とらつぐみ(鵺)

春から社会人になりました。野鳥観察と漫画・アニメが好き。週末に駄文や小説を更新します。 連載→ 本の感想「今月の本」、連作小説「微と怪異」(不定期更新 )、エッセイ「鳥好きの無駄話」

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  • 本・映画の感想

    これまでに書いた本の感想文をまとめてあります。

  • 虚無まとめ本(ジャンル色々)

    存在しない街を散歩したブログや存在しない本を読んだ感想文など、虚無の創作をまとめました。ここに書かれていることは何一つ信用してはいけない......

  • 鳥を愛でる(短編小説・エッセイ)

    野鳥観察のエッセイや鳥が登場する小説をまとめました。

  • 連作小説まとめ

    妖怪や怪異話が好きな女性が主人公の連作小説です。そこまで怖くはないですがホラー要素あります。人外が好きな人におすすめ。不定期に更新します。

  • とらつぐみお気に入り

    こんにちは、とらつぐみです。自己紹介とお気に入りの小説・エッセイをまとめてあります。

最近の記事

鳥好き探偵と剥製屋敷の怪・後編(小説)

↑前編はこちら ミステリ作家、大鷲春男の書斎は一風変わったつくりをしていた。1階から2階までの吹き抜けで、2階は庭に向かって張り出している。 2階部分まで高く聳える壁一面の本棚を見ながら、上の方の本は日焼けしそうだし取り出すのも不便だな、と鵲は思った。 「その手帳は、この机の上に置いてあったんですね。ここに来たのは何時ごろ?」 「コンサートが始まるまではホールにいて、1曲だけ聴いたあとにホールを出たんで、12時7、8分くらいかな……」 大鷲の第二秘書、山鳩は今は亡き懸

    • 鳥好き探偵と剥製屋敷の怪・前編(小説)

      鵲探偵事務所にとあるパーティの招待状が届いたのは、蒸し風呂のような気温の中浮気調査をしていた、8月の終わりのことだった。 差出人は、推理小説の大家で知られる大鷲春男氏。前に一度、探偵監修の依頼を引き受けた縁で送ってきたようだった。 (探偵監修とは何なのかよくわからないが、探偵が出てくる小説の原稿が送られてきたので「貧乏な探偵は家賃を払うのにも困っているので葉巻は吸わない、せめてマルボロ」と書いて送り返したら、後日目玉が飛び出る額の謝礼が振り込まれていた。) 探偵事務所、

      • ホシハジロとアカハジロ(小説)

        4限目の英語の授業、チャイムの音で朱音は目を覚ました。いつの間にか授業は終わっていた。寝ぼけた頭のまま日直の声を聞き、慌てて起立する。 号令を済ませた先生が教室を出るとすぐ、前の席の女子グループが一緒に昼ごはんを食べるため机をガタガタ動かし始める。 なんたる不覚、英語の時間で寝るだなんて。2年の時は一睡もしたことがないのに。いや、それは彩先生が担当だったからか。彼女の一言一句を聞き逃すなんてあり得ないから。 にしても受験生としての自覚が足らないんじゃなくて? いや昨日遅

        • まだまだ語り足りない〜映画『ラストマイル』感想〜

          こんにちは。とらつぐみです。 今週は、現在公開中の映画『ラストマイル』の感想です。 ラストマイルは、わたしの大好きなドラマ「アンナチュラル」「MIU404」と同じ監督・脚本によるシェアードユニバース映画(要はキャラクター大集合お祭り騒ぎ的な)と聞き、それに釣られて観に行った節があるのですが(正直)、 実際観てみるとストーリーがめちゃくちゃ面白い。面白すぎて2回目、3回目も観に行きました(軽率に映画館に行くオタク)。 ・ラストマイルだいたいのあらすじ 大手通販サイトDA

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          白鳥のいない湖(小説)

          湖の南岸の水田に囲まれた小さな町、灰川町には冬になると白鳥がやってくる。 米山藍子がそれを知ったのは、昨年11月末のドライブデートの帰り、灰川町のサービスエリアに寄った時だ。 地元の名産品が並び、観光客で賑わう中、一枚のポスターが貼られているのを目にした。白鳥の群れが湖の上を飛んでいる写真に、ゴシック体で書かれたキャッチコピーは「三宝湖のほとり、知る人ぞ知る”白鳥の里“」。 優雅な白鳥たちの姿と大仰な言葉は若干合っていないが、やはり白鳥は湖が似合うなあ、と藍子は思った。

          白鳥のいない湖(小説)

          目白にメジロはいるのか(小説)

          🕊️北条李の鳥の談話室🕊️ 第46回(2024年8月号):目白にメジロはいるのか この原稿を書いているのは暦でいえば夏至(6月22日)、このコラムを載せた雑誌が書店に並ぶのは立秋(8月7日)とのことだ。 8月の上旬、立秋といえども秋とは程遠い酷暑で、野鳥好きの読者のみなさんも辟易しているだろう。なにせ暑い。外で鳥を探すには適さない気候だ。 長野市某所、林の中にある自宅の窓を開けると、渡ってきたばかりの夏鳥がリサイタルを開いている。特に早朝はホトトギスをはじめ賑やかだ。

          目白にメジロはいるのか(小説)

          わたしと「推し」とオオルリ(小説)

          山登りが好きな人は「そこに山があるから」登るというが、鳥はどこにいるのか探すところから始まる。 でも探せば意外と色んなところにいるのが、鳥という生き物だ。 露村果鈴にとって、鳥を観る、といえばどちらかといえば河だった。 河はいい。シギやチドリが干潟で遊びミサゴが悠々と飛ぶ。一日中いても飽きない。 だが2020年の7月、大学院1年の彼女が母親の車に姪っ子を乗せ、朝から向かっていたのは、実家のすぐ近くにある史跡公園だった。 公園、と言っても田舎の史跡公園は石垣がちょっと

          わたしと「推し」とオオルリ(小説)

          オオルリ?

          たぶんオオルリの鳴き声(短いです)

          あしゆびの黒い「シラサギ」(小説)

          ここ数年、6月の初め頃、梅雨が始まるか始まらないかの時期の気候が一番鬱陶しい。 湿度が高く、蒸し暑いかと思えば、大雨。たまの晴れ間は猛暑日。どちらにしても不快な気候だ。 私が勤める天河市役所では6月上旬から既にエアコンが稼働しているが、それは来庁者のためのもので、定時を過ぎれば止まってしまう。 残業中の執務室は、窓を開けたり扇風機を回したりでなんとか凌いでいるが、蒸し風呂同然だ。 私はワイシャツの袖を肘の下まで捲り上げる。クールビズ推進の流れのおかげでネクタイは締めな

          あしゆびの黒い「シラサギ」(小説)

          ゲ謎に出てきた「座敷牢飯」が食べたい(日記)

          こんにちは。とらつぐみです。 ちょっと前まで肌寒かったのに、ここ数日は暑いですね。 先日、友人と一緒に京都の太秦映画村で開催中のイベント、「ゲゲゲの妖怪村」に行ってきました。 ↑イベント公式サイト。イベントは6/30まで開催中。 「ゲゲゲの妖怪村」は2023年に公開された映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(以下「ゲ謎」)と映画村のコラボイベントで、登場キャラクターのパネルや作中に出てくる「座敷牢」を再現したセットなどが展示されていました。 映画村の至る所に妖怪がいたり、コ

          ゲ謎に出てきた「座敷牢飯」が食べたい(日記)

          パーソナリティを拉致して野鳥観察させよう!(空想ラジオ「朔と苺の人間嫌いと人見知り」③)

          ♪(軽快なジングル) 八十島:この番組は、シンガーソングライターの八十島朔と俳優の酢木苺が、視聴者からのお便りを読んだり読まなかったりする身勝手なトーク番組です。 酢木:『鳥のためにも、猫のためにも猫は家の中で飼おう!』トラツグミフーズの提供でお送りします。 ♪(フェードアウトしていくジングル) (CM) 🕊️       🕊️  🕊️ 酢木:リスナーのみなさん、こんにちは! そして朔ちゃん、おはようございます! 八十島:……おはよう、ございます。 酢木:めっち

          パーソナリティを拉致して野鳥観察させよう!(空想ラジオ「朔と苺の人間嫌いと人見知り」③)

          ノン・アサーティブ・ストーカー(小説)

          職場の同僚、八津瑠璃香に盗聴されていることに気づいたのは、4月の初め、湿度が高くてやたらと暑い晩のことだった。 社宅のワンルームの部屋。玄関入ってすぐ、下駄箱の下あたりにある、何に使うのかよくわからない(のであまり使っていない)コンセントに、見慣れないコンセントタップがついていた。 それを見つけた私は、防災用にと最近買った小型ラジオの電源をつけ、そこに近づけてみた。案の定、電波は乱れノイズが入った。典型的なコンセント型盗聴器だ。 コンセントは他にもあるのに、普段あまり抜

          ノン・アサーティブ・ストーカー(小説)

          葉牡丹と夢枕(小説)

          母方の祖母はよく、「夢枕に誰かが立った」という話をしていた。 死んだお爺さんが、親戚の誰々さんが……祖母の枕元に立ってきた人は10人くらいいたんじゃないだろうか。 毎回、「この世への未練とか、何か強い想いがあるから枕元に立つんかなぁ」としみじみした調子で言うもんだから、「そんな非科学的な」とは返せなかった。 「葉牡丹の精が夢枕に立った」と言われた時以外は。 『いや何やねん、葉牡丹の精って』 『あんたも見たらわかるって。あれは葉牡丹の精や。枕元にちょこんと座ってるねん』

          葉牡丹と夢枕(小説)

          「わからない」ことの魅力〜古代メキシコ展に行ってきた(エッセイ)

          こんにちは、とらつぐみです。 先日、国立国際美術館で開催中の特別展「古代メキシコ」に行ってきました。 ↑公式サイト。写真撮影可(個人利用のみ、SNS可)とのことなのでちらほら展示品の写真が現れます。 古代メキシコ展は東京会場で開催されていたとき話題になっていたので楽しみにしていましたが、実際行ってみて、結論からいうととてもよかったです。 古代メキシコ、と言っても馴染みがない人が多いと思います。 とらつぐみは高校は世界史選択だったのでテオティワカン、マヤ、アステカと聞

          「わからない」ことの魅力〜古代メキシコ展に行ってきた(エッセイ)

          人にはあまり理解されない「ゾワゾワするもの」の話をしよう(エッセイ)

          こんにちは。とらつぐみです。 早くも花粉が飛び始めているみたいで、鼻と喉がずっとムズムズしています。 (先日血液検査をしたら酷いハンノキとハウスダストアレルギーがあると診断されました。どうりで年中ムズムズするわけだ)  ところでみなさんは、ある特定のものに対して、「なぜだかわからないけど身体がゾワゾワする」という感覚を覚えたことはありませんか? わたしはあります。 アレルギーならば、原因(アレルゲン)を避けたり薬を飲めば症状が落ち着きますが、「なんだかゾワゾワする」もの

          人にはあまり理解されない「ゾワゾワするもの」の話をしよう(エッセイ)

          怪異と残業した話(小説)

          わたしが初めて職場で不気味な老婆の笑い声を聞いたのは、繁忙期の夜9時、一人残って残業していた時だった。 その時は、ちょうどその日育休に入った先輩の事務仕事を引き継いだばかりで、慣れない作業にずっと戸惑っていた。 目や肩が限界を迎えたので、席を立ち、お手洗いに向かう。わたしの部署はフロアの真ん中あたりにあるが、左右の島にはいつのまにか誰もいなくなっていて、蛍光灯も消えている。 通路を挟んで向かいの島には蛍光灯がついているが、見たところ人の気配はない。 なんとなく心細い気

          怪異と残業した話(小説)