神崎翠星

二十一歳、大学四年生 小説や詩などを書いています 生きるのが下手な人 だけど世界を愛し…

神崎翠星

二十一歳、大学四年生 小説や詩などを書いています 生きるのが下手な人 だけど世界を愛している人 note初心者 作品はマガジンにまとめています

マガジン

  • 作品を紹介してくださった方

    私の作品を紹介する記事や、感想を綴った記事を投稿してくださった方への感謝の気持ちとして纏めているマガジンです。見落としがあったらすみません🙇‍♀️

  • 夜想曲(短編) ファンタジー小説部門

    『catastrophe、catastrophe。終点に到着、最果ての地に到着。お出口は勝手にお探しください。お忘れ物などない貴方達は美しい。それではよい旅を。グッドバイ』  空飛ぶ夜汽車に乗った少年が辿り着いたのは、朝のこない最果ての地だった。自分はどこからきた何者なのかわからなまま、少年はこの地を彷徨う。かつて少年のような迷い人であったという妖怪の集団、謎の生物ぷぷら、大人たちが踊り続ける食堂、幸福の街を目指す人形たち。様々な不思議な出会いと別れを繰り返す少年の幻想的物語。

  • 名もなき夏(短編) 恋愛小説部門

    「洋介さんは阿呆よ」 「ありがとう」 「どうしてお礼なんて言うの?」 「阿呆とは、人間擬きのうちの最も品質の良いものにのみ与えられる名だからさ」  真夏のある日、孤独な女子高生絹羽は、美しく謎めいた大学生洋介と出会う。夏の間だけこの田舎町にいるのだと聞いて、彼の住む古い家に通うようになる。微睡とも憂鬱とも区別のつかない空間で紡がれる独特で少々悲観的な会話と、打ち解けきれないまま寄りかかり合う二人の繊細な距離感を描いた、一夏の出会いと別れの物語。

  • 廻る家

    短編連載「廻る家」をまとめたものです。SFが好きな人におすすめです。 あらすじ↓ 海斗君が彩月先輩に頼まれて住むことになったのは、美術館に展示されているルービックキューブ型の廻る建造物の一室だった。展示品の一部としての生活、他の住人たちとの交流、見学人の間で広まる家にまつわる噂……、突如不思議な生活を送ることになった青年の物語。

  • 不思議の住処

    短編連作『不思議の住処』をまとめたマガジンです。一夏の和風幻想物語。妖、神、獣、日常の中の不思議が好きな人におすすめです。

最近の記事

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夜想曲(短編) 1 ファンタジー小説部門 幻想文学的短編 

あらすじ 『catastrophe、catastrophe。終点に到着、最果ての地に到着。お出口は勝手にお探しください。お忘れ物などない貴方達は美しい。それではよい旅を。グッドバイ』  空飛ぶ夜汽車に乗った少年が辿り着いたのは、朝のこない最果ての地だった。自分はどこからきた何者なのかわからないまま、少年はこの地を彷徨う。かつて少年のような迷い人であったという妖怪の集団、謎の生物ぷぷら、大人たちが踊り続ける食堂、幸福の街を目指す人形たち。様々な不思議な出会いと別れを繰り返す

    • 夢 4 夢を書く人 (幻想文学・連作短編)

        ある女が見ている夢の話。  冷えた空気に包まれた作業部屋。天井はやけに高く、手を滑らせて本を落としでもすれば、大袈裟な乾いた音になってこだまする。  壁は厚く、窓を開け放さなければ、外界の音など一切聞こえることはなかった。一面に張り巡らされた書架も防音に一役買っていて、それには様々な本が所狭しと並んでいる。  女は眠れなかった。一度も眠ったことがなかった。部屋の中央にある木製の机に向かって、ただひたすらに夢を書くことが仕事だった。この世界に存在するあらゆる夢を見る生

      • 夢 3 少年たちの街 (幻想文学・連作短編)

         ある少年が見た夢の話。    少年は、狭い車の後部座席に座り、小雨のせいで水滴と曇りをつけた窓の外を眺めていた。何も気にかけてくれない無言の運転手の方ばかり見るのは居心地が悪く、流れていく景色の中に見える俯いて歩く人々や、彼らの生活を見守る街灯の灯火の数を数え、気を紛らわせながら、静寂をやり過ごそうとしていた。  それは、齢十三になった日のことで、もう故郷には帰れないと告げられた日のことでもあった。しかしそれは突然の宣告ではなく、少年は自分の未来がそうであることを、もう

        • 夢 2 夢幻の里  (幻想文学・連作短編)

           ある青年が真冬の寝台の中で見た夢の話である。  この町に名前はない。人々は、ただ、余所者たちに夢幻の里と呼ばれていることを知っているのみだった。青年は町の端にある小さな一軒家で、友人らと共に四人で静かに暮らしていて、特別な人間ではなかった。  ある日のこと、青年は友人らと朝食を食べた後、外へ出て、町の中をゆっくりと歩いて回った。のどかな、草木の揺れる様子が美しい景色の中を行った。  町の中心にある広場のそのまた中心には、大きな螺旋階段があって、天に向かって相当高い場所

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        • 作品を紹介してくださった方
          4本
        • 夜想曲(短編) ファンタジー小説部門
          5本
        • 名もなき夏(短編) 恋愛小説部門
          6本
        • 廻る家
          8本
        • 不思議の住処
          8本

        記事

          夢 1 人形の夢  (幻想文学・連作短編) 

           本作品の一話目『人形の夢』(この記事)は、実際に私が2023年10月24日の夜に見た夢を元に書いた物語であり、本作品全編は、私が書いた別作品『不思議の住処』の主人公、佐川が文學市で手に入れた本の中身と同様である。  こんな夢を見た。    薄暗さに包まれた灰色の壁の所々に、小さな緑たちが、芽生えてはすぐに枯れ果てる。装飾の施されていない、少々地味だが重厚感のある家具が少しと、天井から光る蜘蛛のように垂れ下がる裸電球が一つだけ存在する。窓はない。  そんな説明で表される狭

          夢 1 人形の夢  (幻想文学・連作短編) 

          夏に願いを 掌編(一記事完結)

           二十歳になったら死のうと思っていて、それには、二十歳までは生きてみようという希望の意味合いも少しは含まれていたのだが、実際二十歳になってみると、やり残したことは特になく、だからといって昔ほどに死にたいとは思わず、肉体より先に精神の死が訪れたような感覚が強い。  やがて、それさえも失ってしまうのかもしれないという、僅かな恐怖と安堵の混ざり合う、分離不可な感情が、くるくると頭の中を回っている。  それでも、夏という幻影に囚われている。白いワンピースに麦わら帽子を被った女の子

          夏に願いを 掌編(一記事完結)

          夜想曲(短編)5 完結

           浅い川に朱色の橋がかかっている所へと出た。頭上には大量の藤が垂れ下がり、空を隠していた。花のトンネルは青や紫の鉱石が眩しく光る洞窟のような場所へ続いている。少年は狭い星空のようなそこを駆け抜けた。  辿り着いたのは海。あり得ないほど大きな、古い木造船が座礁鯨のように半分砂浜に乗り上げて、斜めに倒れている。きっとこの船の持ち主は巨人に違いないと思った。  恐る恐る近づいて、中へ入った。細い通路が続いている。壁に取り付けられた台があって、青い炎と赤い炎が交互に灯されている。

          夜想曲(短編)5 完結

          夜想曲(短編)4

             少年は目のない人形を抱いたまま傘立てに刺さっていた紫色の和傘を借りて、開いた。傘は淡く光った。少年は提灯を肢にひっかけて飛び出した。糸のような雨が降っていて、傘や地面に当たった雫が一瞬発光して跳ねた。  先程の妖怪たちはまだ店の近くにいた。何処へ行けばいいのかわからない様子だった。彼らの身体は濡れなかった。雨さえも、彼らを認識しなかった。少年は彼らに近づいた。髑髏に話しかけた。 こんばんは 「……こんばんは」 何してるんですか? 「何をしたらいいかわからない

          夜想曲(短編)4

          夜想曲(短編) 3

           少年はきのこと苔の森を抜けて、また石畳の続く道に戻った。霧がかかっていて、景色が白っぽく見えた。しばらく歩いていくと、人間の大人たちが木造の建物を取り囲んで、何やら作業をしていた。大柄な男が話しかけてきた。 「よう坊や、おっちゃんたちが建てた店、カッコいいだろう?ここは食事処になるんだぜ」  終末堂は? 「それはあっちにある店だな。ここは姉妹店の終焉堂だ。最近客が増えて大変なんだ。だからもう一つ店を作った。そうだ、終末堂に行くならこの道をまっすぐ行けばいいからな」

          夜想曲(短編) 3

          夜想曲(短編) 2

              少年がたどり着いたのは、彼の背よりも三倍ほどには大きな、海月に似た半透明のきのこが生えている苔だらけの場所だった。すぐ近くには川が流れているらしく、水の音がした。  古びた祠に一本、手足の生えた和蝋燭が座っていて、目玉の形をした頭の火が瞬きをした。 「あなた、ランタンに夜道には気をつけろって言われなかった?」  はい、言われました 「この最果ての地に、夜じゃない道なんかないもの。ふふふ」  ずっと夜なのですか? 「そうよ、月は満ちたり欠けたりするけれどね

          夜想曲(短編) 2

          夏と幻影(短編)6 完結

             少女は、何もない部屋に、カメラが一つ増えたのを見つけた。洋介さんはそれを手にとって、興味があるのならば触れてみればいいと、渡してくれた。 「気に入ったのなら、あげるよ」 「いいの?ありがとう。じゃあ、洋介さんを撮ってあげる」 「いらないよそんなの」 「私が欲しいの」 「どうしてさ」 「洋介さんがいたことを、夢幻にしてしまいたくないの」 「僕は僕が生きた証をどこにも残したくないのだけどね」 「一枚でいいわ」 「僕がここにいた事実が残っても、それは、事実

          夏と幻影(短編)6 完結

          夏と幻影(短編)5

             少女は、靴を脱ぎながら、その様子を見つめてくる洋介さんに話しかける。 「いつも家の中にいるのね」 「太陽の光に閉じ込められてしまったんだ」 「雨も太陽も好きじゃないのね」 「僕はこの世の全てが好きじゃない」 「私のことも?」 「もちろん。君も、僕自身のことも」 「そう」  少女は脱いだ靴を玄関の端に揃えて置く。洋介さんの靴と並ぶと、自分の足が一際小さいのだと感じる。いつも通り、畳の部屋に向かう。洋介さんは少女の後ろをついて来ながら、不思議そうな顔をして

          夏と幻影(短編)5

          夏と幻影(短編)4

            「きぬちゃんは今日も不機嫌だね」 「だめかしら」 「いいや、放っておいて構わない不機嫌だから、ダメじゃない。他人の痛みが自分の中に入り込んできたり、他者へ向けられた怒りが、まるで自分へも向けられているかのように感じたりすることは、僕にもあるよ。だけど、君の不機嫌は愛らしいと言えばいいのかな、怖くないんだ。眉間に皺を寄せた毛の柔らかい子猫を想像してごらんよ」 「あら、そう考えると私って意外と可愛いじゃないの」 「そうだよ。君は可愛いんだ」 「私、自分がうざったい

          夏と幻影(短編)4

          夏と幻影(短編)3

             洋介さんは、部屋の端で壁を背もたれにして国語辞典を眺めながら、少女に話しかけてきた。 「確かな意味を持って生まれてくる言葉の少なさに思いを馳せる余裕がある人生って、いいものだね」 「辞書は言葉の真実に限りなく近いものだけど、人間の真実は載ってないわ」 「そうだね。そもそも、本来言葉には、善も悪もないはずなんだ。優劣も、強弱も、なにもかも。それを決めるのは心だ。言葉を知った人の心だ」 「なら私の心を信じてみない?」 「冗談でしょう」 「冗談じゃないわ」  本

          夏と幻影(短編)3

          夏と幻影(短編) 2

             少女がたどり着いたのは、古い木造の平家だった。素朴な全体像から、徐々に一点だけに集中して見ていくと、ある一点は逞しく太い柱であったり、またある一点は、繊細な磨りガラスであったりして、多面的な表情を持つ家だった。  狭い庭は、高低様々な草が生え放題になっていて、暴力的な活力で茂っていた。鮮やかな緑色が眩しい。洋介さんは鍵を開けて、引き戸を引く。どうぞ、と言われて中へ入る。  家の中は薄暗く、比較的涼しかった。焦茶の木材の古めかしさが独特な良い味わいを持って、この家に

          夏と幻影(短編) 2

          夏と幻影 (短編) 1 恋愛小説部門 

          あらすじ 「洋介さんは阿呆よ」 「ありがとう」 「どうしてお礼なんて言うの?」 「阿呆とは、人間擬きのうちの最も品質の良いものにのみ与えられる名だからさ」  真夏のある日、孤独な女子高生絹羽は、美しく謎めいた大学生洋介と出会う。夏の間だけこの田舎町にいるのだと聞いて、彼の住む古い家に通うようになる。微睡とも憂鬱とも区別のつかない空間で紡がれる独特で少々悲観的な会話と、打ち解けきれないまま寄りかかり合う二人の繊細な距離感を描いた、一夏の出会いと別れの物語。    夏、そ

          夏と幻影 (短編) 1 恋愛小説部門