バンコクでの回想(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・カンボジア 番外編)

※この小説は、秋さんの次の3作品を受け継いだものとなります。従いまして先にそちらを読んだうえで、こちらを読むことをおすすめします。

カンボジアのプノンペンから陸路をバスに乗り、途中国境の街で一泊した後、タイのバンコクに到着。

ミニバスを降りて、情報もないまま目の前に見えるBTSという名のモノレール。高架になっている駅を見つけたのでそこに向かった。

さて。どこに行ってよいのかわからないまま、路

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Cảm ơn bạn "Ski"「スキ」ありがとうございます
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技術者たちの(ディ)スタンス(3)

## その3

 終業のチャイムがなった。咲舞はメーラを確認し、特に急ぎでもない返信を書き始めた。ざっと文章を見なおした後に、送信のボタンを押す。10分位は過ぎただろうか。ノートPCの電源を落とし、周りが席を立ち始めたのを確認してから帰り支度を始めた。業務が忙しいわけではないのだから、さっさと帰れば良いのだが、チーム内で一番年下の私が早々と席をたつのは、少し気兼ねする。こんな些細な事を気にするよう

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・カンボジア、そのあとで

■この記事は、オンライン文学サロン「青い傘」の連作記事となります

カンボジアの国境の町からタイのアランヤプラテートに入国する。

入国審査は長蛇の列で時間がかかり随分と待たされる。

ガイドブックはここで ひとこと豆知識 みたいな情報がある。

国境で2千円相当のタイバーツを払えば、
列を優先させてくれると持ちかけてくる人がいる
絶対に払わないように注意しよう

「តើអ្នកជាជនជាតិជ

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ありがとうございます。
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忘れられた忘却 4. 冥王主は一切れのパンを貧民の尻穴にねじ込み此れを善しとした【小説】

「あなたには目的地がある。そうでしょう?」

 朧ヶ丘メインストリート下り坂。一体どうしたんだと問い詰めた俺に対して、瑞季はレーザーのような眼光で俺を貫き言った。
すっかり霧のような清涼さを取り戻し、先ほどの取り乱しが嘘のようだ。
 
俺は黙る。瑞季にはどこへ向かうかなど話していないし、俺に目的地があることと瑞季の暴走に因果関係が見つからなかった。

「この街にはいろんな人が暮らしているわ。なかに

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嬉しいです😄
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・カンボジア PART2

■この記事は、文学オンラインサロン「青い傘」の連作記事となります

朝、5時。目を覚まして出発の準備を整える。

眠かったが、10時間のバスの旅なので眠い方がいい。
変圧器で充電しているiphoneを外す。
この国では面倒な手続きを経ないとiphoneは使用できない。
iphoneはただのカメラでしかない。
KDDIのグローバルパスポート携帯を再充電する。
もし、困ったことがあった場合、
この携帯

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(。・_・)♪
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秋 振り返ると季節は(3)

兄さんが退院してから数日が経った。
 あの日から郁さんとは会えずじまいでいる。ギターは無事に郁さんの手に渡っただろうか。あのまま河川敷に残ったままで、知らない誰かに拾われていたらと心配になる。
 今日は兄さんから一緒に来てほしいと言われた場所に足を運ぶ。電車を乗り継いで二時間ほどの駅で降りる。私はその土地を、その景色を、その思い出をよく知っていた。
 私が住んでいた街である。
 兄さんのしたいこと

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秋 振り返ると季節は(2)

病院に着く頃には二時間以上が経過していた。
 病棟には母親と叔母の香苗さんがいた。二人とも疲弊した顔をしている。ずっと見守っていたのだろう。
「あら。来てくれたのね」
「はい。あの、祐輔くんは……」
 香苗さんがベッドで横たわっている祐輔くんを見る。
「今は疲れて眠ってるのよ。この子もがんばったわ」
 香苗さんが祐輔くんの頭を優しく撫でる。
 祐輔くんの顔を確認したら、急激に体中から力が抜けてしま

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・カンボジア PART1

■この記事は、文学オンラインサロン「青い傘」の連作記事となります

──もしもし

──どうしたの?、なーに?

──国際電話をかけてみたくて

──そう、そっちは楽しい?

──まあまあかな、言っておくことが

──なーに?

──マレー列車に乗ってタイに行くのをやめて、カンボジアに行く

──カンボジア?

「どう?、シンガポールは?」

「いろいろ興味深いですけど、ひとりじゃつまらないですね

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(。・_・)♪
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秋 振り返ると季節は(1)

社会人になって二年余りが過ぎた。
 幸いにも大手出版社に就職することができた私は、小さなスペースで週間連載のエッセイ枠を任されることになる。
『繊細と落花』というタイトルで、私の半生を綴った物語を書いている。四季を彩る花のように、私の人生はきっと鮮やかではない。どこまでも鈍く、醜く、滲んでいるのだろう。輝いていない物語なんて誰が見たいのか。
 私にエッセイを書かせる。そう提案したのは直属の上司であ

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忘れられた忘却 3. なにがコミュニケーションざ、ぐだんれえ!【小説】

「そこのイタリアン、値段の割に美味しいんだよ。隣の熱帯魚店は要注意。雄と聞いて買ったのに卵産んだりとか。ヤブだね。ヤブ熱帯魚屋」

 瑞季は――女は瑞季と名乗った――目に映る店々について得意気に説明している。

 金物屋の前で俺に運命を感じたという瑞季は、俺が地元の人間じゃないことを知ると、どこへ向かうのかと聞いた。
 それが俺にも分からない、などと答えるわけにもいかず返事に詰まっていると、何を察

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