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記事一覧
(短編小説)昼下がりの男たち
6月の土曜日の昼前のことだった。
妻が突然「お腹が痛い」と訴え、ダイニングテーブルに掴まりながらしゃがみこみ、唸り声を漏らすと、しまいに蹲ってしまった。救急車は近所に迷惑掛けるから嫌だと言うので、僕の車で一番近い総合病院に連れていった。
痛みが強いので救急で診てもらった。血液検査のあとにCTも撮ったりと、検査結果が分かるまで3時間以上掛かった。痛みの原因は胆管に石が詰まっていた胆嚢炎だっ
ボツノート(噂)(もの食う話)
今回のボツは小説でもどうぞの「噂」と「もの食う話」です。
これはどちらも一作しか送れなかった。
ボツ作品⑧「越後屋騒動」
町の交流場だった中華ラーメン屋の『越後屋』が今月末で店を閉めるという。その噂を聞いた町民はみなショックを受け口々に「寂しい」と嘆いた。
創業五十四年。鶏ガラスープのあっさりした醤油味。昔から変わらぬラーメンが評判の人気店で、二十席の椅子はいつも客で埋まっていた。
(短編小説)カジイさん
「あのね、今日からしばらく知り合いの人が一緒に住むことになったから。カジイさんっていうの。いい人だから祐介も仲良くしてね」
学童に迎えに来たママが車の中で言った。初めて聞く名前だった。
「誰それ」
「お友達よ。男の人」
運転する横顔が綻ぶ。僕はママの機嫌のバロメーターを計るプロだから、今日はかなりいいとすぐ分かる。ただのお迎えなのに花柄のワンピースなんか着ているのがその証拠だ。
家に帰ると、
(短編小説)世界一の美女
『○月○日 世界一の美女来たる!』
ある日、こんなポスターが町の至る所に貼られた。キャッチコピーの横には、美女らしき女性のシルエットが浮かび上がっている。ウェーブした長い髪に細身のスタイル。それはまさに美女を思わせる横顔で、町の男たちはポスターの前に群がって、どんな美女が来るのかと口々に言い合った。
「あの女優みたいな美女じゃないか?」
「いやいや美女と言えば最近よくCMに出て
(短編小説)現代っ子
ある夜のこと。
歯磨きを終えたケンタ君が自分の部屋に戻り
ベッドに座った時、どこからか優しい声がしました。
「ケンタ君、ケンちゃん」
聞き覚えのある声。ケンタ君は辺りを見回しました。
「誰?もしかして…ママ?」
すると、ベッドの横に白い影がボヤーンと浮かび、みるみる輪郭をなして
人の形がはっきりと現れたのです。
それはケンタ君のママでした。にっこりと微笑んでいました。
「やっぱりママ
(短編小説) 三本足のルル
ここから見える岬は自殺の名所で、毎年数十人が死を求めてやってくる。
だいたいみんな明るい時間に下見に来て、夕方ぐらいに一度淵に立って決意を確かめる。ひとけがなければそのまま飛び降りてしまう者もいるが、何かを見つけて踏みとどまることも少なくない。その何かは人それぞれだ。
落ちてゆく夕日が海に溶けてく風景の美しさに心を打たれ、もう一度頑張ろうと奮起したり、ふと取り出した携帯電話の中にかけがえのない