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【読書感想文】「連作短編|揺られて」

 須木本りく(すぎもとりく)さんが書いた 初小説という触れ込みの【連作短編|揺られて(前編・後編)】を拝読しましたので感想を投稿です。

「創作大賞2024」 「恋愛小説部門」に参加している作品ということですので、祭りを盛り上げるために声援を贈りたいと思います。決してヤジではありません。ネタバレはしませんので、ネタバレが嫌いな方も安心してお読みください。まず、あらすじの引用です。

《あらすじ》
 大手銀行 副支店長の貴也は、頭取の娘 可奈子という美しい妻がありながら、大学生の彩乃とただならぬ関係にある。
 夫の浮気には薄々気づいているが全く気にはしていない可奈子も夫には言えない秘密をもっている。
 彩乃は友人 桜子と、マッチングアプリを使ったパパ活で小遣い稼ぎをしていた。
 愛、金、幸せを求め繋がってゆく男たち女たちが、ゆらり揺られて向かった先には何が待っているのか。

「連作短編|揺られて」から あらすじを引用

 本編はこちらからです。

 読後「えっと、俺は何の分野の小説を読まされたんだっけ」と思いながら、タグで創作大賞へ応募した部門を確認しました。
「うん、応募しているのは「#恋愛小説部門」で間違いないのね。(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪、騙されたぁ。コレ恋愛小説なのぉ」
みたいな一人ツッコミをしました。

 半世紀以上生きてきて、反省が必要な恋愛をいくつかしてきたつもりです。恋を夢見る純粋なティーンエイジャーじゃありません。しかし、それでもこの作品は、何と申しますか、自分が書いたコメントから引用します。
『絡み合う情念と錯綜する悪意が、暗闇で蠢く妖のようで、怖いもの見たさで一気に拝読しました』
ということでして、もっと端的に言えば
『恋愛小説というより、打算と妥協と堕落する感情を抱く人たちの群像劇ですよね』
というのが最初の印象でした。あらすじに書いていない人物たちも登場し、絡み合いながら物語が進みます。

 面白いか、面白くないかと聞かれたら面白いです。初小説とは思えない輝きを含む作品でした。

 ただ、明るく爽やかな面白さではなく、お化け屋敷で「次は何を見せられるのか」という怖さを含むような「ピカレスクロマン」の要素が強い感じです。
 初小説ということや、また「早く完結して公表(応募)したい」という気持ちもあるのか、小説としての作り込みや人物の堀込みが甘い点もあるとは感じますが(って、俺は何様のつもりですか、すいません)、初小説でこれだけの登場人物を書き分け、物語を展開させていく力量には感服させられました。

 また、こうして振り返ると「やはりこれは恋愛小説なのだ」ということを納得させられてしまいます。登場人物たちに共通する「打算と妥協と堕落」という意志が貫かれて展開されている物語ですから
「恋にあるのは下心」・「恋はするものではなく堕ちるもの」
という「恋」に通じるのかもしれません。
 さらに登場人物たちは「自分だけの幸せ」を求め、今自分にある「幸せ」に気づかず、又は気づいていながら満足しようとせず、それぞれの人間関係において「打算と妥協」という「下心」を見え隠れさせながら行動していきます。今ある幸せを壊して堕ちていくことを止められない業を感じます。こうして登場人物たちが「自分だけの幸せ」を求めるというのは「自愛」を追求し続けている行動のようにも感じます。

 若者たち特有の「恋のワクワクドキドキ」や「愛の美しさ」を感じる場面は少なく、大人が持つ仮面の下の醜い本性を見せられ「それでも人間を愛せますか」と質されているような、「大人の恋愛小説」という理解をしたところです。
 そういう意味では「実にリアルな大人の恋愛小説」をエンターテイメントとして描ききった作者に喝采を贈りたくなります。
 
 まだ締切日まで期間がありますので、作者が加筆修正を行い内容を充実させるのか、それとも次作を書き上げるのか。
 これからの展開に期待したいと思います。

(本文ここまで)

 なお、「フィクション」として「ピカレスクロマン」は支持しますが「不倫・パパ活・ママ活・ストーカー」などリアルでは「駄目ゼッタイ!」です。

 最後までお読みいただきありがとうございます。著者のあらすじには
「愛、金、幸せを求め繋がってゆく男たち女たちが、ゆらり揺られて向かった先には何が待っているのか」
とありますが、
「ゆらり揺られながら、ちゃんと繋がることができず、すれ違いを重ねる男女の姿」
という印象から「ブランコ」をサムネ画像として使わせていただきました。


#須木本りく
#連作短編 |揺られて

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