あの頃の記憶とこれからの記録 #5

Hは約2週間だけ、隣の席のTと付き合った時期がある。それはちょうど自分とHが席が前後のときだった。

夏休み直前、一学期のテスト週間には部活動が一旦休止となる。早く帰る奴もいれば学校に残っているやつもいる。勉強をすることもあるが大概は駄弁って終わる。自分がそろそろ帰ろうと席で荷物をまとめているとき、教壇の近くでTと友達が話している声が聞こえた。
そこでTはHのことが好きらしいと知ることになった。い

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【連作短編】とおくでほえる/#5 映らない

わかって欲しいのにわかったフリはして欲しくない。見つけて欲しいのに見抜かれたくない。そんなわがままな自分が惨めで仕方ないんだ。

 家の玄関を出た私は、気づいたら走っていた。息が詰まってしょうがなかった。とにかく早く家から遠ざかりたくて、私は厚底のローファーをバタバタいわせながら走る。最初の角を曲がってからようやく足を止め、ゆっくりと息を吸って、吐いた。吐いて、吐いて、吐き出した。胸の奥に沈んだか

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貴方にいいことありますように(*^^*)
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茉莉花茶の午後10時 4

後ろ髪を引かれまくりで病室を出た。
「退院できそうだったら連絡するし、そうでなくても連絡する」
見送る三日月さんが言う。
「午後は休めるので来ます」
「じゃあ午後の早い時間に警察が来ると思うから3時頃にでも」
「わかりました」
そしてまだソファに座っていた彼に向かって「また明日」と言うと「悪いね。でも待ってる」と言った。
マスターが同じ階にある宿直室に行くのに同行する。
「ご馳走様です」
男性看護

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茉莉花茶の午後10時 3

ふたりで慌てて、音のしたベッドに向かう。
カーテンを開けて中を覗くと、寝返りをうったのか彼がこちらに背中を向けている。
三日月さんがそっと近づく。
「青藍…」
声を掛ける。
三日月さんはこちらを見ると「寝ている」と言った。
点滴がなくなっているのに気がついた三日月さんはナースコールでそのことを告げた。
少しして男性看護師がやってきた。若い看護師で肩幅があり、制服がキツそうだった。
「無理言って悪い

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出会いはいつも唐突に

今日はあの人はいない。どうもお母さんが博多に来たようで、そっちの対応に忙しいみたいだ。私は同行しろと言われたのを拒否した。いや拒否せざるを得なかった。あのお母さんには敵わないから。

さて、さてさてさて、さての響きに敵う者がいないようにあのお母さんには誰も勝てない、息子を除いては。いや最初から眼中に入っていないだけなのかもしれない、ある意味において。

私はこの町を歩くことにした。数年前からとても

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ありがとうございます!!!
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ジコマンキング英雄伝〜仮面武踏会:第二十八話〜

前回のあらすじ

ルードロンを撃破し損なったTGFであったが、運営側が誇る最強の戦士「荒武者」によって事態は収束する。二大勢力の壊滅により、ゲームは新たな方向へと進み始める。

シギベラとの決戦から3日が経過した。二大勢力の壊滅を機にゲーム内における戦闘が激減、TGFは平和を謳歌するものだと考えていたが、マグナスを主導とする訓練が決戦後すぐに開始された。主な理由としては2つ。ひとつはルードロンとの

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茉莉花茶の午後10時 2

ここは単なる個室ではなく、特別室と呼ばれる部屋なのだろう。カード式ではないテレビと小さな冷蔵庫。応接セットの他にもライディングデスクがあり、壁紙も透かしの花模様が入っていて、ほとんどホテルのようだった。
三日月さんは備え付けの電気ポットでお湯を沸かしている。
「お茶しかないけどいい?」
焙じ茶と玄米茶のティーパックが置いてある。
「俺、やります」
「いいよ。座ってて」
と、備え付けのカップホルダー

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スピンオフ:殺戮忍者【一ノ巻 魔女狩り】

 午前1時。妖しい光を放つ自動販売機の前。
 紫色のコートを着、フードを被った5人の女が濃いカルピスを飲んでいた。

 年中湿度の高いこの街には、魔女がいる。「湿気の魔女」と呼ばれる、魔法を使えない魔女達が。

 今は湿気の魔女達による、「湿気の魔女集会」が行われているのだ。
 今日の議題は、「遊ぶだけの男」と「将来を約束すべき男」の違いについて。

 魔女達は自分達の周りにいる男を例に挙げ、激し

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あなたも湿気の街へ。
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🍀🍀🍀


 いつもの日のいつもの朝。
 しかし、ダベンポートはいつもの登院前の朝食とは異なり、突然馬車で訪ねてきたグラムに捕まっていた。
 例によって騎士団からの協力要請だ。

「人体自然発火?」
 仕方なくリビングでお茶を振る舞いながら、ダベンポートはグラムの言葉に眉を上げた。
「どうしたね、それが?」
「おいおい、お前ともあろうものがそれを訊くかね」
 呆れてグラムが両手を広げる。
「突然、人が燃え

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茉莉花茶の午後10時 1

落ち着かないまま仕事をしている。これはよくない。
LINEで「今夜は遅くなる」とメッセージを送ったが既読がつかない。
時計は9時になろうとしている。すっかり遅くなった。
来週から始まる美術館の展示物を今日中に搬入しなくてはならなかったのが、高速道路の事故ですっかり遅くなってしまったのだった。
ようやく会社を出れそうになって、もう一度LINEを開く。
未だに既読はついていない。
昨夜の会話を思い出す

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