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「あとがき」のようなもの

 読者のみなさま、日ごろ読んでいただきましてありがとうございます。多くの方から「スキ」をしていただき、ご丁寧にコメントまで残していただけることは、作者にとってこの上ない喜びであります。まずは御礼申し上げます。

 さて、無名の作家が書くものですので、当然みなさまにはお気付きにならないと思うのですが、人知れず自主企画を進めておりました。
 かねてより短編連作を執筆したいと思っておりまして、この度は短編ならぬ掌編での連作を試みていた次第であります。
 短編と掌編では少々作り方にちがいが出るものでして、短編ではキャラクターの人物像が浮かび上がるように、掌編ではもっと抽象度の高い人間の機微が炙り出されるように作りのちがいがあると作者は考えております。舞台に例えるなら、短編は一人の役者にスポットライトを当て、掌編はその役者の手や足や首に光をしぼって当てると言ったところでしょうか。
 一通り創作してみました実感としては、膂力りょりょくに欠けるところがあったため、短編のダイジェストのような、いささか中途半端なものになったと思っております。連作を意識するあまり登場人物の「繋がり」を描くことに文字数を使い、テーマを集約しきれなかったというのが今回浮かび上がった課題でした。
 ただ今回の作品を元にボリュームアップをして短編に作り直すのも悪くはないなとも思ったりしております。

 本題に入ります。
 今回モチーフにしましたのは「花鳥風月」という言葉であります。これは自然美をあらわす言葉ですが、ひとつひとつのワードを段分けして、象徴的に人物を描く意図がありました。つまり、花の象徴の金咲かなざき紫織しおり、鳥の象徴の江籠えごかける、風の象徴の吹越ふきこし颯真そうま、月の象徴の星野ほしのあかりというわけです。登場人物の姓名にそれとなく関連する漢字を埋め込みましたのは作者の遊び心であります。
 構成としては各人物がリレー形式でそれぞれの段の人物を語るようになっております。段ごとに時間軸をズラす目論みがあったのですが、回想メインの語りになり、ズラすどころかイタズラに時間が飛んでしまいましたので、これは後述して捕捉をいたします。
 あと「花鳥風月」の裏でもうひとつモチーフにしたのは「春夏秋冬」です。春の花、夏の鵜飼、秋のウィンドサーフィン、冬の月。ウィンドサーフィンは一年中できるスポーツで地域によるとは思いますが、春秋の風が良いのだそうです。月は「中秋の名月」という言葉があるように、冬が一番美しいというわけではございませんが、作者としては澄んだ空気に明るく輝く冬の月に情緒を感じてしまうのです。
 風物詩のように象徴する言葉が絡み合うのは面白い発見でした。
 そして結果的ではあったのですが、それぞれの段に共通したのはカメラの存在でした。美しさを象徴する言葉でしたので、必然的に人間の美しい部分に集約していったのですが、その瞬間を切り取る役目を果たしたのが写真だったようです。
 各段の分かりにくい部分、特に時間軸の説明だけ簡単に捕捉を致します。

 前置きとして登場する四人は全員同級生にあたります。
「藤色想い」で登場するあかりと紫織は四十手前の年齢設定で現代が背景になっており、ここが時間軸のベースとなります。回想は大学時代になりますので約二十年前になりますでしょうか。作者の経歴と重ねているところがありまして、二十年前の人々の手にあるカメラはスマホではなくデジカメというわけですね。
 ここで描かれる紫織は藤の花言葉に由来されております。
 数ある花の中で「藤」を選んだのは、作者が嗜む日本舞踊の宗家藤間流からという至って単純な理由でありました。

「鵜匠」で語る紫織の時代背景はおそらく二十代後半なのかと思います。紫織が変装したのも、アナウンサーとしての人気が高まってお忍びの旅行だったからだと思っております。回想は小学生時代になりますね。

風人かざびと」で語るかけるは大学時代です。回想はそれほど大きくは時間が飛びませんので2、3年前といったところでしょうか。

「フォトグラファー」で語る颯真そうまは大きく未来へと飛び八十過ぎの設定です。回想も四十半ばを過ぎているので、同級生のあかりも「藤色想い」のあかりの未来の姿になります。

 最後に執筆する際にnote上で参考にさせていただきました記事を紹介いたします。


 翆野大地さんの記事は「鵜匠」「風人かざびと」で参考にいたしました。
 とにかく野鳥に関する知識が物凄い鳥博士です。多くの写真と細かな説明で毎日更新しておられます。

 私が初めに拝見したのはこちらでした。
 文化との繋がりという視点も持ち合わせております。この記事の中で鵜飼という言葉がヒントになりました。

 中村祐介さんのこちらの記事は「フォトグラファー」で参考にさせていただきました。
 月を象徴するような人物というのが一番苦戦しておりまして、中村さんの価値観が作品の礎となりました。


 さみ(いいづかあさみ)さんの記事も「フォトグラファー」で参考にさせていただきました。
 フォトグラファーとしての考え方や行動、そして多くの写真に触れて星野ほしのあかりという人物像が浮かび上がりました。

 他の作品においても参考記事がありましたが、まだご本人の承諾が得られておりませんので、ご回答次第で更新しようかと思っております。
 参考にさせていただいた方々に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


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