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2024年3月の記事一覧

 映画『PERFECT DAYS』と藤牧義夫『隅田川両岸画巻』

映画『PERFECT DAYS』と藤牧義夫『隅田川両岸画巻』

先日遅ればせながら映画『PERFECT DAYS』を観てきまして、あまりにも近所のシーンがあり「こんな近くにヴェンダースいたの?」と驚き。ストーリーと共にそっちも気になってしまいましたが素晴らしい映画でした。

役所広司演じる主人公・平山は仕事が終わると、まずは銭湯。そのあとは隅田川に架かる桜橋を自転車で渡り、浅草駅地下の飲み屋に必ず訪れる。川を渡る事でオンオフを切り替えていて、橋が日常の行き来を

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(1分読み)ユニバーサルデザイン(UD)の教科書159 見える化12  30年前-QRコード:情報への扉を開く

(1分読み)ユニバーサルデザイン(UD)の教科書159 見える化12 30年前-QRコード:情報への扉を開く

見える化12 30年前-QRコード:情報への扉を開く

概要

QRコードは、バーコードよりも多くの情報を記録できる二次元コードです。

Made in Japan.1994年に日本で発明されて以来、世界中で広く利用されています。本稿では、QRコードの歴史、発明者、発明のきっかけ、オープンソース化、見える化との関係性、普及の理由、普及の経過、デジタル化時代の影響、そして今後の可能性について解説し

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所蔵作品展など@岐阜県美術館

所蔵作品展など@岐阜県美術館

友人と岐阜県美術館に行ってきました。
どこかに行ってのんびりしようということで計画して決めたのが岐阜県。
なぜ岐阜に決まったかというと、この岐阜県美術館に興味があったからでした。
『ミュージアムの女』という漫画で岐阜県美術館の名前を知り、その後にルドンのコレクションを有するということで、ルドン好きとしては是非行ってみたい美術館となっていたのでした。

そんなこんなわけで、天気の良いなかいざ岐阜県美

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東京国立近代美術館「中平卓馬  火-氾濫」と高梨豊「町」

東京国立近代美術館「中平卓馬 火-氾濫」と高梨豊「町」

表題の通り、東京国立近代美術館「中平卓馬 火-氾濫」を見てきました。

若さとは反発することで成立するのではないかと思います。
反発の道具に写真を使い、自分が正しいことを説明するための言い訳に言葉を使っているはずが、どこかで逆転し、やがて言い訳に本人が乗っ取られる時が来るのかなと想像しています。
それが写真にハマるということであり、考え過ぎるということであり、こじれらせるということかもしれません

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「額縁」の威力と魅力

「額縁」の威力と魅力

久し振りに国立西洋美術館の常設展に行ってきました。

普段そこに展示されている所蔵作品が、来週火曜日(2024年3月12日)に開幕する現代美術展
<ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?>
に展示されるらしく、モネ『睡蓮』、ゴッホ『ばら』やシニャック『サン=トロペの港』などがありません。その代わりに私がこれまで観たことがない “蔵出し作品” がいくつか飾られていました。
いつ行っ

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通好み・二つの美術展

通好み・二つの美術展

3月に開幕を迎えた注目の美術展を二つ、ご紹介します。
といっても、開催されるのは日本ではなくパリ。私がフォローしている美術館のInstagramで紹介されていました。

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1️⃣ ルーヴル美術館
<ファン・エイク 〜『宰相ロランの聖母』再発見>展
(2024年3月10日〜6月17日まで)

ヤン・ファン・エイク(1390-1441年)といえば、透明の絵の具を塗り重ねていく油彩

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狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17

狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17

 この展覧会では、狩野芳崖「悲母観音」(東京藝術大学)、「仁王捉鬼図」(東京国立近代美術館)を中心に、彼の直弟子が描い芳崖作品の模写や、明治期の東京美術学校の画学生から、今現在、現役で活躍している画家まで、彼の作品に影響を受けて、それらから派生して描かれた作品が多数展示されています。
 
 狩野芳崖(1828-1888年)は、明治前期に米国人アーネスト・フェロノサの元で新日本画の制作に取り組み、岡

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狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」下関市立美術館その2 2024/2/6~3/17

狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」下関市立美術館その2 2024/2/6~3/17

前回記事の続きです。
その1はこちら狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17やむやむ (note.com)

 この展覧会では、狩野芳崖「悲母観音」(東京藝術大学)、「仁王捉鬼図」(東京国立近代美術館)を中心に、彼の絵画から派生して作られた作品が多数展示されていました。
絵画については、三つの作品群がありました。
・狩野芳崖の直

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展覧会レポ:DIC川村記念美術館「今見られるコレクション」「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」

展覧会レポ:DIC川村記念美術館「今見られるコレクション」「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」

【約5,500文字、写真約40枚】
初めて、DIC川村記念美術館(以下、DIC美術館)に行き「今見られるコレクション」と「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、大満足の美術館でした。これは主に、1)大自然に囲まれた環境、2)作品の良さを何倍にも引き出す贅沢な展示室とキュレーション、3)素晴らしいコレクションのクオリティによります。なお、アクセス

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展覧会レポ:京都市京セラ美術館「村上隆 もののけ 京都」

展覧会レポ:京都市京セラ美術館「村上隆 もののけ 京都」

【約4,800文字、写真約65枚】
京都市京セラ美術館で開催されている「村上隆 もののけ 京都」を鑑賞しました。その感想を書きます。

結論から言うと、1)9割以上が新作・大規模な村上隆の個展のため、現代アートが好きな人は必見、2)キャッチーな作品が多く、写真撮影可能で楽しい、3)"鑑賞"を忘れないように注意、4)村上隆の考えや「スーパーフラット」について、端的に分かる工夫があればなお良かった。

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「クロスオーバーの調和力」を感じる一冊

「クロスオーバーの調和力」を感じる一冊

8日の仕事中に同僚から聞きました。

「鳥山さんって、あの鳥山さんですか?」と訊き返したのを覚えています。頭の中にファミコン版「ドラゴンクエスト2」の復活の呪文である「ゆうてい みやおう きむこう ほりいゆうじ とりやまあきら ぺぺぺぺぺ……」が浮かびました。我ながら相当戸惑っていたようです。

多くの書店が関連作品を版元に注文し、追悼コーナーを作ろうと考えているはず。もうしばらくお待ちくださいま

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長沢芦雪と浮世絵師・鈴木春信が描いた“美人画”……@東京国立博物館

長沢芦雪と浮世絵師・鈴木春信が描いた“美人画”……@東京国立博物館

わたしはそう思わないのですが「奇想の絵師」と形容される長沢芦雪さん。なぜそう思えないかといえば、わたしはまだ長沢芦雪さんの絵を、きちんと観たことがないからかもしれません。

そんなふうに思っていたら、描かれた2人の女性の絵が、目の前にありました。東京国立博物館(トーハク)の本館2階でのことです。

へぇ……これが長沢芦雪さんが描いたものなのか。

解説パネルには「円山応挙門下の鬼才、芦雪の数少ない

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