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右でも左でもなく、善でも悪でもない一庶民。本を出すことが夢の「流しの書店員」。愛書家&プロレスマニア。スポーツ、音楽、政治等に関するコラムを毎日更新。書評も有。「読む」と「書く」で己と読者を昨日よりも幸せに!https://bookmeter.com/users/49241

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    ハードボイルドな書店員が綴る、本屋が舞台の掌編小説。いつか紙の本で書籍化したい。毎週日曜日に更新。

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私小説「私が『ハードボイルド書店員』になるまで」前編

20××年3月中旬。休日の午前中。部屋で携帯電話が鳴った。 「○○くん? 店長のYです」「おつかれさまです」「職探しは進んでる?」「ええ、今度×××書店と面接を」「ちょっと状況が変わってさ。まだウチで働く気、ある?」「えっ」「雑誌担当がひとり、来月で辞めることになってね。急な話なんだけど、よかったらどうかと思って」「……」 Hさんの顔が頭に浮かんだ。数週間前にいつもの飲み屋で交わした会話も。「俺、また調査役から『雑誌やらない?』って誘われたんだよね」「またですか。もう引き受

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    • 本好き&本屋好き&書店員にオススメの「ほぼ哲学書」

      暇な時間にレジで同僚と話をします。 基本的には本に関することだけ。ちょっとした一言が選書や仕事への取り組み方を見直すヒントに繋がります。 数年前、純文学好きの同僚と某作家の話をしました。好きだけど「面白い?」と訊かれて「面白い」と返せる本ではない。不遜にもそう伝えたら、彼は軽く笑ってこう返しました。 「それが文学のいいところじゃないですか?」 たとえばある書籍が「さほど売れそうにない」と評されたら否定的なニュアンスを感じますよね? しかしそうとは限らない。「さほど売れ

      • 「人生は徒労じゃない」と信じる

        興味深い本が出ました。 著者は「ひとり出版社」夏葉社の創業者・島田潤一郎さんです。 版元は「夜と霧」などで知られるみすず書房。208ページでお値段は税込2530円です。「短篇小説のような読書エッセイ37篇」とのこと。 簡潔で力強いデザイン。手触りが想像できます。 夏葉社の本も指に心地良い紙の質感と重さ、そして無粋な情報を排したシンプルな帯が特徴です。みすず書房のそれらにインスパイアされた部分もあるのでしょうか。 そして気になる「みすずの新刊」がもう一冊。 20世紀

        • ドラマも映画も「○○」が素晴らしい

          来ました!! 「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフに留まらず、それ自体が荒木飛呂彦さんの代表作として認知される「岸辺露伴は動かない」の新作ドラマが放送決定です。 タイトルは「密漁海岸」。原作は↓に入っています。 登場するイタリアンのシェフ・トニオさんは↓が初登場です。「ジョジョ」を知らなくても楽しめるはず。読むとサイゼリヤが恋しくなります。 2020~22年は、ドラマ「岸辺露伴は~」が年末のささやかな楽しみでした。ただ昨年は5月に映画が公開されたこともあってか、新作の

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          書店員が「なかなか検索できない雑誌」の話

          先月末に↓が発売になりました。 いまは年に1回の不定期刊行となっています。昨年も3月の同時期に出ました。 発売されるといいペースで売れます。しかしお問い合わせを受けて検索してもなかなかヒットしません。 原因は5ケタの雑誌コードが、同じ版元の季刊である「文字の大きな時刻表」と同じ「03842」だから。 コードを打ち込み、在庫情報に当たることができても、ちゃんと発売日を確かめないといけません。2月に出た方のデータは「文字の大きな~」のそれです。 女性誌の通常号、増刊、ス

          書店員が「なかなか検索できない雑誌」の話

          「トライ&エラー」と「人間だよ!」

          新しいことをどんどん試し、思うような成果が上がらなければ手を引き、べつのアプローチを目論む。挑戦と失敗、微調整を繰り返し、少しずつ目標の達成へ近づく。 「トライ&エラー」と呼ばれる方法論です。 悩ましいのは切り替えのタイミング。株の損切りと本の返品を同一線上では考えられません。同じ書店でも、常に賑わうコミックの棚とさほど混まない人文書のそれでは基準が変わってきます。 「ストロングスタイル」を裏切った成田蓮選手が、元・同志の鈴木みのる選手とシカゴ大会で闘いました。 昨年

          「トライ&エラー」と「人間だよ!」

          「どの本屋へ買いに行けばいいか?」の指針

          書店で働いています。 にもかかわらず、休みの日も本屋へ赴くことが多いです。 「仕事のために」という勉強感覚もゼロではありません。でも基本は楽しみたいから。「答え」ではなく「問い」をくれる予期せぬ一冊との出会いを期待したいから。 とはいえ、世の中に本屋はたくさん存在します。いったいどこへ買いに行けばいいのか?  ↓を指針にすることをオススメします。 「あしたから出版社」「古くてあたらしい仕事」などの著書で知られる島田潤一郎さんが運営する夏葉社のサイトです。 「最も好

          「どの本屋へ買いに行けばいいか?」の指針

          ハードボイルド書店員日記【182】

          「月末に○○書店がオープンするね」 週刊誌を買いに来た常連の老紳士がレジで呟く。 春休みが終わって落ち着いた平日。尤も数週間後にはゴールデンウィークがやってくる。「お客さんは、自分が休んでいる時に周りが動いていることを当然と考える」メンターが年明けの朝礼で話した言葉を噛み締めた。 「知りませんでした。教えていただいてありがとうございます。すぐ近くですか?」 「高速道路を挟んだ反対側だね。△△ビルの1F」 何度か足を運んだことがある。当時はカフェチェーンや北欧系のインテリ

          ハードボイルド書店員日記【182】

          「新しい環境でモヤモヤを抱える」人へオススメの一冊

          4月もそろそろ中盤です。 新しい環境に馴染めず、もしくは「思ってたのと違う」と戸惑い、モヤモヤを抱える人が少なからずいるはず。私もそうでした。 新卒で入った営業会社。朝8時スタートで帰宅は早くても夜10時半。出社時間はまだしも、帰りがここまで遅いとは面接で言われなかったし募集要項にも書かれていなかった。しかも休みは週1日。 同期が初オーダーを挙げた直後に「義理は果たしたよ」と言い残して去ったのが、ちょうどいまぐらいでした。 書店員になってからも、雑誌チームを仕切ってい

          「新しい環境でモヤモヤを抱える」人へオススメの一冊

          少なくとも「○○○○の2位」はダメじゃない

          宮島未奈さん、おめでとうございます。 私の職場にも「成瀬ファン」がいます。「本当に天下を取った!」と大騒ぎしていました。読んだ人がみんな笑顔で「笑える」「元気が出た」と話しているのが印象的です。 本を読んで笑う。元気になる。ありがたいことです。かつて私も溺れる者が藁をつかむ心境で伊坂幸太郎さんの「砂漠」を手に取り、笑い、元気をもらい、救われました。ずっとエンタメ小説を下に見がちだったけど、一気に考えが変わりました。 きっと「成瀬」も同様のエネルギーで溢れているはず。「軽

          少なくとも「○○○○の2位」はダメじゃない

          「末端からの一撃」と「あきらめの悪い男」

          3月1日に、村上春樹さんと川上未映子さんが書き下ろし短編を朗読するイベントが開催されました。 会そのものが画期的だけど、最も衝撃を受けたのは春樹さんの何気ない一言。ゲストの小澤征悦さんが「風の歌を聴け」の一節を読み上げ、それに対して「僕が生まれて初めて書いた小説なんですよね」とコメントしているのです。 初めて書いた小説でデビュー。 知っていました。しかし改めて活字で読むと愕然とします。 他にもこういう作家はいらっしゃるはず。森博嗣さんもかな?(処女作は「冷たい密室と博

          「末端からの一撃」と「あきらめの悪い男」

          「毎日、毎日、本を売る人」が某知事の発言に思うこと

          撤回しても考え方が変わらなければ。。。 「県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」 ↑から「毎日野菜を売る人や牛の世話をする人は頭脳・知性が高くない or 高くなくていい」という発言者の思想を読み取らない方が困難でしょう。 毎日本を売っています。 一部政治家の中に潜むこの種の価値観も、あるいは書店員が激務にもかかわ

          「毎日、毎日、本を売る人」が某知事の発言に思うこと

          私が「プロレス」を大好きな理由

          3年前に袂を分かった元・タッグパートナー。しかも長く苦しい下積みを共に耐え抜いた唯一の同期。 そんなSHO選手とYOH選手に、大舞台でIWGPジュニア王座を懸けて闘うチャンスが訪れました。 2017年10月、彼らは「ROPPONGI 3K」というチームを結成して海外遠征から凱旋しました。そしていきなりIWGPジュニアタッグ王座を獲得。舞台は同じ両国のリングでした。 2021年4月、膝の怪我で欠場していたYOH選手が約1年ぶりに復帰し、SHO選手とのタッグでベルトを奪還。

          私が「プロレス」を大好きな理由

          「1の戦闘力」を隠し持つ「4列目」

          小学生の頃、進学塾へ通っていました。 当てられて答えられないと罵倒され、ペンを投げつけられ、頭を叩かれる。そして帰宅させられるか廊下で自習です。教室の机は4列。テストの成績で座る場所が決まりました。 入った当初はいちばん後ろの4列目。中学受験をする意志などなく、嫌々通っていたからやる気ゼロ。最初の数か月はクラスの底辺でした。 3か月後に1列目へ昇格。初めて座る際「4列目から1列目」という誰かの呟きが聞こえて誇らしかった。でもいま思うと半分ビギナーズラック。周囲の目が重荷

          「1の戦闘力」を隠し持つ「4列目」

          ハードボイルド書店員日記【181】

          「『あさいち』売れてますか?」 日曜の午前中。嵐の前の静けさを感じつつカバーを折る。3月下旬から4月上旬は書店が最も混む時期のひとつだ。 カウンター脇のPCで何やらチェックしている児童書担当に問い掛けた。彼女は昼過ぎまでのシフトで働くパートである。 「いや動いてないね。何でだろう? 私の置き方が悪いのかな」 「そんなことはないと思いますけど」 考え込んでいる。 「『あさいち』って福音館が復刊した絵本だよね?」 「そうです」 「NHKが紹介したんだっけ?」 「たしか」

          ハードボイルド書店員日記【181】

          末端の書店員が「世界的ベストセラー」を読んで考えたこと

          ↓を読了しました。 世界的なベストセラーです。日本だけでも450万部突破とか。 100ページに満たないのですぐ読めます。しかも値段は税込922円。このお手軽さが人気の一因かもしれません。 かつては山のようにあったチーズ。勤勉な努力を重ね、やっと見つけることができた自分だけのチーズ。もしそれがなくなったら?  登場するキャラクターは二匹のネズミと二人の小人。各々が各々の考えを巡らします。ただ大前提として、全員がチーズを手にすることにこだわっている。 そこに疑問を覚えま

          末端の書店員が「世界的ベストセラー」を読んで考えたこと