生み出す企業を築き上げました。彼は、単なるファッションデザイナーではなく、哲学者、企業家、そして慈善家としての顔も持ち、その多岐にわたる活動を通じて、人間主義的経営を体現しています。


人間主義的経営の5つの柱

人間主義的経営は、以下の5つの主要な特徴によって支えられています。

  1. 人間の尊厳の尊重 従業員を単なる労働力としてではなく、それぞれが持つ個性や能力を尊重し、彼らが仕事を通じて自己実現できるような環境を提供することを目指す

  2. 自然との調和 自然環境への配慮を経営の根幹に据え、環境負荷を最小限に抑えた持続可能な生産活動を行う

  3. 従業員の幸福 労働時間や賃金だけでなく、ワークライフバランスの確保や自己成長の機会を提供することで、従業員の幸福度を高めることを重視する

  4. 地域社会への貢献 地域社会の一員としての責任を果たし、文化や伝統の継承、雇用創出、社会貢献活動などを通じて、地域社会の発展に貢献する

  5. 長期的な視点 短期的な利益追求に偏ることなく、長期的な企業価値の向上を目指し、持続可能な経営を追求する

ブルネロ・クチネリの具体的な実践

 クチネリは、この人間主義的経営の理念を、様々な具体的な取り組みを通じて実践しています。

  • 従業員のための快適な職場環境 自然光が降り注ぐ明るい工場、充実した休憩スペース、オーガニック食材を使用した食堂など、従業員が心身ともに健康で、創造性を発揮できる環境を整備する

  • 労働時間の短縮とワークライフバランス 週35時間労働制を導入し、従業員が仕事以外の時間も大切にできるよう配慮する

  • 従業員の成長を支援する教育プログラム 語学やクラフトマンシップに関する研修プログラムを提供し、従業員のスキルアップを支援する

  • 地域文化の振興 地元の伝統的な手工芸技術を保護・継承し、地域文化の振興に貢献うる

  • 環境保護活動への積極的な取り組み 再生可能エネルギーの利用、廃棄物の削減、環境に配慮した素材の使用など、環境保護活動に積極的に取り組む

人間主義的経営の意義

「人間主義的経営」は、現代社会における様々な課題に対するひとつの解決策となり得ます。グローバル化やデジタル化が進む中、人間疎外や環境破壊などの問題が深刻化している現代社会。このような状況下で「人間主義的経営」は、企業が社会の一員としての責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するための重要な手段と言えるでしょう。

「人間主義的経営」は、ブルネロ・クチネリの経営哲学を基盤としつつ、現代社会の課題や企業の持続可能性を考慮した、包括的な経営アプローチと言えるでしょう。

人間主義的経営のさらなる深化

 クチネリは、人間主義的経営の理念をさらに発展させ、従業員エンゲージメントの向上、環境への配慮、地域社会との共生、そして長期的な企業価値の向上に積極的に取り組んでいます。

 従業員エンゲージメントの向上のために、個人の尊重と成長、多様性の尊重、オープンなコミュニケーションを重視しています。
 加えて環境への配慮として、持続可能な素材の調達、再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減とリサイクルに取り組んでいます。
 また、地域社会との共生を目指し、地域経済への貢献、社会貢献活動、ステークホルダーとの対話を重視しています。
 そして、長期的な企業価値の向上のために、ブランド価値の向上、イノベーションの促進、人材育成への投資を継続しています。

人間主義的経営の未来

「人間主義的経営」は、理想的な経営モデルとして注目されていますが、その実践にはいくつかの課題も存在します。例えば、短期的な利益とのバランス、定量的な評価の難しさ、経営者のリーダーシップなどが挙げられます。

 しかし、これらの課題を克服し「人間主義的経営」を実践する企業が増えることで、経済的成功と社会的責任の両立が可能となり、より持続可能で人間らしい社会の実現に近づくことができると期待されています。

 そのような観点からも「人間主義的経営」は、現代社会において経済的成功と人間的な価値の両立を目指す、まさに理想的な経営モデルと言えるでしょう。特に、従業員の幸福を重視し、自然との調和を図りながら、地域社会に貢献するという考え方は、これからの企業が目指すべき方向性を示しているように感じました。
 コストパフォーマンスを追求する日本のファッション・ブランドとは相反する理念を掲げていますね。「コム・デ・ギャルソン」の川久保玲が低価格衣料に対する批判を行い、侃々諤々の論争になったことは記憶に新しいと思います。一方、同時期にスタートした「UNITED TOKYO」は原価率50%以上の完全国内生産を謳い大ヒットを飛ばしました。

 その背景には第三世界の人間を低賃金で雇用し、安価な労働力で大量生産が行われているというグローバリゼーションに対する批判があったように思います。
 かくいう私は本にのみお金をかけ、ユニクロばかり着ていますが、この本を読んで仕事に対する考え方だけでなく、着るものについても見直していこうと深く考えさせられた次第です……。

 ぜひ、あなたも本書を通じて、服選びや仕事に対する新しい視点を手に入れてみませんか?

高級ファッションの裏側にひそむ哲学! 
ブルネロ・クチネリから人間的主義的経営を学び、
日常の選択をより意味のあるものに変えてみよう!

【編集後記】
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